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第67話 あの二人の関係は・・・

「気が付きましたか?」

紀伊が目を開けると花梨がいた。

「花梨様・・・?私。ここは・・・。今はいつ?」

全く意味が分からなかった。

この花梨はどの時代の花梨だろう。

「私のこと見えてるの?」

「どうしたの?紀伊?」

名前を呼ばれてやっと、自分のいるべき場所に戻ってきたことを知った。

紀伊は寝かされていた粗末な布団から重い体を起こすと、まず掌を見つめ、それから体を見つめた。

「夢?」

けれど頬に違和感を覚え触れると、涙で濡れていた。

(琉陽様。)

花梨はそんな紀伊の隣に腰掛けた。

「秋矢がね、紀伊のことを助けてくれたのよ。竜が暴走して紀伊を飲み込みそうだったから、秋矢が力を使ったみたいね。」

「秋矢様は!」

「大丈夫。少し力を使いすぎただけよ。少し休んでるわ。それにそんな秋矢を見てお母様が秋霖に口ぞえをしてくださったの。紀伊は自分と秋矢の味方だからと。秋霖は彼女にだけは甘いところがあるから今回ばかりは見逃してくれるようよ。」

花梨は優しく、暫くぶりに見た紀伊の頬を撫でた。

その優しい仕草に紀伊はこらえられず泣き叫んだ。

「花梨様!ご無事で良かった!」

紀伊は花梨に抱きつき、ただ子供のように涙をこぼし叫んだ。

「まあ、紀伊。まだまだ甘えたね。」

「だって、折角会えたんだもん。」

そんな紀伊の視界に女がもう一人入った。

長い髪を結った女。

紀伊は涙でぐしょぐしょになった顔をその女へと向けた。

「あ、城主様も・・・。」

紀伊が頭を下げると、女は静かに頭を下げた。

「ねえ、秋涼様は?どこ?」

「分からないわ。秋矢の話では生きてはいるそうだけど・・・。」

花梨は愛しそうに、そして切なそうに呟いた。

その花梨の顔を見て、紀伊は今までの夢であってほしい夢を思い出した。

「ねえ、訊いてもいい?」

「どうしたの改まって。」

「花梨様、秋涼様のこと好き?」

「ええ。」

次の質問は躊躇われたが、今の夢のような時間が夢なのか過去なのかを知りたかった。

「弟でも?」

「何処でそれを・・・。」

「やっぱり。」

(夢じゃなかった。私は過去を見てた。)

紀伊は琉陽のことを思い出すと涙が出てきた。

妻を魔物から取り戻そうとして全てを魔物に奪われた青年。

(彼はどれだけ辛い気持ちで生を終えたのだろう。)

けれど花梨には紀伊が今見ていたものなど分かるはずもなかった。

「紀伊、しっかりしなさい。」

「だって・・・。」

「秋矢が頃合いを見計らって出してくれるって言ってたわ、あなたはそこで逃げなさい。私が囮になるから。ここを出たら魔城のことを忘れて幸せになりなさい。」

「嫌よ!もう大切な人を失うなんて嫌!忘れたくなんてないよ!」

「紀伊・・・。」

花梨は紀伊の体を抱きしめた。

紀伊はその胸の中でずっと泣いていた。


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