エピローグ 家老 実家に帰る
3か月後。
勘十郎は故郷の久利呉藩に帰ろうとしていた。
マロの傷が謎の超速再生で回復しきったからである。
さすがマロ。謎が多い。すっかり旅籠の面々とも打ち解けたマロ。
「長い間世話になったでおじゃる。礼を言うでおじゃるよ。」
「勘十郎さま、すぐ帰ってきてくださいね。あなたのおうちはここですから!」
すずめがだだ泣きしている。
「カガリ様、必ず帰ってきてください。他のお客も待ってる。」
つばめが篝を目で刺さんばかりに念を送っている。
「おじいちゃん?無理しないで、道の途中途中で休んでくださいね。」
「え?わし?ありがとうするめちゃん、貰った麦茶、大事に飲むね。」
するめちゃんは明後日の方向を向きながら家老を労う。
「何かあったらいつでも来るといいよ。あんたがいたほうが皆、元気になるからね。」
女将のコトバがありがたい。
「兄さま、これからどうするのですか?」
どうするもこうするも、久利呉藩に帰って妹と平和に暮らすだけだ。
もう誰にも邪魔されたくない。
「ええこっちゃのう。儂もうれしいわ。上杉のやつめ、まさか儂を暗殺する目的で近づいていたとはの。まったく気づかなかったわ。」
勘十郎と篝、マロの三人と幽霊一人(?)が久利呉藩に向けて出発する。
「ところでご家老。真犯人もわかったのに、なぜ成仏しないのですか?」
「え?そうじゃの…。ああ、迎えの音が聞こえる。はあ、川の向こうに婆さんの姿が。。。」
「いえ、奥さんまだ生きてますよね?」
「…( ゜Д゜)」
なんですかその顔は。
「わし、まだ成仏できぬ。」
「どういうことですか?」
「思い残すことがあったわ。勘十郎。お主、手伝うがよい」
「ええ!いやですよ!?」
「お主にしか見えんのじゃ、なんとかせい」
勘十郎のためいきが晴天にこだまする。
「家老、斬っちゃったみたいなんですけどどうしたらいいんでしょうか」
おわり