表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/35

第7話 子育て

牛人の森に副官として勤務している俺は、巨大ミノタウロス・モウモウの前で、こん棒を振って稽古をしていた。


「カゲトは遊んでばっかで全然使えねえべな。そんなことじゃ大事な部下を預けれねえべ」

「部下って赤ん坊のことか。なら部下などいらない」

「エレーナを見習うべさ。平べってえ乳からミルクが出てこないときはガッカリしたけんど、赤ん坊の扱いはカゲトより全然上手いべ」


エレーナが哺乳瓶で赤ん坊にモウモウのミルクを飲ませている。


「モウモウさん、平べったいは余計です。私は脚が自慢なんです。カゲト様もそう思うでしょ」

エレーナがくるりと回るとミニスカのような腰布がふわりと舞った。

「綺麗な脚だ。虫に刺されないよう、気をつけろよ」

「素直に褒めて下さいよー」


「カゲト、武器を振り回したいんなら、わだすのを使え」


モウモウが大きな鎌を俺に投げてきた。モウモウが巨大なので、俺が持つと死神の鎌のようだ。その場で何度が振ってみる。武器としては悪くない。


「何してるべ?」

「稽古だが?」

「子守しねえんなら、草刈りに行ってこい! 命令だわさ」

「あっ、カゲト様、ちょっと待ってらえます?」


――――――――――


モウモウがいる場所から少し離れた草むらで、俺は大鎌を振っていた。背に赤ん坊を背負いながら……。


気を取り直して大鎌で草を刈る。より早く! より力強く! そして――。

「ホンギャア!」

「あー、よちよち、ミルクでちゅかー?」

2時間ごとにミルクを!


ガサガサッ!

草むらから音がしたかと思うと、冒険者が現れた。装備は銅シリーズ。Cランクか。


「あれえ、ミノタウロスかと思ったら、ゴブリンかよ。ガッカリだぜ」


俺を舐めてるなー。秒で倒してやろうか?


「気をつけろ。あの見た目と威圧感。レベルはかなり高い。ゴブリンの亜種だ」


戦い慣れていそうな壮年の男が言った。闘気がわかるらしい。


「ホンギャア!」


お前もわかるのか赤ん坊。だが、うるさい。気が散るじゃないか。

俺は深呼吸をして、気を鎮めると、赤ん坊は泣き止んだ。


「気のせいじゃないのか、俺は感じないぞ」

「あれ、おかしいな。さっきまで凄い闘気を感じたのだが」

「こんな雑魚。さっさと倒して、奥に進むぞ。戦闘準備だ!」


ほっ、よっ、とっ。冒険者の攻撃をかわしながら、一人ずつ倒していく。秒殺するつもりだったが、気を押さえて戦うとなるとやりづらい。3分ほどかかってしまった。

装備と持ち金を奪い、近くにあったほこらに隠すと、俺は再び草刈り作業に戻った。


―――――――――――――


その日の夕方。

俺の刈った草の山がみるみる小さくなっていく。

モウモウの胃袋の中に消えていくのだ。


「久しぶりにこんなに食べれて幸せだわさ。ふぅー、ゲップ」

「クッサ!」


俺は鼻を押さえる。激烈な臭さだ。振り向くと、エレーナが泡を吹いて気絶していた。


「しっかりしろ。エレーナ」

「ああ、ごめんなさい。モウモウさんに失礼ですよね……」


モウモウが草を掴む手を止めた。


「あんれ? この草、まずいべ。カゲト、血の付いた鎌で刈ったべ」

「私に隠れて、冒険者を殺したのですか!」


浮気みたいに言うな。


「カゲトは、ほんっとに使えねえべな。やり直しだわさ。なんだべ、その顔は。子育てに休みはねえべ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ