第3話 旅立ち
「ノッポ、死んでるなら、外へ捨てちまうぞー」
目を開けると傷だらけのモヒカンがナイフで俺の頬を突いていた。
「勘弁してくれ。殺されずにすんだようだ」
起き上がると防具はすべて粉々になっていた。しかし、身体には思ったほどのダメージは無い。むしろ、モヒカンのほうが傷を負っているぐらいだ。
横を見るとエレーナが寝ていた。
「そのメスに感謝しな。自分がぶっ倒れるまでおめえに、魔法をかけていた」
そうか。ヒールの合図を送る前に、倒されたことを思い出した。
「他のゴブリンは?」
「みーんな、殺されちまったよ。オレはメスの腹を切り裂いて、中に隠れていたが、念入りに矢を打ちこんできやがった。まあ、死なねえだけで儲けもんだ」
エレーナが気づいて体を起こす。
「カゲト様、大丈夫ですか!」
「ああ、ヒールのおかげだ。それより、なぜ逃げなかった?」
「カールさんの話は私にも聞こえていました。新人冒険者を殺すためにわざとこの巣に送り込んでいたこと。そして何より――あなたが本物のカゲト様であるということ。私、あの人が許せません!」
「そうか――なら、ついてこい」
エレーナの目隠しを取る。ゆっくりと開けた瞳には嫌悪の色は無かった。
「ありがとうございます! でもDランクじゃ足手まといにはなりませんか?」
「もうCランクの実力がある。目隠しで五感の一つを断ち、鍛錬をさせた。魔物を狩るより、効果的な方法だ」
「本当ですか!」
「この体が証拠だ。俺の体力を瀕死から全回復させるのは、Dランクじゃできない」
荷物を担いだモヒカンが言った。
「よっこらせっと。おい、ノッポ。オレは新しい巣へ行くが、おめえはどうする?」
「行きたいところがある。ここに残っている穀物はもらってもいいか?」
「好きにしろ。どうせ、メスの餌だ」
「モヒカンさん、待ってください」
エレーナが手をかざすとモヒカンの傷が治っていく。
「ありがとよ、メス――いや、お嬢ちゃん。家畜扱いして悪かったな。他のゴブリンも助けようとしていたな。代わって礼を言うよ」
「でも、誰も助けられませんでした……」
「んなこたねえよ。ゴブリンは助からない仲間は捨てていく。誰かに看取られて死ねるだけで、幸せもんさ」
モヒカンは優しい眼差しをエレーナに向けた。
「ノッポ、これからどうするつもりだ」
「強くなる。あの腐ったギルドを倒すために」
「そうかい。じゃあ、オレは賢くでもなろうかね。このオツムじゃ、いつまでかかるかしれねえけどな。命があったら、また会おうや」
笑いながらモヒカンは去っていった。
俺たちも荷物をまとめ、洞窟を出る。
「どこへ行くのですか?」
「まだ、わからないことが多い。しばらくはギルドの思惑に乗ってみる」
「霧の城へ行くのですね。あそこは――」
「ああ、俺が倒した四天王。メデューサの居城だ」




