第5話 連絡先、交換しない?
「あ、魚跳ねた」
嬉しそうにそう言いながら、朱梨は夕日を反射させてキラキラと輝いている海を指差した。
彼女の指す方向をすぐに見るが、もちろん俺は魚が跳んだ跡すら見られなかった。
「……まだ俺一匹も跳んでるの見れてないんだけど」
「ちゃんと周り見てたら意外と気付けるものだと思うんだけどね~」
「そうなのかな……」
俺たち二人は特にしたい事も無いので、会話をしながら並んで座って魚が跳んだ回数を数えていた。
でも、それだけでも全然楽しい。むしろこのままずっと雑談を続けていたいと思える。
「……もう6時過ぎか。時間が立つの早いな」
「だね。さすがにそろそろ帰る? ここからだと地味に時間かかるし」
朱梨は軽く伸びをしてから、そう言って立ち上がった。
「そうするか」
呟くように返事をしてから、俺も彼女と同じように伸びをしてから立ち上がった。
しかし、いざ帰る為に歩き出そうとすると、理由は分からないが後で後悔するような気がした。
せっかく二人きりでこんな所まで来たというのに、一回もドキッとさせる事が出来なかったからかもしれない。
気が付いたら俺はスマホを持って、朱梨にお願いをしていた。
「あのさ! 連絡先、交換……しない? あ、嫌なら全然いいんだけどね!?」
正直めっちゃ交換したい。だが、これは彼女に関係する事だ。相手の意見もしっかりと聞かないといけない。
返事を待っている間、少し空白の時間が出来たので、不安になってきた。
それから更に少し経つと、ようやく朱梨が口を開いた。
顔を真っ赤にしながら、笑顔でスマホをこちらに向けて。
「私も交換しない? って聞こうとしてたところだったの。いいよ、交換しよ」
「……ありがとう」
「ん」
連絡先を交換し終わったスマホを優しくカバンになおすと、俺は何故か急に彼女をからかいたくなってきた。
本当にいきなり。
「……顔赤いな。そんなに交換出来て嬉しかったのか」
「うん」
「え?」
「嬉しかったよ」
朱梨にまさか反撃をされるとは思っていなかったので、思いっきりダメージを受けた。
顔が熱くなってきた。
「あれ、照れてるの?」
「違う。多分夕日のせい」
「そう。結翔、嘘付くの下手だよね」
あはは、と彼女は笑いながら、俺の顔をスマホで写真を撮りまくり始めた。
「俺の顔、一回撮影するのにつき100円です」
「高っ! そんな価値無いでしょ」
「…………そうか」
「なーんてね。もっと高くてもいいと思うな」
また顔が熱くなってきた。朱梨といると調子が狂う。