表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/8

第2話 ドキッとした?

 告白をした次の日。

 普段通り朝早く学校に向かうと、今日は珍しく一番じゃなかった。


「おはよ」

「……おはよう」


 朱梨あかりがいたのだ。いつもは遅刻ギリギリに来る朱梨あかりが。


「……今日は早いな」

「なるべく多くチャンスあげようと思ってね」


 電気が付いていなくて薄暗くなった教室で、視線は手元の本に固定させたまま、彼女はそう言った。

 ドキッとさせれるものならやってみろ、と喧嘩を売ってきているようにも感じられる。


 朱梨あかりが座っている隣の席にカバンを掛けてから座ると、とりあえず彼女の方に椅子ごと体の向きを変える。

 特に何をしようとか決めていた訳では無いので、そのまま動きが止まる。


「……何もしないの?」


 少し期待しているような目で、チラッとこちらを見てから言ってきた。

 全然本のページが進んでいないので、彼女もこちらを意識してくれていると思っていいのだろうか。

 純粋に疑問に思ったので、聞いてみることにした。


「もしかして、俺の事意識してる?」

「は、はぁ!? そ、そんなわけないじゃん。バカなの!?」


 そう言いながら顔をほんのり朱色に染めて、慌てているようにパラパラと本のページをめくり始めた。

 こういう可愛い反応をされると、やっぱり嬉しくなる。


「……そうか」

「それより早く仕掛けなくていいの?」


 と言われても、どうすればドキッとするかなんて分からない。


「どうすればドキッとする?」

「それ聞いちゃうの? まあヒントぐらいなら教えてあげてもいいけど」


 彼女は本を閉じると、椅子を俺の座っているすぐ隣に移して、体が触れるぐらいの近さに座った。

 そして、顔を付きそうなぐらいの距離まで寄せて、じっと見つめてきた。


 何がしたいのか分からない。でも、顔が熱くなって、鼓動が早くなってきた。


「こういう事」


 そう言って朱梨あかりは、ニコッといたずらっぽい笑みを浮かべて顔を遠ざけた。


 なるほど。ヒントをくれていたのか。


 彼女がどうしてあんな行動を取ったのか理解した俺は、元の位置に戻って本を再び読み出した朱梨あかりの隣に椅子を移動させた。


「……なに? 近くない?」


 ドキドキさせようとすると、相手の事を意識してしまって逆にこっちもドキドキしてくる。

 勇気が出せなくて、ただ見つめているだけの状態なのだが、少しずつ彼女の顔が赤くなってきている事に気が付いた。


「顔、赤い……」

「うるさい」


 恥ずかしくなってきたのか、顔を本で隠すように抑えながら呟いた。


「もしかして、見つめられたらドキッてしちゃう?」

「うるさいうるさい。そんなんでドキッとするわけないし。何も感じなかったもん」


 そう言いながら今度は耳を覆うように手を添えて、机に顔を伏せた。

 今の顔を見られたくないのだろうか。

 

 でもしばらくはそのままでいてほしい。


 俺の顔も見られたくないから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ