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§140 スライム vs 界面活性剤 2/3 (sun)

地上では、キャシーが、不破の不意打ちに喜びながら、定期開催になって初のブートキャンプを明日に控えて準備を行っている頃、俺たちは代々木の1層奧でスライムに対する実験を始めようとしていた。

キャシーに聞いたところ2グループまでは面倒を見られそうだとのことだったので、多すぎるDADの申し込みは、地上部のキャパを広げてから孫階層で処理することになった。


「しかし、今回の薬液の量は半端なかったな」

「ほんのちょっととかでは売ってくれませんからねぇ……」


界面活性剤は、あらゆるジャンルで活用されている化学物質だ。研究されている年月も長いし、その分種類も多い。

俺たちは、それをひとつひとつ100mlのスプレーボトルにつめて準備をしたのだ。


「そもそも、塩化ベンゼトニウムの何が作用するのかさっぱりですから、絞り込みもできません」


三好は収納からタブレットとペンを取り出しながらそう言った。


「とにかく、片っ端から試しましょう。対象は一杯いますし。最初はイオン系陰イオンタイプから行きましょう」


「アニオンなんちゃらって書いてあるやつだっけ?」

「そうです。番号順でいいですよ」


俺はアニオン1と書かれた、トリガータイプのスプレーボトルを取り出した。

100mlでトリガータイプのボトルはほとんど無いが、対スライムならフィンガースプレータイプよりトリガータイプの方が使いやすい。

わざわざ探して購入したのだ。


「じゃ、アニオン1行くぞ」


「了解です」


俺はスライムに向けてそれを3回、間を置いて噴出した。

1プッシュ0.3mlなので約1mlを使用したわけだ。


「アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、効果ありませんね」

「どっかで聞いたな」

「昔の泡公害の原因物質ですよ。ドデシルもダメでしたから、アルキルベンゼン系はダメっぽいですね」

「じゃ、次行くか。アニオン2! でやっ!」


プシュっと音を立てて、アニオン2がスライムに降りかかる。

スライムはフルルンと身を震わせただけで変化がなかった。


「高級アルコール系もだめですかね。アニオン3と4も連続して行ってみてください」

「いや、そんな混ぜていいのかよ。別のスライムを使うか?」

「可能ならそれでお願いします」

「了解」


きょろきょろと辺りを見回しながら、アニオン6までためしたところで、陰イオンタイプは終了した。


「うーん。陰イオンタイプは全滅でしたね。オレフィン系は魚毒性が強いので、なにか効果があるかなと思いましたけど」

「へーきのへーざって感じだったな」


仮に毒が効いたとしても、即効性というわけにはいかないだろうしな。


「じゃ、次は非イオンタイプに行きましょう」

「陽イオンタイプじゃないのか?」

「それは効果があるものが分かってますから、他を先に」

「了解」


そう言って、俺はノニオン1と書かれたボトルを取り出すと、それを新しいスライムに向けた。


「ノニオン1、撃ちまーす!」


プシュと音を立てて発射されたそれは、霧状になってスライムに降りかかったが、変化は何もなかった。

それ以降も、2~5まで変化なし。そして6番目を取り出したときだった。


「なんでこれだけスプレーじゃないんだ?」

「それにはふかーいワケがあるんです。ともかくそれは、塗りつけてください。ぺとっと」

「分かったよ」


俺はそのゼリー状の物質を、スライムの上にぽとりと落としてみた。


「特に変化はないぞ?」

「うーん。効果ありませんか」


三好は残念そうにそう言った。


「で、これってなんなの?」

「メンフェゴールです」

「なんだ、その悪魔の名前みたいなのは? ベルフェゴールの親戚か?」


化学物質も、よく知られた物質が長々とくっついている名称は、物質が想像しやすいが、こういうのは知らない時点でアウトだ。


「松ヤニから抽出される非イオン系の界面活性剤ですね。これを買うの、大変だったんですよ」


三好が腕を組んでウンウンと頷いている。心なしか顔が赤い。


「なにか取り扱いに免許でもいるのか?」

「いえ、昔はエーザイで買えたらしいんですけど、今ではそのもので売っているところが無くて。まあ、なんといいますか、ラブドームガールズガードから取り出したんですよ」

「ラブドームカールズガード?」


なんだ、その怪しげな名称は。


「分かり易く言えば、殺精子剤付きの今度産む、ですね」


おっと。考えていたよりも、ずっと普通の商品だった。しかし、名称が怪しすぎないか?


「殺精子剤って、界面活性剤なのかよ」

「です。以前はキャンディフロートシリーズで、エポカって名前だったみたいですよ」

「ふーん」


音はともかく、そう聞いたところで何の商品かは全然想像できないな。お菓子かと思いそうだ。そう考えるならラブドームってのは、一度聞けばなるほどなぁと思えることは思える。


「DOMEのOが模式化された手でOKを作っていたり、パッケージと個包装に『女性に人気のヘビ柄を採用』なんて言ってみたり、オカモトさんって、どっかちょっと変で面白いですよね」

「ヘビ柄って女性に人気か?」

「大阪のキタやミナミには大勢いらっしゃる気がします。戦闘服って感じで」

「あ、そっち」

「これを買うときに見たら、ダンボーバージョンのケースなんかもありましたよ。そっちは可愛いというか、ダンボーでした」


そんなところにまで。ダンボーはどこにでも現れるってのは、都市伝説じゃなかったのか。


「あと付け方のビデオとかがあるんですけど、ザ・コンドームマスターのコンドー教官が出てきて、オカモト以外のコンドームを持っているやつは精子からやり直せって罵倒されるんですよ」

「なんじゃそりゃ」

「そして、装着したら、魂から叫ぶそうですよ、エクスカリバー!って」

「……あまりにコメントしづらいが、やってることはうちも大差ないか」

「ですね」


ともかく、ノニオン6は、その先端をちょん切っては集め、ちょん切っては集めした、力作なんだそうだ。

残念ながら効果はなかったが。


「因みにノニオンは5番目のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが期待大だったんですが」

「有機化学やってて思うのはさ、とにかく名前が長いよなぁ」

「ただ順番に並んでるだけだから理解はしやすいんですけどね」

「で、それも?」

「タンパク質の変性作用がある非イオン系の界面活性剤で、これも殺精子剤に使われてます」

「タンパク質の変性作用がある殺精子剤って、言葉だけ聞いてるとヤバいな」

「そうですね。なにか怖そうな感じがしますけど。その程度の量だと、人体への影響はほとんどないみたいですよ。あ、感染症にかかってると装着したとき男性は痛いそうです」

「へ、へー」


なんとも微妙にリアルな話で、俺は思わず苦笑した。


その後も持ってきた物質は全て試してみたが、非イオン系で効果のあるものは見つからなかった。


「こうなってくると、両性タイプもあんまり期待は出来ませんけど、一応やっときますか」


結果、アミノ酸系もペタイン系も、アミンオキシド系も効果はみられなかった。


そして問題の陽イオンタイプだ。


「陽イオンタイプの界面活性剤は、全部第4級アンモニウム塩だって聞いたが」

「お、先輩。予習しましたね」


俺はカチオン1と書かれたボトルとカチオン2と書かれたボトルを取り出した。


「まあ、もともと化学系のお仕事だったわけだし、一応作用機序とか気になるだろ。んじゃ、いつもの、塩化ベンゼトニウムから行くか」


カチオン1と書かれたボトルのトリガーを引くと、スライムは一吹きではじけ飛んだ。僅か0.3mlだ。


「いつみても感動的に凄いよな」

「というか、今更ですけど、意味不明ですよ」


三好は頭を捻っている。


「どんな効果が作用したら、こんな事になるんだと思います?」

「一番劇的になりそうなのは、界面自由エネルギーを低下させて、形状維持が困難な状態にするってところだろうが――」

「そうなんです。でも、それだと他の界面活性剤でも同じような効果が少しは出るはずなんですよね」

「殺菌効果が原因なら、まずは蛋白変性と酵素の切断か?」


俺は殺菌剤の作用機序を思い出しながら言った。


「それならノニオン5だって同じでしょう」


あの、ポリオキシエチレンなんちゃらエーテルだ。


「まあな。それについで、糖の分解や乳酸の酸化……代謝への作用か。で、膜透過性障害による溶菌とリンおよびカリウムの漏出」

「そうです。それから解糖が促進されて、原形質膜の活動を支える酵素に作用すると言われています。だけど――」


三好は俺の手から、カチオン2と書かれたボトルを取って、近くのスライムに噴射した。

スライムはプルルンと震えただけで、特に何も起こらなかった。


三好はそれを見て残念そうに肩をすくめた。


「それ、効果があるはずだったのか?」

「そうですね。このカチオン2なんですけど、塩化ベンザルコニウムなんです」


三好は、シュッシュッともう2回トリガを引いたが、効果はなかった。


「これって、おかしいですよ」

「なにが?」

「塩化ベンザルコニウムと塩化ベンゼトニウムは、作用に関して言えばほとんど同じなんです」

「同じ?」

「抗微生物スペクトルも、さっき言った作用機序も、使用したときの主な副作用まで、ほぼ同じなんです。なのにこの効果の違い――」


三好はもう一度トリガを引いてから言った。


「――これって実は、化学的な作用機序とかとは、全然無関係だったりしませんか?」


もはや化学的な実験云々を超越するその台詞に、俺はしばし無言で考えた。


「ごく僅かな違いが劇的に違う効果を引き出すことがゼロとは言い切れないが――なあ、三好」

「なんです?」

「お前、始めてダンジョンに潜って、ドデシルなんとかを使った時、効果がなかったろ」

「はい」

「その後、塩化ベンゼトニウムを使うとき、何を考えてた?」

「え?」


ちょっと前のことを思い出すように、三好は首をかしげた。


「うーん。よく覚えてませんけど、あのときは始めてここであちこちにくっついているスライムを見て、なんだかばい菌みたいだなって……」


たしかにそうだ。洞窟のあちこちに張り付いてうごうごしているスライムは、模式化されたばい菌に似ている。


「実は俺も似たようなことを考えてた。その時、塩化ベンゼトニウムがマキロンの主成分だって事は知ってたんだろ?」

「それは、もちろん」

「つまり、スライムはばい菌みたいだったし、マキロンは消毒液だった」

「先輩、まさか……」

「……じゃないかと思うんだ」


こうしてみると、スライムが塩化ベンゼトニウムに弱いのは、ほぼ間違いなく俺たちのせいなんじゃないだろうか。

俺たちがスライムをばい菌ぽいと考え、三好がそれにマキロンを噴出した。つまり、それに弱そうだと強くイメージしたから、その時から、スライムはそれが弱点になったんだ。

もちろんメイキングの仕業なのかも知れないが。


「じゃあ、もしかして、もしかしてですよ? 他のモンスターも……」

「もちろんあり得るけど、普通の探索者のイメージまで影響するんだとしたら、逆もあると思わないか?」

「逆?」

「くそっ、何も通用しない! こいつに弱点なんかないのかよ! って強くイメージされたモンスターは――」

「弱点がなくなる?」

「かもな」


今この瞬間にも世界中でモンスターが探索者たちと闘っている。

そのイメージがモンスターのプロパティにフィードバックするとしたら、そいつらはどんどん俺たちが想像するとおりの機能を身につけていくだろう。


「もっとも、もしもこれがメイキングの知られざる作用だとしたら、こんなことができるのは俺たちだけだろうけどな。今のところは判断できない」


あのとき最初にスライムにスプレーしたのは三好で、俺は横に立って見ていただけだった。

確かに同じようなことを考えていたが、それで、対象に影響を及ぼしたのだとすると、メイキングの効果範囲にさえいれば誰がやっても効果があるってことだろうか?

それとも、たまたま同じ事を考えていたからそうなったんだろうか?

それともメイキングは無関係で、誰がやってもそうなるのだろうか?


「これの証明は難易度が高そうですよ」


三好が、カチオン2を収納に仕舞って言った。全くその通りだ。


ともあれ、もしもそうなら、スライムに効果があるのは塩化ベンゼトニウムだけだと言うことになる。

もしもそれだけで特許を取ったとしたら、世界中の研究者は、ありとあらゆる似通った物質で特許を回避しようとするだろう。

そうして、それがスライムに与える作用の機序を躍起になって調べるかも知れない。実はそれが無駄な努力だとも知らずに。全員が意味不明な結果に頭を抱えるのが目に見えるようだった。

もちろん、誰かが新たな弱点をスライムに与える可能性はゼロではないが。


「ちょっとでたらめすぎないか、この世界」

「全てがDファクターで構成されているとするなら、分からないでもないですけどね。だって動的にどんな性質にでもなる物質ですよ? 私たちからすれば、それ自体がでたらめですよ」

「まあな」


俺はため息をついてそう答えた。


「結局、Dファクターの利用方法や性質を調べる方向へ進む方が、ダンジョンを利用する研究としては正しいのかもなぁ」

「地球の科学で、物性的に割り切ろうとするのが間違いってことですか?」

「それって前の会社の俺たちを思いっきり否定してるよな」


俺たちは以前の会社で、ダンジョン産アイテムの性質を研究していたのだ。

何かに応用するにしても、もとの性質を知らなければ何もできはしない。そう思っての研究だったが、なにしろ基礎研究は直接的な利益を生まない。今年度になってから、成績を気にする上司によって、無理矢理カネを儲けるための無茶な開発に舵を切らされて……まあ、それが上手く行くんなら苦労はしないよな。

結果今に至るわけだ。あれ? もしかして、ある意味、榎木って恩人なのか?


俺は、訳の分からない結論に辿り着きそうな思考を打ち切るように頭を振った。


「もちろん、それが無駄とは言わないが、例えば魔結晶からエネルギーを取り出そうとしている研究があるだろ?」

「はい」

「あれ、思うんだがDファクターの高レベル集合体っぽい魔結晶を、地球の常識で取り扱うから瞬時にDファクターに分解しちゃうわけで、いっそのことDファクターそのものとして取り扱った方がいいんじゃないかと思うんだ」

「先輩。言ってることはわかりますけど、意味が分かりません」


三好はハテナを頭の上に浮かべていた。


「今は、魔結晶から何らかのエネルギーを取り出して、例えばそれを熱にすることで発電機のタービンを回そうとかしてるわけだろ?」

「そうですね」

「そうじゃなくて、もうそのまんま、魔結晶を構成しているDファクターに、電気になってねと頼んだほうが良いんじゃないの、ってことさ」


もしもDファクターが充分にある世界なら、そこらにあるDファクターに電気になってもらえるのなら、それこそ電池も電源も要らない電化製品ができあがる。

地球の科学では、電気を電波で転送しようという試みがこれに近いだろう。

濃度が充分でないダンジョン外なら、その部分をDファクターの塊である魔結晶で補おうという発想だ。


「どうやってです?」

「だから、それを直接研究した方が早いんじゃないかってことだよ」


三好はうつむいて、足下の石ころを蹴飛ばした。


「もしもそれが可能になったら、ダンジョンに持ち込むいろんな機器が、バッテリーのくびきから解き放たれるってことですよね」

「そうだな」


もっとも安定供給できるかどうか分からないから、緊急用にバッテリーも必要になるとは思うけど。


「DPハウスの調達価格がすごく下がりそうで嬉しいですけど――」


顔を上げて、苦笑しながら肩をすくめた。


「――とっかかりがなさ過ぎて想像するのも難しそうですよ、それ。もうやけくそで、魔結晶に電線張りつけて、豆球をつないでみます?」

「そりゃあ酷い。とは言えそんな感じだよ。魔結晶の場合は、物性的な事を調べてどうにかしようとしてもダメだと思うんだよな」

「メイキングがあればできそうな気もしますけど。そして、スライムを見る限り、一度できるようになると、誰にでも再現できるようになるみたいですし」


俺たちが発見した後は、誰が塩化ベンゼトニウムを使ってもスライムははじけ飛ぶ。

つまり一度イデアに設定されたプロパティは、利用者にかかわらずそれを利用できると言うことだ。


「これぞまさしくシンクロニシティってやつだな」

「ユングの言う集合的無意識みたいなものが実在していて、ダンツクちゃんはそれを参照してるってことですか?」

「俺は集合的無意識自体は信じていない。だが、全探索者からその思考を読み取っていると思われるダンツクちゃん自体が集合的無意識に当たるんじゃないかと言われれば、その通りだと思うよ」


そうしてそれに基づいて世界はDファクターで再構成されるのだ。


「それって、メイキングを利用してDファクターの利用方法を確立すれば、誰にでもそれが再現可能になるってことですよね」

「まあ、今までの話が正しいとすれば、そうだ」


三好はカヴァスを呼び出し、その腹に寄りかかって、額に手の甲をあてた。


「先輩。今更ですけど私、世界の命運を握らされているような気がして、げんなりしてきました」

「奇遇だな、俺もそんな気がしてる。耳かきは錬成できなかったけどな」


ヤンキー然としたウンコ座りでそう言うと、俺たちは顔を見あわせて、力なく笑った。

そう、それは決して握っているのではない。握らされているのだ。


「ともかく魔結晶の利用についてはちょっと考えてみましょう。アルスルズのご褒美用に結構な数がストックしてありますし」

「さすが三好、それでも一応調べるんだな」

「先輩、分からないことが分かりそうなときって、知りたくなくても調べちゃったりしません?」

「するする。で、知ってから大抵後悔するんだよ」


好奇心は猫を殺す。

なにしろそれが成功したりしたら、その気がなくても俺たちは、益々ダンジョンを地球に馴染ませる尖兵っぽい。松明を掲げた群衆に取り囲まれて、魔女狩られるのは勘弁だ。


俺としては、ダンジョンはいつなくなってもおかしくないと考えているし、どんなに便利なDファクターの利用方法を発見したとしても、全てをそれに置き換えるのは危険すぎる。

ダンジョンの便利さは享受するにしても、従来の技術はきちんと今のまま進歩させていくべきだ。その落としどころをどうやって見つけるかだが……


「まあ、人類もバカじゃないって信じるしかないか」


それを聞いた三好が、同じ事を考えていたのだろう、「しばらくは供給量と価格がその役目を果たしてくれますよ」と宣った。

確かに、どんなに便利なものが出来ようが、100に満たないダンジョンからの産出量で世界を覆い尽くすのは不可能だもんな。今のところは。

実際、ポーションが発見されても、地球の医療が廃れたりはしていない。


「だといいな」


三好はカヴァスから離れると、フンスと大地を踏みしめた。


「握らされちゃったものは仕方がありません。この際、そのことは全力でスルーしましょう!」

「お前な。それ、そんな気合いの入ったポーズで言う台詞か?」

「先輩。空元気でも元気って言うでしょ」

「へいへい」


そういい加減な返事をしながら、俺も立ち上がって、膝をはたいた。


「もう、反応性界面活性剤と高分子界面活性剤は調べるまでもなさそうですが、とりあえず薬液を用意してあるものは、一通り帰りながら全部試しましょう」

「了解」


スライムを見つける度に、新しい薬液を噴射しながら、俺はDファクターを電気に変換する方法について考えていた。


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書籍情報
KADOKAWA様から2巻まで発売されています。
2020/08/26 コンプエースでコミックの連載始まりました。
作者のtwitterは、こちら
― 新着の感想 ―
あれ?いくらブートキャンプで訓練しても実際にモンスター倒してポイント増やさないと駄目じゃんない? 更に芳村しか貯ポイントをステータスに変換できないんだから。 そして一人一度だけ、とかにしないとキャシ…
お湯を沸かしてタービン回すのが発電には一番だという思い込みを乗り越えられるかな
[一言] 豆電球方式だと乾電池イメージしちゃって1.5ボルトになりそう
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