第103話 復讐の時
秋涼と秋矢、二人は肩を弾ませながら、秋霖を見据えていた。
「俺、絶対、明日、筋肉痛。」
「兄上、これに勝たなければ明日なんてきませんよ。」
「だな。」
秋涼は息を整えると父親を見据えた。
しかし秋矢はその父親の後ろにある紀伊の姿を見つめ一瞬呆然と立ちすくんだ。
そして秋涼もまた紀伊の姿を見ると父親を睨んだ。
「紀伊!」
(秋矢様の声・・・。)
紀伊の耳に秋矢の声が届いた。
紀伊がピクリと動いたのを二人は見て取った。
「あなたたちさっさとやるべきことを成し遂げなさい。」
花梨の声だった。
秋涼と秋矢が振り向くとそこには花梨がいた。
「花梨、どうしてここに。」
「さっさとあいつを紀伊から引き離せ。その間に連れてゆく!」
その隣に立っていた大芝を見て、秋涼は首を振った。
「どうして・・・お前。」
「なんでもいい。早くやれ。」
「兄上!」
秋矢の声に秋涼は前を向いた。
そして手に剣を出すと、秋霖へと切りかかっていった。
その隙をぬって秋矢が動く。
秋霖の体が宙へと浮いた。
「いくぞ!」
大芝と花梨は駆け寄って紀伊を抱き起こした。
「紀伊!しっかりしなさい。」
花梨は紀伊の頬を叩くが、紀伊にはもう何の力も残っていなかった。
ただ朦朧とした瞳で空を見ていた。
「ああ、紀伊。どうすればいいの?」
「紀伊、しっかりしろ。お前も俺みたいになりたいのか?いいからしっかりしろ!」
紀伊は薄く笑ったつもりだった。
(亡霊か・・・。それも悪くない・・・。皆のそばにいられるなら。)
「きいちゃん!しっかりして!」
紫端が駆け寄った。
紫端は紀伊に治癒の魔法をかけた紀伊の顔色は変わらなかった。
「早く、透影に見せないと・・・。」
その時だった。
風と共に風神が到着した。
そこには巳鬼と時鬼が乗っていた。
「紀伊!しっかりおし!何腑抜けた顔してんだ。」
巳鬼は紀伊の顔を叩いた。
「何してんだい!あんた私よりも若いんだろ!」
「巳鬼、落ち着け。どこへ運べばいい?」
時鬼の言葉に花梨は叫んだ。
「早く、透影に!彼女なら治せるわ!」
「わかった。」
巳鬼は急いで風神に紀伊を乗せた。
しかし時鬼は乗らなかった。
「あなた?」
心配そうな巳鬼に時鬼は軽く笑っただけだった。
「巳鬼、早く行ってやれ。」
「あなたは?」
「俺だってやることがある。」
巳鬼は時鬼と紀伊を見比べてから、瞳を閉じて風神を出した。
「何か知らないが・・・。随分派手にやってくださいましたね。父上。」
秋涼は秋霖に斬りかかった。
「お前は愚息だった。だが、秋矢は後継者にと思っていたが・・・。」
視線の先の秋矢は剣を父親に向けていた。