第6話 ドキッとさせるチャンス
家に着くと俺は真っ先にお風呂に入り、出てから部屋に戻ると急いでスマホの電源を付けた。
朱梨からのメッセージが届いていないか確認するためだ。
(朱梨)『ゆいとやっほー』
彼女はそう送ってきていた。
すぐに俺は返事を送る。
(結翔)『やっほー』
ドキドキしながら送信すると、少ししてから朱梨からもメッセージが送られてくる。
(朱梨)『明日、学校早く来れる? 今日よりもっと早く』
(結翔)『いけるけど。どうしたの?』
(朱梨)『じゃあ来て』
(結翔)『え、なんで?』
理由を尋ねるも、返答はナシ。既読は付いているので内容は確認しているハズだ。
不思議に思いながらも、何度もしつこく質問するような事はせずにスマホの電源を落として机に置いた。
理由なんてどうせ明日学校に行けば聞ける事だし。
そう考えて、早く起きれるように俺はベッドに寝転んだ。
◇ ◇ ◇
俺は昨日より20分ほど早く学校に着いた。
電気が付いていなくて薄暗くなっている教室の隅っこで、本を読んでいる少女が一人いた。
「……おはよう」
「あ、おはよ。ちゃんと来たんだ」
朱梨は俺がまさかこんなにも早く来るとは思っていなかったようで、少々驚きながら言葉を続けた。
「じゃあ質問。私はどれぐらい前に教室に来ていたでしょうか?」
「急だな……。10分ぐらいか?」
ちょっと悩んでからそう答えると、彼女は嬉しそうにニコッと笑って口を開いた。
「残念。正解は1分前ぐらいかな」
早く来てってお願いしといて私が遅れるのはマズいから、結翔の姿が見えた時は焦ったよ、と、手元の本を閉じて体の向きをこちらに向けてから言った。
「そうなのか」
「うん、そう」
こんな全く進展しそうに無い会話をしているだけでも楽しい。
ドキッとさせられたら付き合ってもいいよ、と言われてから、彼女の事を今まで以上に好きになっていっているような気がする。
「……で、どうするの?」
「どうするの、とは」
「察してよ。せっかくチャンス上げてるんだから」
「あぁ……」
朱梨は誰もいないこの教室の方が色々とやりやすいのではないか、と考えてくれていたようだ。
ありがたいが、どうしてそこまでドキッとさせて欲しいのだろうか。
わざわざ付き合う条件にそんな事を入れる理由があったのだろうか。
どちらにせよ、付き合える可能性がゼロではないだけマシか。
俺は彼女をドキッとさせる作戦を実行し始めた。