第104話 どうしたら・・・?
「残念だ・・・。」
秋霖は笑う。
異様な緊張感があたりを襲う。
誰も動けない。
皆秋霖を囲んでじっとしていた。
不意に秋霖が笑った。
「そう言えば、そこのお前、私が殺してやったのだったな・・・。」
それは大芝に向けられた言葉であった。
大芝は何も答えなかった。すると秋霖は続けた。
「何故、お前が復活したか教えてやろうか。」
秋霖はまるで道化を見るような目で大芝を見ていた。
「どういうことだ。」
耐えかねて大芝が尋ねると秋霖は以外な一言を呟いた。
「お前は、秋涼に対する嫉妬で甦ったのだ。成仏できないのはお前が秋涼を憎んでいるからだ。憎しみを力にしてお前が何度でも甦るように魔法をかけておいたのだ・・・。あの時にな。」
「憎しみだ?そんなもの紀伊に出会ってから捨てた。」
「なら、何故お前はそこにいる?憎んでいるからだ。自分から妻を奪い、紀伊という娘に慕われている秋涼を。そして自分を王座につけなくさせた花梨を。お前は世が世ならあんな暗い森にいる人間ではないからな。」
「ふざけるな!俺が花梨を憎んでいるだと?」
けれど大芝はそのまま胸を押さえた。
「花梨を憎むなんて・・・そんなこと。」
その後ろでは花梨が目を伏せ涙をこぼしていた。
「ごめんなさい、琉陽様。」
「違う!そんなはない!」
叫んだ大芝の肩を誰かが叩いた。
「原因が分かってよかったじゃないか。これでお前の地獄も本当に終わりだ。」
時鬼だった。
大芝は一度花梨を見つめた。
花梨は申し訳なさそうな目を向けた。
「ごめんなさい。琉陽様。」
「・・・憎しみで存在するっていうなら、魔王を倒すまでは存在してやる。俺の愛した女と、紀伊を守りきれるまでな!」
「よく言った。」
時鬼は今まで伏せていた目を上げる。
その目は金色に変化していた。
その瞳を見た秋霖は鼻で笑った。
「なんだと思えばこっちは鬼族か。自爆しか脳のないな。」
「言ってろ!」
時鬼が竜を召喚する。
赤い竜が秋霖に向かって奔り、煙が上がった。
しかし秋霖は無事に立っていた。
そこを魔法攻撃も物理攻撃も効かない大芝が襲い、それをよけた秋霖の体を秋矢が切りつけた。
肉を斬る音と共に、血が滴る。
しかし攻撃は終わらなかった。
秋霖が回復しない内にと、秋涼は魔法をかけ続けそのうちの数発が秋霖に当たり、蒸気が上がった。
そして再び時鬼の赤い竜が正面から秋霖を襲う、しかしそこで秋霖の口がにやりと上がった。
赤い竜を手で止めると、ねじ伏せる。
「くっはあ!」
時鬼の腕からは血が噴き出した。
「こんな物か?」
秋霖の言葉に秋矢は斬りかかるが剣を止められ吹き飛ばされた。
塔の上を体が滑り、地面が視界のかなたに見えた。
秋矢はかろうじて塔の端に引っかかるとそのまま体を引き上げた。
秋矢は自分の父でありながらその強大さに呑まれつつあった。
「どうしたら・・・倒せる。」
なんでかここ最近更新したものがおかしくなっておりました。気がつくのが遅くなって申し訳ございません。




