表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/117

第111話 信念

「話を聞いてくれ!」

秋矢が叫ぶが、息が上がって、声がまともに出なかった。

「五月蝿い!」

目の前の紫奈は怒りを全てに力に変え、秋矢にぶつけてきた。

「秋霖は滅びたんでしょう?だったら君も消えてくださいよ。」

「消えるわけにはいかない!」

「なら、私が消します!」

紫奈は魔法で刃を作った。

そして刃を振り上げた。

秋矢はほんの一瞬、死を悟った。

けれどすぐに紀伊の顔が浮かんだ。

「死ねるか!」

自分が死ねば紀伊を誰が守る。

誰が彼女を一番愛する人になる。

それは自分でなくてはならなかった。

紀伊を一番愛して、愛されるのは兄秋涼でも、双子の片割れでもない。

自分でなくてはならなかった。

叫ぶと同時に、秋矢の前に白い膜が現れ、紫奈が振り下ろした会心の一撃がはじかれた。

その時だった。

秋矢の体を誰かが抱きしめた。

きつく自分の体を抱きしめてくれる自分よりも小さな体。

そしてその体から漂う香りを知っている。

「紀・・・伊。」

愛しくて仕方ない存在だった。

「無事で良かった・・・。」

紀伊は秋矢の体を自分の体でしっかりと包みながら、二人は後ろに倒れこんだ。

「紀伊、どいてください!」

そんな二人の姿を見ても、冷静さを取り戻さない紫奈の手を誰かが掴む。

強い力に苛つき、睨むと栗色の瞳とぶつかった。

それは紫奈にとって愛しい人の瞳。

「さっちゃん。」

「なっち、私大丈夫だよ。生きてるから。」

「さっちゃん。・・・生きてた。」

砂鬼は目じりを下げると紫奈にゆっくりと言葉をかけた。

「秋矢君が助けてくれたんだ。だから、怒るのやめて。」

「さっちゃん。」

「秋矢君は味方だよ。だって紫奈の友達なんでしょ?」

友達という言葉が突き刺さった。

自分は今そんな相手に何をしようとしたのだろう。

紫奈はその手を掴んで泣いた。

「間に合った。」

何とか駆けつけ息を吐いた柳糸は視線を上へ向けた。

「おじさんも人が悪いな。結界なんて張らないで止めればいいのに。」

「だってさあ、なっち、男同士の喧嘩とかしたことないかなと思ってさ。」

紫端は意地悪く笑うと、表情を少し厳しくして呟いた。

「ねえ、りゅうちゃん、体力残ってる?」

「え?まあ。」

「よかったあ、暇なら、うちの兄上助けに行ってよ。あの階段下りるの面倒だからね。頑張れ、若者!」

「・・・え〜。」

「ひどい子だな。ほら、行って。まだ助けられるかもしれないでしょ?早く!早く!」

「・・・はい。」

「確かに強くなったけど、でも、一人じゃ無理か。行こうっと!」

その場から柳糸を強制的に消すと紫端も消えた。

「秋矢、すいませんでした。」

紫奈はそう言って手を差し伸べた。

秋矢はそんな手を握った。

「うん。」

紀伊はそんな二人の間に立つとお互いの顔を見た。

「もう、いつまでたっても人を巻き込む喧嘩するんだから!」

すると二人も紀伊の顔を見て微笑んだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ