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第55話 紅雷の敵

巨大な墓所で祈りを捧げていた男は朝靄の中、腰を上げた。

足音が聞こえたからだ。

そして墓へと向かってきていた人間は先に人がいることに気がついて足を止めた。

「誰だ・・・そこにいるのは・・・。」

問いかけたのは老人の声だった。

「先祖の墓参りだ。」

その若い声を聞いた途端に老人は膝を折ってその場に座り込んだ。

「そんな・・・どうして・・・これは四神のいたずらか。」

「お前に頼みがある。」

「頼み・・・ですと?」

老人は顔を上げて朝靄の中から出てきた相手の顔をただ見つめた。

その顔は最後にあった時となんら変わっていなかった。

「兄上・・・。」



「もうちょっと・・・寝かせて。」

紅雷は起しに来たものの、久しぶりに見る紀伊の寝顔を幸せそうに見つめていた。

「こういうのが幸せなんだよな。ほっぺた触ってもおきねえよな?」

頬を緩めそろりと手を伸ばした途端、扉が開き女が現れた。

「起こすのにいつまでかかってるんだい!」

「おい、ばばあ!うっせえぞ!」

紀伊の至福を奪おうとする巳鬼に噛み付いた紅雷は一瞬後、後悔に襲われた。

自分の目の前まで杖が振り上げられていたからだ。

「あ〜。」

柳糸はそんな様子を遠巻きに見ていたが、紅雷の頭に杖が気持ちよく当たるときには両目を閉じた。

後ろから入ってきた大芝はそんな光景にため息をつくと両手で紀伊の両肩掴んで激しく揺すった。

これぐらいしないと紀伊が起きないことはもう知っている。

「お〜い!起きろ〜。お前のせいで仲間が痛い目にあってるぞ。」

「やだ〜もうちょっと。」

すると巳鬼の杖が紀伊の頭へと振り下ろされた。

「いったああああ!」

「さっさと起きんか!」

紀伊は涙目になりながらそばにいる大芝と目を合わせた。

「だから言ったろ?」

「だってね〜む〜い〜。」

「な、何だ!お前!紀伊に何色目使ってるんだ!」

紅雷が見つめあっていた二人の間に割り込み声を荒げた。

「色目?別に。」

「わ〜。たんこぶできてるよ・・・。師匠のイジワル・・・。」

大芝は紅雷を押しのけるとそんな紀伊の頭を撫でた。

すると紅雷はそんな手をどけて自分が紀伊の頭を撫で回した。

「紀伊にさわんなおっさん!」

「おっさんだあ?どこ見て物言ってる!表に出ろ、このくそガキ。」

「上等だ!」

そして二人は外へ出て行った。

紀伊はのそのそと体を起こすと顔を洗ったまでは良かったがもう一度布団に戻ろうとした。

その手を柳糸が掴み、優しく微笑む。

「おはよう、紀伊。」

「ねむいよお。すぐ起きるから。もうちょっとだけ。」

「紀伊、気づかないか?後ろですごい殺気をだしている女の人、いるんだけど。」

すると紀伊はまたくっつきそうになった瞼をこすって柳糸の後ろを見た。

そこには杖を振り上げた巳鬼がいた。




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