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初めてのお屋敷と街はトラブルだらけ

「はぁ~! すっごく美味しかった~!」


ポンポンと満腹になったお腹を叩き食事の美味しさに感動していた。


「ロ、ロゼッタ様……凄い食べっぷりでしたね!?」


ロゼッタの食欲に驚きつつ食器を下げ温かな紅茶を用意していた。


(そうだった!私今ロゼッタさんの身体だ!病院食ばっかりだったからこんなに美味しいもの食べ出したらとまらなくなっちゃった!)


「お、美味しくてついつい口と手が止まらなくて……!」


パンとスープだけじゃ足りずカリカリのベーコンとチーズ、レタスを挟んだバケットがあまりにも美味しく3つも平らげてしまったのである。


「これだけ召し上がって下さったのできっとコック長のバケットさんも喜んで下さっていますわ。さぁ温かいお紅茶をどうぞ。」


(コック長さんバケットさんって名前なんだ!美味しそうな名前だなぁ~。どんな人か会ってみたいっ!こんなに美味しいものを作ってくれる人にお礼も伝えたいな。)


「ありがとう! あのオリビア……? ワガママだけどそのコック長さんにお会いする事は出来るかな?」

「バケットさんにですか? 構いませんが……ライアン様からは安静にと伺ってます。一度ライアン様にご相談してきますので少々お待ちください。」


スタスタと出口へと向かい扉を出る前にロゼッタへお辞儀をしライアンへと歩んでいった。


(もしかしてダメだったかな!?やっぱり安静にしておいた方がよかったかも…でも、どうしてもお礼が言いたいっ!)


言いたくてウズウズとしているところにガチャリと扉が開きライアンとオリビアが入ってきた。


「オリビアから聞いたが、どんだけ食ったんだ。彼女も驚愕してたぞ……それでバケットに会いたいんだったな?」


(驚愕されてしまった……だって! あんな美味しいもの食べるな、なんて絶対無理だー!)


「はい! そうなんです! どうしてもお伝えしたいことがありまして。ダメでしょうか!?」


ベッドから降りズイズイとライアンへ迫り寄り懇願した。


「わ、わかったからっ! とにかく落ち着け。それで何を伝えたいんだ? 僕が代わりに伝えてお前は安静にしててもいいんだぞ?」

「いえっ! 私からどうしても伝えたいんですっ! それにこのお部屋だけじゃなく色々なところも見て回りたいな~と。」

「そうだな、この屋敷の案内や街も観て回って良いと兄貴から頼まれてたから丁度いいか。けどその格好から着替えてからだぞ。オリビア、ロゼッタの世話を頼む。僕は一度自室に戻るから準備が出来たら呼んでくれ。」

「かりこまりました。ではロゼッタ様まずは湯浴み致しましょう。こちらへ。」

「はいっ!」


オリビアに従い彼女の後ろをついていき部屋を出て驚いたのがお屋敷の広さだった。

廊下は幅広く落ち着いた深い青色の長い繊細に編まれた絨毯に天井は手も届かぬほど高く大きなシャンデリアが何個もぶら下がっていた。


(すっごい……お姫様と王子様が住むお城みたいっ!)


お屋敷に夢中になってたロゼッタは慌ててオリビアの元へと駆け出した。


「ロゼッタ様~! お加減はいかがです?もう少しお湯を温めましょうか?」

「ロゼッタ様、今日の香水はどれになさいますか?」

「ロゼッタ様! 今日は街にいかれるのですよね?! 髪型どうしましょー!」


バスタブに浸かるロゼッタの周りにはオリビアだけでなく何人もの侍女が身の回りのお世話をしていた。


(き、気まずい……!自分で出来ますって言ったらそんな事させられませんー!ってみんな凄い迫力だったよ……。)


「お、お任せで……!それにしてもいい香り。この湯の優しい匂いは何を使ってるの?」


髪を優しくタオルで拭いてくれているポニーテールの髪型をした侍女へと疑問を投げかけた。


「こちらは柑橘系の物をお使いしております。ロゼッタ様がリラックス出来るようと仰せつかっておりますので♪気に入って頂けて嬉しいです。」


「柑橘系……どうりで落ち着く匂いだぁ~、教えてくれてありがとうっ!」


湯浴みを終えた後、ロゼッタは動きやすいブラウスとスカートや髪型へと姿を変えた。

ブラウスは青色で花柄模様の刺繍に白のプリーツ・スカートで裾にはレースが優しくあしらっていた。


靴も歩きやすいブーツで走りやすそうな材質のものだった。

髪型は背で二つに分けた三つ編みで、頭には白色の編み込みされた優しい手触りの帽子を被った。


「きゃー!! やっぱり可愛いですねぇ~! みんなもそう思いますよね!?」

「本当ですわっ! お似合いですっ♪」


侍女達は、きゃあきゃあとロゼッタの可愛さに騒ぎ盛り上がっていた。


(私になんだろうけど、すごく恥ずかしいよ〜……。)


「準備が出来たと聞いたが、そろそろ行けそうかロゼッタ。」


ガチャリと扉が開き、先程とは違う服装を見に纏ったライアンが入ってきた。


(か、かっこいい〜!!こりゃ世の女の子達がほっとかないわっ!)


長めのグレーのコートに前が短め、白のシャツに黒のベストが下からお洒落に魅せていた。

白のズボンに茶色のロングブーツと色合いも完璧であった。


「ライアン!! とてもお似合いですっ!」



笑顔で彼へお褒めの言葉を投げかけたがライアンはフイっと横を向いてしまった。


(失礼な行動しちゃった?!でもすっごい似合っていたし、褒めたくもなっちゃうよー!)


「ーーー似合ってる……。」


「はい?」

「だからっ!僕よりもロゼッタの方が似合っているし、可愛らしいって言ってんだよ!」


耳まで真っ赤にしながら伝えられた言葉を理解したロゼッタは照れるより嬉しさが増した。


「よかったです♪ 実はさっき侍女さん達もお似合いですって言って下さって! ライアンからもお褒め頂けて嬉しいですっ。」

「はぁ……調子が崩れるな。前の落ち着いたお前はどこにいってしまったんだ。…それじゃあまずは屋敷の案内から行くぞ。」

「はーい!」


まず向かった先はロゼッタが一番会いたかったコック長バケットがいる厨房だった。


「バケットいるか?ロゼッタが何か伝えたいことがあるらしいんだ。」

「あ? なんだ、ワシにか? ……これはこれはロゼッタ様、お気分はいかがですかな?倒れられたと聞きましたが見たところ元気そうではありますなー!」


バケットは研いでいた包丁を置き、こちらへとズカズカと歩み寄ってきた。

バケットは大柄でいわば熊のような迫力と怖さのある男なのだがライアンとその後ろに仕えている侍女たちはロゼッタが怯えたりしないかと不安を感じていた。

そんな事あるはずもなくロゼッタはニコニコと笑いバケットの手を握りしめた。


「貴方があの美味しい料理達を作って下さったバケットさんですねっ! ありがとうございました、とっても美味しかったです! 実は、どうしても直接お礼を言いたくて足を運びました。」

「がはははっ! まさかお礼を言いに直々にここへきて下さるとは思ってもみませんでしたぞ。いやはや……有難いお言葉をありがとうございますロゼッタ様。」


肩を大きく揺らしながら盛大に笑うバケットにロゼッタもつられて笑い気づけば皆が笑顔になっていた。



            ◇◇◇



屋敷の広さは想像を遥かに超える程広々としていた、客人を招く晩餐会が開かれるであろう食堂や数えきれないぐらいずらりと本が並んだ書斎、玄関ホールでは重々しいシャンデリアがあたりを照らし柔らかなソファに暖炉とインテリアにも凝っていた。


「屋敷の中は大体こんなものだ。次はそうだな、庭園に出てみるか。多分“あいつ”はいないだろ……。」



(“あいつ”って誰のことなんだろ?それにしても庭園どんな所なんだろ!楽しみだな~!)


庭園へつきまず目を見張ったのは色とりどりに咲いている花達、その中でもロゼッタが気になったのはバラアーチだった。

アーチ形に組んだ黒色の構造物の両側からバラ沿わせる仕立てだ。

バラの色は赤に黄色、ピンクなど豊富で美しくたわわに咲いていた。


「ライアンー! こんな素敵な場所教えて下さってありがとうございますっ!」


ロゼッタは帽子を抑えながら心躍る気持ちに駆られタッタと小走りしバラアーチを通りガゼボ《あずまや》へと辿り着いた。

ガゼボにはロゼッタよりも先約の人がいたのだ。


「ここ素敵な場所ですね!はじめまして、ええと…お名前をお伺いしてもいいですか?」


キラリと光る坊主頭にダンディな髭を生やした筋肉モリモリな男性から出た言葉は腰を抜かすほど甘い声だったのだ。


「あら~!ロゼッタちゃんじゃなーい♪ 倒れたって聞いてたけどもう大丈夫なのね!」


ふわりとロゼッタは抱き上げられ、彼(彼女)は心配したのよ~!と優しく微笑みかけてくれた。


「ええ!? 凄い力持ち…! じゃなくて、どちら様ですか!?」

「うふふ♪  ロゼッタちゃんなんて羽のように軽いわよ~!……あら? やっぱり噂通り記憶が曖昧になっちゃったのね。それじゃあ改めてワタシはマトリック・アンドリューよ♪ この庭園のお世話をしているわ~!」

「ええー!! こんなに広い庭園を一人でですか? きっと……マトリックさんのお手入れのお陰でこんなに綺麗に咲いているんですね!」


二人キャッキャッと騒いでいる所へライアンが足を踏み入れたがマトリックの姿を見るなり眉をしかめて酷く憂鬱そうな顔をした。


「ゲッ……。マトリックまさかお前がいるなんて。」


(ライアンさんの様子がおかしいような?)


マトリックはロゼッタをゆっくりと下ろしシュバっと素早い動きでライアンを抱き上げた。


「ライアンちゃん~! もうずっと探してたのに全然ワタシの前に現れてくれないんだからー!」

「当たり前だろっ! 僕はもう昔のように幼い子供じゃない!だからいい加減離せっ!」

「あ、あのー……オリビア少し聞いてもいい? どうしてライアンはマトリックさんの事を嫌がっているの?」


後ろで使えていたオリビアへ疑問を投げかけた。


「まぁそうですね……簡潔にいえば思春期みたいなものです。まだ幼い頃のライアン様はマトリック様と仲良くなさっていましたから。」


(思春期かぁ~!それであんなに恥ずかしそうにしてるんだね~。)


「ありがとう、オリビア! とっても分かりやすい説明だったよ!」

「ロゼッタ様、そろそろマトリック様を止めないとライアン様が失神しかねません。」


オリビアから指摘され見るとライアンの顔の歪みが増していっていた。


「マトリックさんー!! そのあたりにしてあげてくださいっ!」


急いで彼らの元へ駆けつけ二人を宥めるよう努力したロゼッタだった。



             ◇◇◇



「だ、大丈夫ですか?」


正気を吸われたようなげっそりした顔て元気がないライアンを心配しロゼッタは声をかけた。


「ああ……大丈夫じゃない。大丈夫じゃないがロゼッタ、このまま街に行くぞ。」


手を不意に掴まれライアンと馬車で街へと向かった。

街はまさに《メルヘンな街》だった。

石畳の道に水色やオレンジの色をした壁や家々。

石と木材を組み合わせた建物には鉄細工の看板がまた魅力を表していた。


「ライアン! あのお店はなにを取り扱っているのですか?」


馬車から降りて街を歩いていると目に留まったお店が一つあった。

クマの鉄細工の看板がぶら下がった緑色の壁をした可愛らしいお店だった。


「そこはぬいぐるみ店だな、入るか?って……もう入ってるじゃないかっ!」


カランとお店の扉を開け中へ入ると……

うさぎ、ネコなど可愛らしいぬいぐるみたちがミニチェアーに座りこちらをお迎えしてくれているような雰囲気であった。


「いらっしゃいませ。どうぞごゆっくりとお過ごしください。」

「可愛いお店ですね! あ、この子なんて特に可愛いですっ!」


(可愛いっ!このシロクマのぬいぐるみ肌触りがすっごいふかふかだ~。)


ロゼッタがギュッと抱きしめたぬいぐるみはシロクマだった、首には真っ赤なリボンとコロンと綺麗な音色の金色のベルが下がっていた。


「ライアン見て下さいっ! この子すっごい可愛いですっ!」

「気に入ったのか? よし、店主このぬいぐるみをお願い出来ますか?」


(え?待って待って!なんでお会計しようとなってるの!?)


「待ってくださいー!ただ可愛いと伝えただけですからっ。」

「いいんだよ。このぬいぐるみもロゼッタと一緒の方が幸せそうに僕は見える。だから夜寝る時とかに抱きしめてやれ。」


優しく頭を撫でてくれたライアンにロゼッタは嬉しさで心が溢れ目頭に熱がこもった。


(泣いちゃったら不安にさせちゃう。でも嬉しくて……心が暖かい。)


「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。」



            ◇◇◇



お店を出てこの街の中心部であろう大きな噴水と広場のある所へと移動し休憩をしていた。 


「ライアン、ありがとうございます!この“ユキ”くんも喜んでます!欲しいなとはちょっと思いましたが、まさか買って頂けるなんて……私凄い幸せです。」

「そんなに喜んで貰えたならよかったよ。それにしても“ユキ”くんってこいつの事か?」

「はいっ! シロクマって雪住みの子じゃないですか?だから“ユキ”くんですっ。早く一緒にこの子と寝たくて、夜よ来い!って思ってます!」


ユキくんの手をくいくいと動かしライアンへみせて見せた。


「くくく……!ロゼッタから貰える元気は計り知れないな。ありがとうな。ロゼッタはロゼッタなんだ、そのままのお前でいてくれ。」

「はいっ! ……?何この声。」


和やかな雰囲気だったがロゼッタの耳には小さな男の子と女の子の泣き声が遠くから聞こえた。


(どうしてこんなに離れてるところから声が?もしかしてロゼッタさんの身体だから?魔力があるの?みんなの様子は普通だし、私だけに聞こえてるのかも。)


スッと立ち上がりあたりを見渡し、目に行ったのが人が少なそうな裏路地らしきところにその子達はいた。


「どうした?」


「ライアン、ごめんなさい。ちょっとユキくん持ってて下さい。私少し用事出来ちゃいました!」



「は? おいっ!! ロゼッタどこ行くんだ?!」


引き止めるライアンから問われていることは分かったが、答える余裕もなく急ぎ目的の場所へと駆け出した。


「か、かえしてぇ……うぅ…お兄ちゃんっ!」

「僕たちのお金を返せっ!! この泥棒っ!!」

「あ? お前らお坊ちゃん達はたんまり金持ってるじゃねぇか! 少しぐらい俺らにもお恵みがあってもいいと思わねーか? なぁ?」


(気づけてよかった……!)


大柄な乱暴そうな男はまだ幼い二人からお金を巻き上げていたのだ。


「ちょっとー!! それはこの子達の物でしょう!? 返してあげて下さいっ!」


床にペタリと腰を抜かした子達を背に庇いロゼッタは指差し大きく声を出した。


「そのお金を早くこちらに返してっ!!」

「な、なんだ? この小娘。おい……お嬢ちゃん誰かは知らんがなんでもホイホイと首出すもんじゃねぇぞ。怪我をしてもしらねぇぞ!! オラ!」


力任せにロゼッタの首を締め上げ壁へと押し付けた。


「うぐ……!!」


(息が……!なん、とかしなくちゃ!何か何か出てこいっ……!!!)


手に力をグッと込め感じたのは熱い流れだった。

助かりたい一心に熱く流れるものをさらに強めた時だった。


ーーーードスンッ!!!


「ぐぁぁ……!!!」


空から降ってきたのは巨大な棒付きの飴である。

飴は何の加減もなく大柄な男へ一直線に落ち失神させてしまった。


「ゲホ……ゲッホ!!」


(今、私がこの飴を……?)


「ロゼッター!! 大丈夫か!? それに今、魔力を使ったのか……?」


背を優しくさすりながらライアンはロゼッタが作り出したであろう飴を見て、ワナワナと震えていた。


「ラ、ライアン…!私は大丈夫ですからあの子達を見てあげて下さい。」


怯えてうずくまる二人の兄妹にライアンは優しく声をかけ奪われそうになったお金を渡してあげていた。


(よかった……あ、れ。なんだか急に目の前が……。)


ーーードサッ。


ロゼッタは魔力を使ったせいかその場に倒れてしまうのだった。

駆けつけるオリビアやライアン、彼女の周りにはたくさんの人だかりが出来てしまった事を知らぬロゼッタであった。



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