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第56話 仲間

このところ、この大陸では魔城からの魔物の大量流入について各国の大使を集めて頻繁に会議が行われていた。

紀伊たちが朱雀国にはいると国境警備兵に止められそのまま国王のもとに呼ばれた。

朱雀国宮殿は濃い赤色に様々な朱雀の螺鈿が施された木造建築だった。

その施しの美しさに寄ってゆくとそっと指で触れてみた。

「すごい。綺麗。はあ、ここが花梨様の国。」

紀伊は一行へと戻ると先頭をあるく柳糸に問いかけた。

「八鬼さんが、話通しておいてくれたのかな。」

「まあ、ここまで話が早いと、何か別の思惑があるのかとも思うけど。」

柳糸は視線を色々なところに送りながらこの国の本意を探ろうとしていたが、別に衛兵が多いわけでもない。

ただ美形集団は人の目を引く。

それぐらいの視線しか感じなかった。

「あれは、お前たちの父親のいた悪がき仲間でも一番頭の良い子だった。どんなずる賢い作戦でも立てるのが得意な子だった。ああ、本当に思い返しても腹が立つ。私が愛する貴方のために方々探し回って二週間煮詰めた鍋をあいつらに奪われ、村のため池に流された日の事を!」

すると時鬼が砂鬼に小さな声で囁いた。

「あの時は助かったよ。あんなもの食べたら死ぬだろ?」

「本当はご自分が私たちに頼んだとおっしゃってくださらないから私たちは今でも巳鬼さまの御不興を買ったままなんですよ。でも、忠鬼は好奇心で一口食べて、数日起き上がれなかったから、食べずに正解でしたね。その後、ため池も暫く異臭がして近寄れなかったですし。」

「だろ?あ、でもそのとき、忠鬼、雅鬼に看病してもらったとか言って偉く喜んでたな。」

「ああ、そうでした。雅鬼は面倒くさそうでしたけどね。忠鬼ったら看病してもらえるならもう一口食べるってききませんでしたね。私、絶対あんなもの口に出来ません、忠鬼の根性には脱帽です。」

「俺もだ。」

巳鬼が囁きあう声に気がつき二人を眺めると、時鬼はそんな巳鬼の手を取って囁いた。

「残念だったよ。君が折角作ってくれたのにな。」

「本当に。砂鬼、私は許さないよ。」

「ええ〜私?」

一番後ろを歩いていた大芝は庭の大木に目を留めた。

木下では小さな女の子が風で飛ばされた帽子を取ろうとしていた。

紀伊はそんな大芝に気づくと足を止めた。

「どうしたの?」

「先に行っててくれるか、後でいくから。」

ひょいと列から離れた大芝を残して柳糸たちはまた歩きはじめる。

「そうだ、紀伊・・・。彼は前に手紙で書いていた紀伊を敵視していた人?」

「あ・・・うん。」

「今は大事な仲間なんだ。私のことだって分かってくれたし、私だって大芝のことわかってきた気がするんだ。」

紀伊が微笑むと紅雷がいつものように割り込んだ。

「お前のこと一番分かってるのは俺だからな!」

「分かってるからって、結婚できるとは限りませんよ。分からないことが多いから好きになることだってあるんです。」

「ね?」

砂鬼が紫奈の手を握ると紫奈は顔を赤らめた。

巳鬼は一度大芝へと視線を送ると息を吐いた。

「だれか・・・あいつを早くあの地獄から解放してやれ。」

「師匠、何かいいました?」

「いいや、独り言だ。」



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