第四話 怪物、コミュニケーションを図る
…えーと
この状況どうすればいいんでしょうか…?
日向は自分の置かれた状況に困惑していた。
森から脱出して、住宅街を見つけ自分が異世界転生をしていない事実に気づいて嘆いていたところ、一人の少女が目の前に現れた。
その少女は制服を着ており高校生くらいに見えた。小顔で目はキリッとしたツリ目をしており強気そうな印象を持つ。
腰に刀っぽいものをぶら下げており、何かのコスプレをしているのだろう。
太陽はちょうど日向の頭の上を通っており、昼頃かと思われるが周りに人の姿は見えない。
恐らくここが彼女のコスプレをする穴場スポットなのだろう。
現に俺を見て固まっている。まさかここに人がいると思わなかったのではないのだろうか。
いや、今の俺の姿のほうがよっぽどおかしかったわ…
日向は自分の姿を思い出して、なぜ彼女が固まっているのか納得した。
怖がられないか不安に思い躊躇したが、自分もコスプレをしている体にして、ここが何処で今の年月日など情報収集のためにコミュニケーションを図ることにした。
ゆっくりと近づき、挨拶をしようと口を開けたときだった。
突然彼女が、腰に付けた刀の玩具で日向を切りかかってきたのだ。
当然玩具の刀では日向の肉体に傷は付くことなく日向が困惑していると、少女はこの世界すべてに絶望したような諦めたような表情をしていた。
え?なんかやっちゃいました?
なろう系ラノベでよくあるようなセリフが頭の中に思わず浮かぶ。
と、とりあえずコミュニケーションを図ってみよう。
さっきのは距離が近づきすぎたのかもしれない。
確かに、女の子一人の状況で俺みたいな風貌のヤツが近づいてきたら自衛のためにそういった手に出るのは当然なのかもしれない。
日向は一歩下がり距離をとってから、両手を顔の位置まで挙げて無害であることをアピールしつつ声をかけてみる。
「こ、こんにちわー」
「…え?」
少女の呆気にとられた声が閑静な住宅街に響く。
まさか怪物が意味の分かる言葉を発するとは思いもよらず、間の抜けた声を出してしまう。
日向は続けて自分の事情を身振り手振りを交えて話す。
「まず、君に何か危害を加えることはない。これは神に誓う!気が付いたら今みたいな状況に、森にいてその森を脱出したら此処についたんだ。…ここがどこか教えてくれないですかね…」
少女は目を白黒させ、言葉を詰まらせていたが、やがて警戒しながらも言葉を紡ぐ。
怪物から確かに理性があることを感じた少女は、怪物からの問答に応えることを選択した。
それは、少女にとってやけくそでの判断だったのかもしれないが、間違いなく正しい選択をしたのだった。