溢れる希望と祝福
読んでくださってありがとうございます!
近付いてみると赤い光は小さく今にも消えてしまいほど弱々しかった。
「これは何かしら?」
「なんだろう……? 触れたら何か起こるかな?」
望みが少しでもあるならば試してみる価値はある。
お互いに頷き合い二人で小さな赤い光に触れた。
刹那、光が弾け真っ暗な闇に満ちていた場所は真っ白な透き通ったものへと変わる。
「……! どういうことなの……?」
「ねぇロゼッタさん、見て。もう一つ扉があるよ!」
先程までいた紫の部屋ではない、もう一つの扉が現れたのだ。
「扉が二つあるわね。どうゆうことなのかしら……? あら? すみれ、貴女の髪と瞳の色が変わっているわよ!」
「ええ!?」
ロゼッタは真っ黒な髪に紫色の瞳と何一つ変わっていない、変わったのはすみれの方だけだった。
見た目は変わらないが色が真逆になったのだ。
祝福を感じさせる白色、希望を思わせる黄緑色。
「それじゃあ向こうの部屋ってまさか……。ロゼッタさん入ってみよう!」
「ええ。あの先に何があるのか確かめる必要があるわね。」
不安を感じながらも扉の中へと入る。
広がっていたのは辺り一面に彩られた瑞々しい緑と可憐に咲き誇る菫だった。
「すみれ、この“部屋”が何を意味するのかわかったわ。」
嬉しさに顔をほころばせるロゼッタはここが何を指し示すのかわかり声を弾ませた。
「ここは貴女の、魂の部屋よ。」
「私の……。こんな綺麗な所が私の魂それじゃあこの力さえあればロゼッタさんをヘルトさんに会わせられる!」
「私を?」
「そうだよっ! 次は私の番だね。ロゼッタさんを死の“運命”から変えてみせる!」
ロゼッタの周りには真っ白い光が生まれ少しずつ包まれていく。
「ダメよ! 私だけが“運命”を変えられるなんて、そんなの許せないわ! すみれ貴女にも変える“未来”があってもいいもの!」
「え!? わわ! ちょっとロゼッタさん!?」
言うが早いかグイッと腕を引っ張られ二人して光に瞬く間などなく包まれた。
―*―*―*―*―*ー
「ここは……?」
すみれが目を覚ますと鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてバージル達から見られていた。
真横にはライアンとまだ意識が戻らないロゼッタがいたのだ。
「ロゼッタさん! しっかりして!」
虚ろなまま目をしたロゼッタだったが、すぐに覚醒してガバッとすみれに抱きついた。
「すみれ……よかった! 貴女も無事に“運命”を変えられたのね!」
「お取り込み中悪りぃけど、えーと……何がどうなってんだ?」
ロゼッタとすみれがキャッキャッと騒ぐ中割って入ってきたのはバージルであった。
「あはは~、混乱させちゃってすみません。バージル様この姿では一様初めましてでしょうか? 元ロゼッタです!」
「ロゼッタ!? ロゼッタが二人ってどうなってんだ!?」
どっちがどっちなのか分からなくなったみんなは頭を抱えていた。
「私は正真正銘、本物のロゼッタ・グディエレスよ。この子は……。」
「私は暁月 すみれです。生まれとかは説明し出すとややこしくなっちゃうのでロゼッタさんの妹的な何かだと思ってくれれば。」
黒と白、間反対な二人だったが、バージル達は少しだがわかってくれた様子だった。
一人を除いて。
「あ、なたと……もう一度会えるなんて思ってもみなかったわ。これでも私、昔は貴方の事を心から愛していたのよ。」
「ロゼッタ……? あ、ははは。どうなってるんだ。明るく元気なロゼッタさんしか知らない筈なのに。どうしてか落ち着きのある貴女とも会った気がします……。あのロゼッタさん、厚かましいですが……貴女との関係をもう一度最初からやり直しさせて頂けませんか?」
真剣な眼差しでロゼッタを見据え、彼女は初々しくなりながら、頷き優しく彼の手を取った。
(ロゼッタさん、よかったね!)
二人の姿を微笑ましく見つけているとバージルとライアンから話しかけられる。
「ロゼッタ、……すまない。すみれさんだったか? 貴女は先程、元ロゼッタと申していたがどういう事だ?」
「俺も気になってたぜ。俺と今まで話したりしてたのはすみれだったのか?」
ズイズイと迫られ説明をせざるを得ない状況に陥ってしまった。
が、気を利かせたライリーが一度グディエレス家の屋敷で後日話をしないかと提案してくれたのだった。
◇◇◇
3日後、バージルやヘルトとグディエレス家の屋敷に集まる形へと決まる。
屋敷に帰った日はロゼッタが2人いる事に皆驚き、侍女のオリビアと庭師マトリックが一番声を上げていた。
正式な手続きをし、すみれはグディエレス家の家族となった。生き離れになっていたロゼッタの双子の妹として。
「いやーん! それにしてもすみれちゃんもロゼッタちゃんも可愛いわ~♪ 良かったじゃないライアンちゃん! 新しい妹ちゃんが増えて貴方も幸せ者ねっ!」
「イッタ……! いくらなんでもキツく叩き過ぎだ! 全く。」
マトリックから容赦なくバシバシと肩を叩かれていたライアンはこれ以上叩かれないためか窓際へと向かった。
「ライアンさん、あの! ロゼッタさんだった時に右も左もわからない私に付き添って優しく、見捨てずにいて下さりありがとうございました! 初めはどうなっちゃうかな~って思ってたのですが……!」
「ライアンだ。前も言っただろう? 呼び方はライアンでいい。その、僕もすみれと呼び捨てにしても構わないだろうか?」
ほんの少しだけ耳を赤く染めて言うライアンにすみれはふわりと頬み答えた。
「勿論です。 ライアンこの姿ではありますが、これからも宜しくおねがい……ぐえ! バ、バージル様!?」
話してる最中だったが、グイッと引っ張られ引き寄せられてしまった。
「俺をほっておくとは良い度胸じゃねぇか。すみれ行くぞ。色々聞きてぇからな。そんじゃ失礼します。お兄様。」
ニヤリと意地悪そうな顔をライアンに見せつけたバージルに何故か抱き抱えられながら薔薇が咲き誇るガゼボへ連れてこられるすみれであった。
「あの~。バージル様? こんな荷物のような持ち方っておかしくありません? 一様これでも女の子ではあるのですけれど。」
ぶつぶつと不満を言うと、仕方ねぇなと言われお姫様抱っこへと変えられてしまう。
「これで満足か? すみれお姫様。」
「まぁ、いいでしょうっ! あのそれで? 何故ここに?」
「んー、まぁライアンとすみれの邪魔をしたかっただけだ。」
何言ってんだコイツ、といったふうに睨みつけるすみれだったが、バージルと話をしたかったという本音もあったので良しとした。
「と、とりあえず下ろして下さいませんか? お話しするのはそれからでも!」
「あ? お前がこうしろつったんだろ! それともさっきの荷物持ちのが良かったか?」
「言いましたけどもっ! もうこのままで良いです! そんな事より、私バージル様にお願いがありまして。」
「お願いだ? 俺も実はお前に言いたいことあってよ。」
(バージルさんも? なんだろう? はっ!もしかして今までロゼッタさんのフリしてダンスしたりしたから指導料寄越せとか!?)
「———俺と婚約してくれるか?」
「……あ? ……は? はあああああああ!?」
すみれの声に皆なんだ何だ何だと気づけば全員が集まっていた。
「おま!! 声デカいんだよ! ったく……!」
「私とですか!? 本気で言ってます!?」
「本気じゃなかったら言わねぇよ! それで返事はどうなんだ?」
周りからも見守られながらすみれは頬を赤く染めながら呟いた。
「———はいっ! 喜んでお受けします!」
祝福の言葉が二人に降り注ぐ。
二人の結婚を祝福してお祭りも何日も続いだ。
皆の笑顔が溢れる祝祭となりました。
やっと完結できました!
誤字などがあったかと思います、申し訳ありませんでした。
ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!