第39話 進むしか
「さて、何処にいこうか。」
次の朝、時鬼が地図を持って眺めていた。
何を言うこともなくそんな時鬼の顔色を窺っていた紀伊の頭に後ろから杖が投げつけられた。
「っつたあ!」
「私の愛する人に色目使ってんじゃないよ。まあ、あんたが色目使っても負ける気はしないけどね。」
「そんなことしてませんよ。イタタタ。」
「はあ、もう、こうなってしまったら仕方ない。進むんだよ。お前は何処に行きたい?」
紀伊は驚いたように静かに紀伊に問いかけた巳鬼の顔を見つめていた。
「あのねえ、私だって、ひよっこの過ちをいつまでも責めるつもりはないよ。」
「師匠・・・。」
「私の弟子はもっと使える子じゃないとダメなんだけどね。まあ、いいか。こき使ってやる。」
「師匠!」
大芝も嬉しそうな紀伊を見て後ろで微笑んだ。
「じゃあ・・・、あの早速なんですが・・・。」
「何だい?」
「魔城の外務官の人の話では李国に鬼族が一人いるそうです。行ってみましょう。」
「魔城の外務官か。あのいつも笑顔の青年だろ?昔、何度か会ったことがあるな・・・。魔城は情報を手に入れていたのか。」
時鬼の言葉に紀伊は尚浴の顔を思い浮かべた。
すると連鎖的に幹部や幼馴染たちの顔が思い浮かんだ。
あの騒がしい日常が懐かしく思えた。
(皆に会いたい。)
けれどすぐに現実に自分から戻った。
「李国には朱雀国を抜けていこうか。ちょうどここから南に行けばすぐ国境だ。」
「風神にのれば早いんじゃないんですか?」
「なんだい、お前、私の力を酷使する気かい?これだから最近の若いもんは。」
「もしかして、師匠。時鬼さんに会いたいからあんなに急いで・・・。」
大芝は早くにそのことに気がついたのか紀伊の言葉に静かに頷いた。
外へ出ると当たり前のように巳鬼の馬に乗り紀伊は選択肢もなく大芝の馬に乗った。
目の前のイチャイチャし続ける二人の大先輩たちをあえて見ないようにして紀伊は大芝に軽く頭を下げた。
「大芝、ありがとう。大芝のおかげで元気になれたよ。」
紀伊の言葉に大芝は微笑んだ。
「そっか。良かった。」
「うん。でもいいの?私の旅につきあって。」
「こんな変な一族の旅そうあるもんじゃないしな。楽しいよ。もしかして部外者は邪魔か?」
大芝の言葉に紀伊は首を振った。
「いてくれて良かった。」
(話し合えば分かり合える、秋涼様、私少しは旅に出た意味があったのかな。)
紀伊は空を見上げた。
(もっと世界のことを知って、色々な人と話し合って魔城のことを教えてあげたい。そしたら、皆、私の好きな人を好きになってくれるかもしれない。)
紀伊は手紙を送ることはやめ、秋涼にいつか渡せるように紙に少しずつしたためていくことにした。




