第7話 嘘だった?
隣の席で頬杖をついてこちらを見つめている朱梨の方に体を向けて、俺はそっと彼女の机に置いていた方の手を優しく取った。
そして、恋人繋ぎをするように指を絡める。
異性と手を繋げば流石にドキドキするのではないか、と考えたからだ。
「……どうだ」
「いや、ただ手を繋いだだけでそんな事言われても……」
「ですよねー」
しかし、効果は無かったようだ。
でも、せっかく勇気を出して手を繋いだのだ。この機会を無駄にはしない。
「朱梨、好きだ!」
「……え? 急にどうしたの?」
目の前で告白されても彼女は動じないよう。
さすがにコレはいけるかと思ったが不発だった。
次に何をしようか考えながら、なんとなく視線を朱梨に向けた。
「……ん?」
「…………なによ」
俺は気付いた。彼女の顔が真っ赤になっている事に。うつむいているので見にくいが、恥ずかしがっているような表情をしているのが分かる。
「ドキッとした?」
そう尋ねると、朱梨は勢い良く顔を上げて口を開いた。
「する訳ないじゃん! なに、私がドキドキしてるように見えるの!? 絶対にしてないから!」
すごく必死だ。この反応からして、絶対嘘だろ。
もっと攻めてみたくなってきた。
「朱梨。大好きだ」
「ほんと、ちょっ、お願い、あの、やめて……」
見てて面白いぐらいに照れてくれる。これ、楽しいかもしれない。
ただし、反動ダメージもあるので使いすぎには気をつけないと。
そんな事を考えながら、熱くなった顔を冷ますように手でそっと押さえた。
その仕草を見ていた朱梨は、一瞬驚いたような顔をしてからすぐに嬉しそうにニコッと笑った。
「照れちゃってるの。自分でやっといて? 可愛いねぇ~」
とか言いながら、彼女もすぐに照れたように視線を逸らした。
「朱梨もな」
「え?」
「可愛いぞ」
思った事を率直に伝えてみた。
すると。
「……あぁ、もう! 思っても無い事言わないでよ……」
何故か突然、暗い顔をして足元に視線を落としながら呟くように言った。
「……え?」
「だから、その……、どうせ可愛いとか思ってないんでしょ……?」
どうやら俺がお世辞であんな事を言ったと思っていたようだ。
「いや、ちゃんと――――」
「本当に! 嘘じゃなくて!?」
言葉を遮るぐらい大きい声を出して、朱梨はこちらを睨んで来た。
そして、再びうつむいてから口を開いた。
「……《《あの告白、嘘だったんでしょ?》》」
「え――――?」