第13話 メデューサ戦
部屋の中からメデューサの声がする。
「入りなさい」
中に入ると、頭から蛇が3本生えているメデューサが睨んできた。
全体が伸びてくるのではなくて、1本ずつ増えるらしい。
「あなたは自分のやったことがわかっていますか!」
「命令通り、森は守った」
「とぼけるんじゃないわ。だーれが冒険者を救えと言いましたか? あなたは魔族。人を殺すのが、シ・ゴ・ト!」
「カールと仲良くやっているボスの言葉とは思えないな」
「何ですって? 前から生意気だったけど、今日はさらに反抗的じゃない? おしおきが必要ね」
メデューサの目が赤く光る。
しかし、ミルクの力で俺の体に異変は起こらなかった。
「どういうこと!」
「こういうことさ。お前の軍をいただく」
鉄の剣を抜き、メデューサに迫る。
「や、やめなさい! いや、助けて! お願いだから――」
「神速雷鳴剣!」
メデューサの首を一閃――する直前に俺の手が剣を離した。
次の瞬間、俺はメデューサに蹴り飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「なーんて、言うわけないでしょ! お馬鹿さん!」
「……どういうことだ?」
「あらあら、質問者が入れ替わりましたね。でも、その前にやることがあるでしょ!」
体がしびれて動けない。
頭をハイヒールで踏みつけられる。
「詫びなさいっ! 地面に頭を擦り付けて! そこの二人! 動いたら殺しますよ」
メデューサの頭の蛇がシャーッと、エレーナとミュウミュウを威嚇した。
「あなたみたいな戦闘狂を部下にするのに、私が安全装置をかけていないと思ったの? 右腕をじっと見てみるがいいわ」
言われた通りにすると俺の右腕に、蛇が絡みついた錠前が見えてきた。
「シシシ。ご主人様、ご褒美をくだせえ」
メデューサが小さな卵を落とすと毒蛇の錠前は丸飲みした。
「私を攻撃しようとすると毒蛇の錠前が噛んで麻痺させます。強力な魔物を従えるのにいちいち戦ってはいられませんからね。魔王軍を預かる四天王だけに与えられた力です。歯向かわれたのは久しぶりですけど、ねっ!」
「ヴッ!」
俺の腹にハイヒールの一撃を落とす。
「あなたみたいな役立たずは冒険者担当から外します。すぐに王都侵攻に向かいなさい。今度は人を助ける余裕が無いほどの激戦区に送り込んであげるから、しっかりと働きなさい! いいわね、無能!」
メデューサが俺の顔の前に落とした紙にはこう書いてあった。
『王都侵攻軍・守護砦勤務を命ずる』