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第七話 怪物、式神になる

 

 光に包まれた日向の頭の中に平坦で無機質な声が響く。


 ーこの契約は均衡が取れていないため締結できませんー


 日本語ではなく、日向が聞いたこともない言語で語りかけてくるが、内容は何故だか理解できる。

声が発している言葉自体は理解できないが内容は理解できるという不思議な感覚だ。


なんだよこれ…明らかに異常だ。単なるコスプレ少女がどうこうできるレベルじゃない。

とすると、万が一、億が一の可能性だが少女の言っていた退魔師や式神が本当なんだとしたら…この世界が日向の知っている世界ではなく、よく似た別の世界で超常的な力を持つ存在がいるのだとしたら…


ありえない話だ…だが、日向自身も人から怪物に成り替わった身だ。自分自身がこの世にありえないなんてことはないという証明をしている。


日向は、一息入れて落ち着きをある程度取り戻してから考えを巡らせる。

 それにしても契約ができないとは?そういえば洋子が言っていたな、退魔師と式神に力の差がありすぎると契約がしづらいとか…


俺の意思とかは関係ないのかな。いや、相性云々も関係するとも言ってたし多少は式神になりたいという意志も影響する気がするなぁ。


 日向がぼんやりとした頭で考えを纏めている最中も、契約が締結できないという声が繰り返し流れている。


 一度自分の身体に目をやると視界には怪物と呼ぶに相応しい肉体が映る。


 式神に成り損なった場合、日向に待ち受ける未来は決して明るいものではなく、討伐対象として命を狙われ続けるか研究所に連行されて生涯を終えることかの選択ぐらいしか残されていないだろう。



 お願い致します神さま!最大限譲歩するので契約させてください!一生に何回かのお願いですから!



 一瞬の逡巡の末、普段は一切信じていない神に懸命に祈り念じていると、突然背筋が凍り付くような感覚に陥る。 この世のものとは思えぬ悍ましい何かに見られているような、身体に重く暗い何かが纏わりつく。手足を動かそうにも思うように動かず、緊張、不安からか呼吸も浅くなる。


 何時間かとも思えるほど長く味わい、時間の感覚が分からなくなった頃フッと纏わりつく何かも視線も消え元通りに戻った。


 何だったんだ、今のは。


 日向が呆然としていると魔法陣の光が弱まりはじめ、やがて光は完全に消え去った。

 式神化の儀式が終わったのだろう。日暮れの寂れた公園で馬鹿デカ魔法陣の上に立つ怪物とその前で膝に手を当て息を荒げる少女がポツンといた。


「あの…わたくし式神になれたんでしょうか?」


 洋子にのそりと近づき、祈るように手を組みながら首を曲げて洋子の顔を覗き込む。


「何とかなったわ…ただ…」


 疲労を隠せない洋子は息を整えつつ、苦い顔をしつつ答える。

 含みのある言い方に日向は少しの違和感を持ちつつ、式神に無事なれたという朗報に心を躍らせる。


 渾身のガッツポーズをする日向を見て洋子は困惑顔に変わった。

 契約の制約内容をどれだけ緩めても締結できず日向が拒んでいると考えていたが、目の前の喜びようを見て拒んでいたわけではないと気づいたのだ。


 それは、洋子と日向の力に隔絶した差があることを示していた。


「あなた、どれだけ強い妖なの…」


 驚愕染まった表情で洋子は思わず日向に尋ねる。


「おれ…もしかして強いの…?」


「ありえないほどにね。本来ならこんな無いにも等しい制約で契約は締結されないわよ。そもそもあなたほど強力で善性の妖が存在すること自体が奇跡みたいなものなんだけどね。」


洋子の言葉に満更でもない表情を返す日向に肩を竦めながら今の状況のおかしさを説明する。


日向の力を使うにしても許可が必要で、本来なら契約主が命令と対価を出して式神が力の行使をするものだが、この二人の場合、洋子から命令が出されずとも対価を勝手に引き出し、日向が勝手に力を行使することが可能なのだ。


どっちが契約主なのか分かったもんじゃないわ、こんな契約前代未聞よ!洋子が心の中で毒づく。


「っと、そんなことよりだ!さっきから言ってる妖とか退魔師って本当に存在するのか!?」


「え、えぇもちろん。」


洋子の簡潔な回答に日向は自分の夢が叶ったんだと喜んだ。



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