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29話 お母さん





「お母さんならここにちゃんといるの…………。」



プエラは床を指差してそう言った。


僕はなんの事を言っているの分からず、頭にクエスチョンマークを浮かべることしか出来なかった。


やはりどこを探してもプエラのお母さんらしき人は何処にも見当たらない。



「うん、分かったよ、とりあえずさっきの所に戻ろっか。」



メグはそう言うとプエラ手を引っ張って部屋から出た。



「え、え? ちょっとメグ、プエラのお母さんと直接交渉するんじゃないの?」



僕は慌ててルカを問い質す。


ルカはそのお母さんと話すこと無くあっさりと部屋から出ていってしまったからだ。


ルカは僕の耳元に近づいて小さな声で僕に先程の問の答えを教えてくれた。



「さっきの部屋で私みちゃったんだよね…………。」


「…………何を?」


「プエラのお母さん。」


「え?」



僕は耳を疑った。


だって、さっきの部屋にはどう見ても誰も居なかった。



「メグはわかんなかったと思うんだけど…………実はプエラのお母さん、壊れちゃってたみたいなんだよね。」


「…………え?」



僕は絶句した。


じゃあ、地面に落ちてたあの石みたいな物が本当にプエラのお母さんだってってこと?


僕は胸がキュッと締め付けられるのを感じた。


そういえば、僕のお母さんとお父さんはどうしてるんだろう…………。


僕は両親の記憶も失くしてしまっている。


ルカ達と居るから寂しいとかは一切感じては居ないんだけれど、やっぱりそういうのは少し気になる。


しかし、こんな誰もいない空間でただ1人壊れてしまったお母さんと一緒というのは随分と酷な話だとは思う。



「とりあえず、プエラは大丈夫な様子だけど、ずっとあそこにいたら嫌な思い出とかも思い出しちゃうかもしれないから、離れておこうと思ってさ。」


「うん、僕もそれがいいと思う。」



僕達はルカに手引きされるまま元いた場所に戻った。



「あれ、お母さんは良かったの?」


「うん、大丈夫だよ。」


「そっか、ならもう帰って欲しいの…………。」



プエラは先程と変わらず僕達をここから追い出そうとしてくる。


だけど僕達は温泉に入りたいし…………。



「ねぇ、プエラ、私達が出来る事だったら何でもするからさ、お風呂に入らせてくれない…………?」


「だ、駄目なの、お母さんとの約束は破れないの!」



うぅん、やっぱりそうだよね。


どうしたものか…………。


僕が悩んでいると、ルカが僕にちょっと相談があると耳打ちした。


僕達はプエラにちょっとまっててと言い、少し離れた所に行った。


そうして僕はルカ達と作戦会議をする事にした。



「ねぇ、どうする? このままだと温泉に入れそうにないんだけど…………。温泉に入らないって選択肢は…………。」


「無いね。」


「うん、そうだよね。」



僕はルカの問いに即答した。


だって、もうずっとお風呂に入ってないせいで体はベトベトだし、特訓とかのおかげで体もバキバキなんだ。


もうこれ以上お風呂をお預けされるのは勘弁だ。



「じゃあさ、いっその事あの子を動けないようにして勝手に温泉に入るのは? あたし達なら多分出来るよね。」


「うぅん、そうだけど…………。」



出来ないことは無いだろうけど、やはり気が乗らない。


あの子のお母さんの事を知ってしまったのも大きいだろうけど、普通にこんな小さな女の子に乱暴な事はしたくない。


それはアニも含めみんな同じ考えだったみたいで、その案はすぐに却下された。



「やっぱり諦めるしかないのかなー?」


「そうだね、やっぱり手荒なことはしなく無いからなー。」



サナとアニはもう少し諦めかけていた。


ただ、1人、僕は少したりとも諦められずにいた。



「…………僕がもう一度あの子に頼んでみるよ!」



僕はルカに下ろしてもらい、自らプエラの元へ歩いていった。



「あれ、あなた歩けたの?」


「うん、ちょっとだけならね、あ、あと僕の事はメグって呼んでよ!」


「…………もうすぐ居なくなるから、いいの…………。」



プエラはそうは言っているが、その声音はとても寂しそうだった。


…………やっぱり、プエラも1人で居るのは辛いんだろう。


僕は少し罪悪感を抱きつつも、それを利用させてもらう事にした。

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