第8話 ちゃんと好き
「聞いたよ? 私。告白された日の朝」
悲しそうな、今にも泣き出しそうな顔をして、朱梨は淡々と話を続ける。
「拓也から。結翔、今日嘘の告白するらしいぞ、って」
嘘じゃない。俺がしたのは本気だった。だからフラれるのが怖かったし、告白するにも相当な勇気も必要だった。
「私ね、嬉しかったんだよ。告白された時。嘘だって知ってても」
「……え、」
それは……、前から両想いだったという事でいいのだろうか。
「ドキッとしたんだよ」
無理やり作っているような、ぎこちない笑顔を浮かべて更に言葉を続ける。
「知らなかったでしょうけど私、結構前から結翔の事気になってたの」
そう言われてちょっと嬉しくなったが、重たそうな話をしているので浮かれずに真面目に話に耳を傾ける。
「だからね、あのね、その……なるべく長く一緒にいられるようにって、あんな条件付けちゃったの」
「あぁ……」
なるほど。その作戦は賢いと思った。
「OKしたらすぐに断られるのは、なんとなく察してたから……」
そこまで言うと、我慢できなくなったのか、目から大粒の涙を数滴垂らした。
「違うぞ」
ちょうど良さそうな話の区切りに着いたところで、俺はそう声を上げた。
「俺は本気で告った。好きだから告白したんだ。拓也が言った事は嘘だ。どうせ俺に朱梨が取られるのが嫌だったんだろうな」
「……本当?」
少しだけ期待するように、俺の顔をじっと見つめてきた。
もちろん言っている事は本心だ。本人相手に言うのはめっちゃ恥ずかしい。
「そうだよ。最後にもう一回だけ言う。恥ずかしいんだから、しっかりと聞け」
「……うん」
「俺は、朱梨の事が好きです」
本当の気持ちを伝えると、彼女はホッとしたような、安心し切ったような表情で胸を撫で下ろした。
「結翔、その後は?」
顔を真っ赤にしながら照れてるくせに、まだからかおうというのか。
「……付き合ってください」
「えへへ。やっぱり嬉しいね」
「こっちはハズいんだが」
朱梨は少し間を開けてから、口を開いた。
「私はちゃんとドキッとしたよ」
「……じゃあ、」
「いいよ。付き合おう」
今日は、今までで一番嬉しい日になった。
「おい、お前ら。イチャイチャすんなよー」
そう言って、俺の幼馴染みの海斗がニヤニヤしながら教室に入ってきた。
全身が燃えるように熱くなっていくのを感じる。
「いつから聞いてた?」
「えーっと、なんだっけな。嘘の告白がどうとかその辺?」
「「…………」」
この後、二人で海斗をボコボコにした。




