第14話 リストラ砦
王都リステンブルク。
魔王軍が最大の攻撃目標として、度重なる攻撃を加えているが、その都度、騎士団によって撃退されていた。俺も騎士団とは何度か会ったことはあるが、強い戦士は多くない。そんな騎士団が魔族の群れに勝っているのは、集団戦闘と防御戦の慣れだ。
ちなみに冒険者パーティーは4人までと国法に定められている。これは平民である冒険者が徒党を組むことを国が危険視しているからだ。
俺たちは魔王軍の主力であるオークの群れの中を進んでいく。
しかし、砦らしきものはまったく見当たらなかった。
「あの家で聞いてみますね」
エレーナが石作りの家に入っていく。
一言二言話す間があって、俺を手招きした。
「カゲト様ー! ここが、守護砦なんですってー!」
中に入ると、ドラゴンがキセルをくわえて寝そべっていた。大きさは5mぐらいか。背中の羽は根元で折られていて無かった。
「ボスに言われてきたカゲトだ。本当にここが守護砦なのか?」
「その通りだ。笑えるだろ。わしはドーザという。短い間だと思うが、仲良くやろうや」
ドーザがキセルから煙を吹く。
「おぬしもボスに立てついた馬鹿か?」
「お前もなのか」
「そうだ。毒蛇の錠前を付けられていることを知らずに戦いを挑んだ間抜けだ。そして、ここに飛ばされた」
「他の魔物は?」
「何匹かいたのう。ボスに歯向かおうとするだけあって、強い魔物たちだった。だが、みーんなボロ雑巾のように死んだ。魔王軍が撤退するとき、騎士団の追撃を食い止めるのが守護砦の仕事だ。弱い人間相手でも数の力にはかなわん」
「死ぬぐらいなら逃げればいい」
「おぬしは知らんのか? 毒蛇の錠前は持ち場を3日以上離れると噛みつく。ボスに攻撃を仕掛けたときと同じだ」
背筋が寒くなる。ドミニク商会へ行ったときは3日ギリギリだった。
外からオークの悲鳴が聞こえてくる。
「魔王軍が負けたようだな。すぐに騎士団が城から出てくる。せいぜい頑張りな」
「いっしょに戦うんじゃないのか? まだ生き残っているということは相当強いんだろ?」
「ああ、わしは強い。だが、戦っていたわけじゃない」
そう言うと、ドーザは地面を掘り、潜っていった。
「カゲト様、どうしましょう!」
「死に物狂いで戦うしかないだろう! 俺は外で迎え撃つ。エレーナはミュウミュウと一緒に家の中にいろ。窓からヒールを撃ってくれ」
哺乳瓶をくわえて外に出る。
目の前に騎士団が迫っていた――。