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第90部 大芝のお言葉

「俺は信じる。紀伊が好きになった人だ。俺は信じるよ!」

軌刃はそう言って紀伊に微笑んだ。

それは紀伊に気を遣ったわけではない。

紀伊の人を好きになる気持ちを信じたからだった。

紀伊は軌刃の目を見つめると、嬉しくなって抱きついた。

「ありがとう、軌刃。大好き。」

軌刃はフッと笑うと、紀伊の頭に手を置き、真壁に目を向けた。

真壁も頷いた。

紀伊の姿を腕組みして見ていた大芝は、微笑むと紀伊の頭を自分のほうへと引き寄せた。

紀伊が顔をあげると大芝は優しく笑った。

「人を好きになるってことがどうやら分かったらしいな。」

大芝の言葉の意味がわからなかった。

紀伊が不思議な顔をすると、大芝は頬を突いた。

「分かればいいんだよ。人を愛するって人生で一切なことだろ?人を愛さない人生なんてつまんなかっただろ?」

はじめは何のことかわからなかった。

けれどすぐに紀伊は自分が大芝と会った時恋なんてしないと豪語していたことを思い出した。

(うん。人を愛するって大切なことだね、私は何があっても秋矢様を信じるよ。)

紀伊は心からそう思った。

そして初恋の軌刃の顔を見つめた。

もう兄妹としてしか見ることが出来ない初恋の相手。

けれど軌刃を信じるという気持ちは秋矢と同じくらい強いものになった。

「ああそうだ、四国も連動して防衛体制をとるらしい。四国の結界をそのとき魔城隣接国にまで広げてくれるらしい。」

こともなげに言った大芝の言葉に真壁と八鬼は顔を上げた。

「あの、特殊な結界をか?何故、お前が知っている。」

八鬼の言葉に大芝は頭を掻いた。

そして真壁も続けた。

「お前、ただの死人ではないのか?」

紀伊は腰に手を当てて二人の前に立った。

何故か紀伊が自慢げな顔をしていた。

「違うんだよ。こう見えてもこの人こうなる前は、朱雀国の太子様だったんだから。ね?」

「ああ。ってか、こうなる前はって何だ?」

「まあまあ。」

紀伊はそういうと大芝に拳を見せた。

「絶対、私がその呪い解き明かしてあげるから!」

「おお、頼んだぞ。」



その夜、紀伊と秋矢は同じ部屋にいた。

秋矢の腕に絡みつくように紀伊は布団に転がっていた。

「紀伊、俺、明日帰るよ。」

「じゃあ、私も一緒に!」

「いや、今回、事を起こすわけじゃない。一度捕まった人を見てくる。父上も不審に思うだろうから。」

「そう。」

紀伊は寂しげな目をした。

(行かないで、行かないで、一緒にいて!)

紀伊の目からはそんな気持ちが溢れ出していた。

その目に耐えられなかったのか秋矢は紀伊を痛い程強く抱きしめた。

紀伊は目を閉じ必死に笑顔を作ろうとする。

せっかく一緒にいられるうちは泣かない、昨日秋矢の隣で眠りながら心の中で決めた。

「紀伊には良い仲間がいるね。」

紀伊は秋矢を優しく抱きしめ返した。

「秋矢様には私がいる。」

秋矢は紀伊の耳元で笑うと、紀伊を体から離した。

「そうだね。紀伊がついていてくれるんだ。これ以上嬉しいことはないね。」

「でしょ?だから、秋矢様の心配は私が半分貰っていくよ。」

すると秋矢は紀伊の唇に自分の唇をもっていった。

「俺の心配は紀伊のことだから、紀伊は自分のことだけ自分が思うよりももっと考えてて。そうしたら、俺は力一杯戦える。」

「何それ?」

紀伊は秋矢の理論に微笑みつつも、形の綺麗な唇に口付けて、そのままお互い布団に倒れた。


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