表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/18

微かな光

読者の皆様へ読んで頂きありがとうございます!!

本当にありがとうございますっ!!


(アイツを信用してしまった僕が間違っていたのか。僕がもっと警戒していればロゼッタが攫われる事はなかった……こんな情けない有様じゃお前を助けにも行ってやれない僕は兄失格だな。)


古びた小屋の中手足を縛られ見知らぬ男2人に監視された自身の不甲斐なさに顔をしかめた。

自分の失態に項垂れていたところに急にドアが思いっきり開かれる。


「誰だ!? おい、その男を逃がさないためにもその裏ドアから出て行けっ!!」

「あぁ…! 来いっ! お前に逃げられるとヘルトに叱責されちまう!!」

「ぐっ…!」


男2人は慌てふためいたがいち早くライアンの足に縛られた縄だけ取り裏ドアから連行された。


(どうなってる? 逃げるなら今しかない。)


裏ドアから出た瞬間窓ガラスが割れそこから氷の槍が男めがけ飛んできた。


「ぐぁ…!!」


見事に腹部に直撃し、更に木に背を強打してしまった男は気絶した様子だった。

裏ドアから現れた者へ目をやるとその場にいたのはライリーだったのだ。


「あ、兄貴……?」

「俺の大事な弟に手を出したんだ、許されると思うなよ。」


鞘から剣を抜き片手に持ちながらズカズカと倒れた男へ歩み寄るライリーをすかさず止めに入った。

状況を説明しなければ大惨事になりうる可能性があったからだ。

現状の説明でヘルトに裏切られロゼッタを連れ去られてしまった事を伝えた。

ライリーは少し落ち着きを戻したかと思ったがそんな事はなくわなわなと怒りに震えていた。


(兄貴がここまで怒ってるのは初めて見た……。)


「す、すまない。怒りで我を失いかけたよ。ライアンは大丈夫だったか? 怪我とかはしていないな……。よかった。それとヘルトといったなアイツは。この詫びはきっちりと仕返しさせて貰う。一度屋敷に戻るぞ。」

「あ、ああ。」


ライリーは迷わずライアンの手の拘束していた縄を切り落としその後馬車へ乗るよう促した。

二人は屋敷へと戻り雪に覆われたベスティニア国城に連れ去られたロゼッタを救える方法を相談した。


(ロゼッタ、僕が絶対に助けに行く。だから無事に待っててくれ。)



            ◇◇◇



(? な、なんだろ……変な匂いがする……。)


重たい瞼をゆっくりと開け目に見えたのは微かな蝋燭の炎だけがある暗い部屋だった。

ロゼッタはベッドにどうやら寝かされていたらしい。

ゆっくりと起き上がってみたが違和感が体に感じた。


ジャラリと重い鎖に両手首には大きく冷たい手錠がはめられていた。

足は右足だけ足枷がつけられ重く連なった鎖がつけられていた。この部屋から出る事は不可能だった。


「ど、こ……? 確か、あの後私あの大柄な人に胸ぐら掴まれてそのまま気絶しちゃったのか。それにしてもこの甘い匂いはなんだろ? なんだか……ふわふわする……。」


虚ろげな目になりながら部屋を見ると室内は広いがあるのはロゼッタの使っていたベッドだけで他は何もなかった。


「ふっ。どうだ? 何も考えられんだろ。」


気がつけばロゼッタの前へ大柄な男、ヘルトの兄が目の前へ立っていた。


「あ、なたは……ヘルト様に何もしていませんよね? ヘルト様に、まだ手を出すような行為は許し……ません……!」


(ダメ……頭が全然動かない。逃げたいのに身体も重くて動けない。)


頭が重く回らないせいか気付けばギジリとベッドに手首を抑え押し倒されてしまいロゼッタの力では彼を退かせられない状況になってしまった。


「……ッ!? 触らない、で……!」

「その意気込みがどこまで続くか楽しみだな。女、俺の目を見ろ。」


ロゼッタと目を無理やり合わせるように顔を触られざわざわと恐怖にかられた。


(な、に……?)


「お前の特別な人は誰だ? 大切な家族は誰だ?」

「特別な人……? わ、たしの家族は……。」


男の問いかけからロゼッタの頭の中にはジジジと壊れたパソコンのような音が響き出す。

記憶がパズルのように崩れ落ちていく。


ーーー私は誰?

ーーー大切な家族は誰だろう……?

ーーー誰か優しい王子様がいたような、あれは夢だったのかな?


誰か、優しい3人がいたような……ダメだ、思い出せない。

暖かい人達だったはずなのに……。


「……ぅ。う……。うぅ……。」


何が悲しいのか分からず頬にはポロポロと涙粒が溢れ出した。

泣くロゼッタを男はほぼ見やずだった。


「それにしてもヘルトも酷い奴だよな。コイツの記憶を全部この匂いで消しちまうなんてよ。」


ロゼッタから離れた男は近くの椅子へ座り誰かを待っている様子だった。


(私の大切な家族、特別な人。わからない。私は誰?)


「あ、なたは……誰?」


虚ろげな目をしながら男に話しかけてたところにコツコツと足音が響き渡り気がつけば片膝を床につきロゼッタを見上げた。


「ふふふ。成功ですね。ロゼッタ、僕は貴方の兄です。オリヴァーもよくやってくれましたね。まさか1回で上手いこと記憶を消してくれるとは思ってませんでしたよ。」

「まぁ、薬を作ったのはお前だからな。俺は恐怖を感じさせただけだ。恐怖が増すほど薬が効くなんて恐ろしい物を作ったもんだな。それでその女どうするつもりだ?」

「んー? どうする、そんなの決まってるじゃないですか。僕はロゼッタと兄妹になりたいのですよ。恋人同士なんて反吐が出る、ロゼッタが僕を好きになってくれなくて良かったです。オリヴァーもロゼッタの兄となりますからね、挨拶してあげて下さいね。」


(こ、の人達が私の家族……? そっか。忘れてた私悪いんだよね。)


「まぁ後で気が向けば挨拶してやる。じゃあな女。ヘルトに喰われないよう注意するんだな。」

「こらこら、妹にそんな事言わないで下さいよ。ロゼッタごめんなさい。こんな重い鎖をつけてしまって今外しますね。」


ヘルトと呼ばれた彼は手首や足についている足枷手錠をとってくれた。


「あ、ありがとうございます……?」

「まだ不安か。まぁそのうち慣れるだろ……。おいで、ロゼッタ良いところへ連れて行ってあげよう。」


手をグイと優しく引かれ彼の後を追いかけた。

チクチクと胸に痛みが走ったが気のせいだろうと思い立った。


            ◇◇◇


「ロゼッタを救出するのにバージルにお願いするのはどうだ?」

「珍しいなっ? ライアンからバージルの名を聞くとは思ってなかったぞ。そうだな、人数は多い方がいいな。俺とライアンとバージルの3人で城に乗り込むか。」

「3人でどこまで出来るか不安だけどな。俺がもっとロゼッタとヘルトに注意していればこんな事にはならなかった……。すまない、兄貴処罰はいくらでも受ける。だから頼むロゼッタを助けるのを手伝って欲しい。」


屋敷に戻りライリーに頭を下げ懇願するライアンに心底驚いた顔をして、急にライリーは笑い出した。


「……?」

「ああ、悪い悪い……!ライアンがここまで謝る事って初めてだからなっ!新鮮で笑ってしまったよ。勿論ロゼッタは絶対助ける、お互いそこは本気で行くぞ。」

「あ、当たり前だろっ!! どうせ今頃あいつお腹空いたとか言ってそうだけどな。」


(ロゼッタ、もう少しでお前を助けに行ける。待っててくれ。)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ