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28話 プエラ



完全におかみさんが来たと思っていた私達は想定外の事にびっくりしてしまい、2人してあわあわしてしまっていた。


しかしそれ以上に目の前の女の子はあわあわしてしまっていて、もうカオスな状況だ。



「あれー、この子誰ー?」


「ま、まさか幽霊!?」


「…………違うと思うよー?」



サナとアニは僕達よりかは冷静みたいだけど、アニは完全にさっきの幽霊がいるかもという考えに囚われてしまっていて、何を見ても幽霊に結び付けてしまっているみたいだ。


まぁ、さっきまで幽霊の事を考えて怖かっていた僕が言うのもなんだけどね。


ただ、そうやって怖がっているアニを見ていると僕は何だか冷静になれた。


僕は目の前であわあわとしている女の子をじっとみた。


僕達の誰よりも小さいその子は非常な綺麗な長髪を持っていて、あわあわとする度にその髪がヒラヒラと舞っていて綺麗だった。


…………うん、この子は幽霊じゃあ無いみたいだ。


ただ、おかみさんという感じでもないし…………。



「ねぇ、君は誰なの?」



僕はできるだけ落ち着いた声でそう尋ねた。



「はわぁっ!? えっと、私はこのホテルの女将さんの娘なの、えっと…………。」


「おかみさんの娘?」


「はうぅ、そ、そうなの…………。」



僕が話しかけるとその女の子は怯えるようにキュッと小さくなってしまった。


そんなに僕は怖いのだろうか…………?


それれに、おかみさんの娘って言ってたけど、まずおかみさんって機械なんじゃ…………。


人間は機械から産まれるはずないし…………。


僕はどれだけ考えても答えが出ないため、考えるのをやめた。


その後、僕がなんて声をかければいいのか分からずにいると、女の子はなにかに気がついたようにハッとした。



「そ、そうだったの、お客さんにはこう言わなきゃなの…………。」



女の子はトテトテとこちらの方へ近づいてきた。



「け、ケプスホテルへようこそなのー!」



女の子はそうとだけ言うと足早に後ろの方へと逃げていき、大きな椅子の後ろに隠れた。



「あれ、という事は君はここの従業員なの?」



ようやく冷静さを取り戻したルカがその女の子にそう質問した。



「はうぅ、分からないけど、プエラは女将さんの娘なの…………。」


「…………そうなんだね、プエラってのは君の名前?」


「そ、そうなの、プエラはプエラって言うの…………。」



プエラちゃんか、可愛い名前だ。



「ってあれ、よく見たら君…………。」


「ん? どうしたの?」


「いや、こんな小さな子がこんな所でどうしてるのかなって思って…………。」



確かに、僕達も結構ちっちゃいけど、この子は僕たちよりも更に幼い感じだし、誰もいない温泉宿に1人だけ居るなんてちょっと不自然だ。



「…………プエラはお母さんにここに来た人に、今は満室だからお帰りくださいって伝えるように頼まれてるの、だからプエラはその事をあなた達に伝えて帰ってもらわなきゃいけないの…………。」


「…………え?」



帰ってもらわなきゃいけないってどういう事だろう。


ま、まさか温泉に入れないなんてこと…………ないよね?


僕は頭に過ぎった嫌な考えを振り払う。



「えっと、私達はここにある温泉に入れれば良いだけなんだけど…………。」


「ご、ごめんなさいなの、うち日帰りはやってないの…………。」


「お、お金ならあるからさ! 温泉だけ入らせて貰えないかなぁ?」


「…………ご、ごめんなさいなの。」


「うえぇっ!? 温泉入れないのぉ!?」


「それは困ったねーって、ルカ、メグちゃんと支えてあげてー?」


「うわぁっ!? メグ完全に伸びてるっ!?」


「きゅぅ…………。」



あまりのショックに僕は完全に力が抜けてしまったいた。



「ね、ねぇプエラ、ちょっとお母さんと話がしたいからお母さんの所に連れてってくれない?」



ルカは何とか温泉に入るため、ここのおかみさんだというプエラのお母さんの所に連れて行ってもらって直接交渉しようという魂胆みたいだ。



「わ、わかったの、着いてきてなの。」



プエラは僕達のことを少し警戒しているのか、ちらちらとこちらを確認しながら歩いていた。


しかし、距離を取りながらも、ちゃんとお母さんの元へ案内してくれた。



「お、お母さん、プエラが来たのー。」



プエラはある部屋に入っていった。


僕達もそれに続いてその部屋に入っていった。


その部屋はなんというか…………汚かった。


今までの良く綺麗に掃除された部屋とは違い、色んなものが散らばっていてごちゃごちゃとしていた。


プエラはその中のあるところにトテトテと歩いていき、そこにしゃがみ込んだ。



「こ、この人がお母さんなの…………。」



プエラはそこの場所を手で示した。


…………誰もいない。


おかみさんもいなければ、それ以内の人もこの部屋には居なかった。


プエラの示す場所にはよく分からない石のような物が散乱しているだけだった。



「これは…………。」



ルカはそれを見て何か言いたげだったが、黙り込んでしまった。



「プエラ、お母さんなんて何処にも居ないけど…………。」



僕は不思議そうにプエラに話した。


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