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第105話 双子

「紀伊、しっかりしなさい。」

巳鬼が叫び声をあげ、透影が紀伊のもとに走って行く。

紀伊のそばに紅雷が駆け寄った。

紀伊はまたぼんやり空を見上げていた。

(この空の向こうにお父さんお母さんは、いるのかな。なんだか、ここはすごく寒いよ・・・。そっちに行けば暖かい?)

紀伊の視界に空高く舞う白竜の姿が見えた。

(お願い。力を貸して・・・。私は死んでもいいから、あの人達を助けてあげて。白竜。お願い。)

「これは?」

突然光りだした紀伊に驚いた透影があまりのまぶしさに目を閉じながら、巳鬼に訊く。

「竜は・・・思いの強い鬼族のなれの果て・・・。力を求める鬼族が竜となる・・・。鬼伊は・・・。」

光が収まると鬼伊の姿はなかった。

「鬼伊はおそらく・・・。」 

巳鬼は空を見上げた。

空には小さな水色の竜がいた。

それは何とも寂しげな色であった。



「紀伊?」

軌刃は顔を上げた。

軌刃のいる平争の前線は地獄絵図だった。

死んだ魔物と人が入り乱れ、緑色の血と赤い血が交わり地面がなんともいえない色をしていた。

そして人の数には限りがあるにもかかわらず、魔物には数がなかった。

軌刃は迫って来た魔物を切り捨てると魔城へと視線をやる。

心の何かが不意に悲しい気持ちでいっぱいになってゆく。

「紀伊。何があった?」

それでも、敵を切り続ける。

けれど軌刃にも限界の時が来ようとしていた。

体力が尽き、膝をつくと、その上から魔物が押し寄せてくる。

「黒竜!」

叫ぶと黒竜は魔物を倒してはくれるが体力を恐ろしく消耗した。

そして弱った体ではもうそんな威力のある竜は召喚できなかった。

目の前に魔物の牙があった。

「・・・紀伊。・・・真壁様。」

覚悟を決めた自分に何一つの衝撃がなかった。

「王宮は暇だ。」

目の前にいた男は上から羽織っていた衣を脱ぎ捨て黒装束になった。

「真壁様。なんで・・・。」

「ただの運動だ。」

そう言い放って魔物を斬る真壁を見て軌刃は口元を緩めた。

「そうですか。最近、気になってたんですよ。貴方の下腹。」

すると真壁は腹に触れた。

「なんだ。気づいてたか。仕方ない、ちょっと、体を動かして痩せないとな。軌刃にこの体見せるときに恥ずかしくて仕方ないからな。」

「・・・見たくないし。」

「そういうな。俺のはじめてはお前にやるから。」

「気持ち悪!」


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