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第58話 双子の懸案

たくさんの瞳が紀伊と軌刃に注がれていた。

紀伊は照れる軌刃の腕を取ってみんなの視線に応えていた。

「並ぶと・・・似てるか?」

「似てるといえば似てますか?」

「似てるんじゃないの?」

「うん、似てる似てる!二人とも私が囲ってあげるからな。」

すると軌刃が真壁を睨んだ。

「貴方だけは信用できませんから。却下です!紀伊にはふさわしい男を!」

「お兄様!俺も同感です!」

紅雷が軌刃の手を握ると軌刃は意味が分からず一歩引いた。

「嬉しいねえ。こうやってあの子達がこんなに大きくなっているのを見られるなんて。」

巳鬼は時鬼に酒を注いだ。

「本当はあの子達の両親に一番並んでいる姿を見せてやりたいのだがな。」

「私は忠鬼と雅鬼が並んでいる姿もまた見たい。」

「皆がいた村か・・・。懐かしいな。」

「何年寄り二人でしんみりしてるんです?」

大芝は二人の席につくと、空いていた杯に自分も酒を注いだ。

「お前、今まで何してた?」

「置いてかれたんで、皆の居場所探してたんですよ。」

軌刃と真壁は現れた大芝に視線を向けた。

二人は一度視線を合わせるとまた何事もなかったかのような顔になった。

大芝はそんな視線に気がつかないのか、酒を飲み干すともう一度注いだ。

「なんですか・・・、また鬼族見つかったんですか?」

大芝は嬉しそうに紀伊たちへと目を向けた。

紀伊は大芝を見つけると嬉しそうに寄った。

「ねえ、見て。大芝。こっちは軌刃!私のお兄ちゃんなんだ!」

「お兄ちゃん?ああ、そっか、言ってたもんな。でも、なんでここに?」

「一昨日の会議に来てたんだって。で、だらだらこの王子様が遊んでたら今日になって、偶然私たちと会ったの!」

「へえ。」

大芝は少し軌刃を見た後、手を差し伸べた。

「はじめまして。俺は大芝。お前の妹と旅をしてるんだ。」

「はじめまして。」

軌刃はその手を取ると大芝は優しく微笑んだ。

「話だけは良く聞いたから、会ってみたかったんだ。」

「どうも。」

大芝を見上げる軌刃に紀伊が割り込んだ。

「ねえねえ、軌刃、ゆっくりしていけるの?夕飯は一緒に食べれる?」

「もちろんだよ、子猫ちゃん!君を残してなど国へ戻れるものか。」

「うん、今晩ならね。明日の朝早くには・・・戻るけど・・・。」

「やった!」

跳ねる紀伊に笑みを向けながら軌刃は立ち上がった。

「じゃあ、ちょっと、支度してくる。また、後で紀伊。」

「うん!じゃあ、あとで!」

二人は紀伊に手を振って外へ出た。

そして真壁を前にして歩きながら、軌刃は後ろを向いた。

「心配か?妹が。」

「・・・ええ。」

「何だろうな・・・あの男。悪い男には見えなかったが・・・。」

「血の匂いがしました。」

それは常人ではなく、感覚を研ぎ澄ませた男たちだから気づいたことだった。

「子猫ちゃん、分かって付き合ってるならいいだけどね。」

「・・・真壁様。」

「軌刃、お前の言いたいこと分かってるよ。やればいい。ただし。」

「え?」

「暇だし、俺もついていく。」

「ええ?そんな・・。」


「あれ、大芝、どこ行くの?」

明日からの活動範囲を確認していた紀伊は目を上げた。

腰に剣を帯びた大芝は何もないような笑みを向けた。

「ああ、ちょっと外、見てくる。」

「もうすぐ、夕飯だから戻ってきてね。」

「了解。」

巳鬼はそんな大芝の袖を掴んだ。

「あんまり・・・紀伊を悲しませるんじゃないよ。」

「・・・。」

大芝は何を言うことなくただ外へと出て行った。


宿から出てゆく大芝を二人の目がじっと見つめていた。

大芝はブラブラと港へ行くと、暫くその場に座っていた。

それはただ港を見つめているようにも見えた。

陽が暮れるとやっと大芝は立ち上がった。

そしてどこかの国からやってきた乗組員なのか、すでに酔いつぶれている男に声をかけ、その男とともに夜道を歩き始めた。


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