忠臣は主を支える
昔はふっくらしていた。
空気が抜けることを知らぬ、わがままボディ。
私は大人気の取り合い。
恐れを知らぬ肉体に、ふんぞり返った主。
それを支える私を、さぞや嬉しそうにしていた主。
それも遥か昔のこと。
今は痩せ細った硬いまな板。
主を支えることのできぬ、出来損ない。
でも、それでも主は使ってくれる。
時には着せ替えてくれた。
豪華な紋様。
かわいいイラスト付き。
昔ながらの無地。
こんなに尽くされているのに、返すことのできない。
何て空しい。
そんなある日、主の奥さまは私を引き抜いた。
あぁ、もう役目を終えたのか。
いつもは服を着させたまま外で日向ぼっこさせてくれる。
でも、今日は違う。
すべてをさらけ出した私をどこかへ連れていく。
あぁ、もう終わりだ。
私は座布団生を終える。
今までありがとう。
目を覚ますと、主がいた。
そして、抱き締め、再び、私の上に乗った。
馬鹿な、こんなことがあってたまるか。
私が主を支えているだと。
奥さまは私を見限ったのではなかったのか。
そうか。
奥さまは私に再び力を与えてくださったのか。
ありがとう。
私はこれからも、主を支える。
私は主の座布団。
私は主の御輿だ。
十年以上使ってる。