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第6話 不思議な夢

何かに引き寄せられる・・・。

懐かしい、けれど思い出したくない懐かしさ・・・。

誰かいる・・・。

そこにいるのは誰?

子供?

これ、何?

蛇?

違う。

これは竜だ。

小さいけど、白と黒の竜。

あなた誰?

これは何?

あ、ちょっと待って!

置いていかないで!

私だけ置いていかないで!


紀伊は遠ざかってゆく子供と竜に追いつこうと走ろうとしたが何かにつかまれた。

慌てて振り返ると、黒い躯と黄色い目ととがった耳を持つ魔物が自分の体を引き留めていた。


放して!

待って!

あたしだけ置いてかないで!


「おい!」

紅雷に激しく揺さぶられ、目を開けた。

「えっ?・・・あ・・・。」

視界に先ほど馬車に一緒に乗り込んだ三人の顔が入った。

けれど初めはそのことも思い出せなかった。

(何?子供は?)

けれど徐々に覚醒してゆく脳と外の景色ですぐに状況を思い出した。

「夢・・・か。」

紀伊は夢だと分かると息を吐いた。

「変な・・・夢・・・。何、今の夢・・・。」

「大丈夫か?」

紅雷が鞄から手拭を出し、紀伊に手渡した。

「有り難う・・・。」

紀伊は顔の冷や汗を拭き、その布をギュッと握りしめた。

「変な夢見ちゃった。」

出た声は震えていた。

「怖い夢?」

「うんん・・・。気持ち悪い夢。」

紀伊は柳糸の質問に答えと外を見た。

日が暮れかかり、西日が自分たちを照らしていた。

「結構・・・寝てたんだ・・・。私。」

紀伊が呟くと、柳糸が竹筒に入ったお茶を手渡した。

「飲めるか?」

「有り難う・・・・ちょっと喉が渇いてたんだ。」

口を付けるとほのかに冷たくそれが心地よかった。

「後・・・どのくらいで着くのかな・・・。」

「今日の夜には着くらしい・・・。馬車なんて乗りなれてないから酔ったか?一回とめてもらうか?」

「ううん。頑張る。きっと張り切りすぎて疲れたんだ。」

紀伊の健気な態度を見て柳糸は頭を撫でた。

「心配しなくても大丈夫だからな。」

「うん。これ、柳糸のお母さんのお手製のお茶だよね。おいしい。」

「何でこんなときにまで母親のお茶持ってくるかねえ。」

「まあ、役に立ったんだからいいんじゃないか?それに紅雷、お前、自分で荷物作ってないだろう?お前が手拭持って行こうなんて思いつくわけ無いもんな。さては、荷造り母親にさせたな。」

「ば、馬鹿やろう!気持ち悪いこというなよ。」

紅雷は顔を赤らめると外を見るふりをした。

「偉そうに言う紅雷が一番お母さん子ですからね。まあ、紀伊の秋涼様好きと張るぐらいじゃないですか?」

「馬鹿、紫奈!気持ち悪いこと言うなよ!」

「え〜、絶対私の秋涼様好きのほうが上だし!」


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