§135 亡命? 2/1 (fri)
その男が姿を現した瞬間、USの監視チームが陣取っている部屋は、突然の嵐にみまわれた。
「おい! ノール!」
「なんだ?」
「あ、あれ! 今門の前にいるの、ドミトリー=ネルニコフじゃないか?!」
「はあ? んなわけ……うそだろ」
慌てた様子のラリーに促されて、モニターを確認したノールは、確かにそれが偏屈ドミトリーであることを確認した。
ロシアの英雄が、なぜDパワーズの事務所に? しかも、中には、サイモンが居るんだぞ?
「何でサイモンとドミトリーがここで待ち合わせしてるんだ? 何か、聞いてるか?」
「いや、何も聞いていない。ってか、待ち合わせなのかこれ?」
「偶然にしちゃできすぎてる」
「そりゃそうかもしれないが」
「中の音は――」
「相変わらず拾えてない。鉄壁だな」
サイモンチームのスタンドプレーは今に始まった事じゃないが、ヤバい話じゃないだろうな。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「なあ、サーシャ(*1)。あれ、ドミトリーじゃないか?」
CIAとNSAの合同チームとは反対側の角部屋で、下の事務所を監視していた東スラブ系の顔立ちをした男が驚いたように言った。
サーシャと呼ばれた、精悍なヒゲを湛えた鋭い目つきの男は、懐疑的にそれに答えた。
「ドミトリー? まさか。あいつは今18層だろう? ドローニャの見間違いじゃないのか?」
サーシャは、ドローニャが見ているモニターを見に近寄ってきた。
奧の椅子に腰掛けていた、ストイックにヒゲを刈り込んでいるイケメン風の男が、組んでいた足を下ろして言った。
「昨日、目的のオーブがドロップしたとかで、一旦休憩に引き上げたって情報もあったが……撮影はしたか?」
「ああ、データはそっちへ転送しておいた」
「了解。ダンジョンチームへ問い合わせる」
本人らしいその姿に、部屋の中にいるスタッフはあわただしく行動を開始した。
「もし本人だったら、どうする? さっきサイモンらしき男が来たばかりだぞ?」
「ロシアのトップ探索者が、Dパワーズの事務所でアメリカのチームと接触する? 亡命でもされた日には、ミトロヒン(*2)再びってことになりかねないぞ」
「そんなことになる前に……」
「早まるな。しかし、あそこはいったい何なんだ。USの出先機関か?」
「それにしちゃ、向こうの端のご同業もあわただしそうだぜ?」
「もともとWDAは国家を横断した機関だ。あそこが、何らかのダンジョン政治の中心であってもおかしくないのかもしれん」
なにしろ外部からの盗聴対策が完璧に為されている建物だ。それだけでも普通の家屋じゃないことだけは確かだ。
このマンションに世界中の諜報機関が巣くっていることは、すでに周知の事実だが、いまだ、あの家への潜入に成功した国はなかった。
しかもどういうわけか、彼らはそのまま本国へ送り返されてくるのだ。彼らに聞いても突然意識を失ったようだというだけで、何がどうなっているのかさっぱり要領を得ない。気味が悪いとしか言いようがなかった。
先日も、あの家に時々出入りしている女性に盗聴器を仕掛けようと、それを尾行したリョーニャが、いつの間にか道ばたで倒れているところを発見されて、当局に連行されたばかりだ。
どう見てもただの小娘にしか見えない女ですら、訓練を受けた我々をいとも容易く撃退してくる。
「なあ。この世界、何かが狂ってきているような気がしないか?」
ドローニャが不安そうにそう言った。
「なんだよ、いきなり」
「いや、この家の監視を始めてから、なんだか自分達が、この世界から置き去りにされているような気がして仕方がないんだ」
「おいおい、よせよ。俺たちはあの建物を見下ろしてるんだぜ? セーラムズ・ロットの高台に建っている古い館じゃないんだから」
「誰も侵入に成功しないのは、そのせいか。きっと窓の外から、誰かが生贄にされ、主が首を吊ってるのが見えるんだろう」
ドローニャとセリョージャのやりとりを聞いて、サーシャが苦笑混じりに言った。
「いや、おまえらUSの文化に毒されすぎじゃないか?」
「30年も前に、グラスノスチが推し進められた結果だろ」
セリョージャが肩をすくめたところで、ダンジョンチームからの返信が届いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
ソファでは、一本の細い糸のような緊張感が、三好とドミトリーの間にピンと張られていた。
まるで、お互いに真剣を持って対峙している、剣の試合のようだった。
事務所内に入ってきたドミトリーは、そこにサイモンが居ることに気がつくと、微かに驚いたような雰囲気を見せたが、それは、よく見ていないと分からない程度の変化だった。
彼は、どうやら、三好を訪ねてやってきたらしい。居間は二人に明け渡し、俺とサイモンはダイニングのテーブルへと移動した。
『サイモンさん。彼、何しに来たんだと思います?』
『俺が知るわけないだろ』
居間を横目で見ながら、俺はダイニングの椅子から立ち上がった。
『まあ、飲み物くらいは出さなきゃね。って、ロシアじゃ何が定番なんですかね?』
『さあな。甘くてビタミンがとれるコンポートは、よくジョークのネタにされてたが……あとなんだかすっぱいやつとか、蜂蜜のへんな茶っぽいやつとか』
流石にコンポートの用意はない。ケフィールもメドヴーハも……蜂蜜って言うと、スビテンか?(*3)
『コーヒーはあまり飲まないんでしたっけ? うちだとお茶くらいかな』
『もう面倒だからウォッカでも出しとけよ』
『それって、ロシアンジョーク?』
俺は笑いながらサイモンにそう言うと、ドミトリーに声を掛けた。
分からないときは、実際に聞いてみるのが一番だ。ロシアの英雄殿は英語もいけるみたいだし。
『ガスパージン、ネルニコフ』
彼はちらりとこちらを見た。
『チャイは、チョールヌイとゼリョンヌイ。あとはコーヒーと、ウォトカくらいしかないですけど、何が良いです?』
ロシアでお茶というと、緑茶と紅茶が多いそうだ。
緑茶はそのまんま、ゼリョンヌイ・チャイ(緑の茶)で、紅茶はチョールヌイ・チャイ(黒いお茶)というらしい。
それくらい濃く入れて、お湯で薄めて飲んでいたからだと聞いた。
しかし、初めて聞いたときは、チョーヌルイ・茶かと思ったよ、ホント。
『ウォトカを』
おう……さすがだ。
彼が小さく鋭く返事をするのを聞いたサイモンは、呆れたように肩をすくめた。
『あの国の連中がバターとウォッカで出来てるってのは、本当らしいな』
グレイグースも悪くはないし、三好の趣味で葡萄から作るシロックもある。
しかし、現代のプレミアムウォッカは、どうにもカクテル向きで、現代の嗜好に合わせてクリアに蒸溜されている。
クラシックなウォッカをそのまま全力で洗練させてみましたみたいな、ベルーガ・ノーブルもあることはあるが……
『ドミトリーさんって、出身はどの辺でしたっけ?』
『確かエリアは22だったはずだ……最初はオレシェクダンジョンにいたらしいぜ』
『どこです、それ?』
『日本じゃヨーロッパの歴史はやらないのかよ。湖に浮かぶ有名なオレシェク要塞を知らないか?』
シュリュッセルブルク要塞とも呼ばれるその要塞は、サンクトペテルブルグの東にあるラドガ湖から、ネヴァ川が流れ出す場所に浮かんだ島に建っていて、島全体が要塞と一体化している。
13世紀以降、最初はスウェーデンとの、後はドイツとの間で激しい奪い合いがあった土地らしい。
オレシェクダンジョンは、その西側の岸にあるダンジョンで、川の向こう側では、ピョートル1世が、まるでこのダンジョンを警戒するように立っている。
サイモンの説明によると、このダンジョンは、僅か3層という超浅深度ダンジョンだがクリアされていないことで知られているそうだ。というよりも3層の立ち入りが制限されていて、故意にクリアさせていない変わったダンジョンらしい。意図は不明だということだ。
『ロシア人の考えてることなんかわかるかよ。日本人の考えてることもさっぱりだけどな。あとアメリカ人も何を考えてるのかわからねーな』
『そりゃ、他人が何を考えているのかわからないってだけじゃないですか』
しかし超浅深度ダンジョンってことは、しょっちゅう出入りすることになるわけで……もしかして彼の高SPはそのあたりが原因なのかもしれないな。
その話を聞いた俺は、冷凍庫からルースキースタンダルドを取り出した。サンクトペテルブルグで作られるウォッカだ。
何年か前プロムテック・ビズがやったフーデックスのセミナーでルースキーブリリアントを試飲したとき、その味わいに驚いたものだが、残念ながらあの独特なファセットで構成された50clの瓶はゴールドもプラチナも日本には輸入されていない。
とは言え、スタンダルドのゴールドも、麦の甘みが感じられ、柔らかくて、高クオリティなクラシックウォッカだ。
きっとお気に召すと……いいなぁと思いながら、赤い(ロシアだしな)江戸切り子のショットグラスに霜がつくほど冷やしたそれを注いで、スモークサーモンを添えた。
さすがにキャビアの買い置きはない。
相手がウォッカを飲んでいるのに、三好が茶というわけにもいかんな……というわけで、薄っすいウォッカトニックをつくって出しておいた。
もちろん俺は速攻で台所に退散だ。
『いいもんあるじゃん。俺にもサーモンくれよ』
『いいですけど、ウォッカは?』
『それはパス。ビールある?』
遠慮のないサイモンに、お前何しに来たんだよと心の中で苦笑いして突っ込みを入れつつ、今となっては完全に市民権を得たアメリカンクラフトビールを注いだ。ストーンのルイネーションダブルIPA2.0だ。2.0というところが実にバズワードっぽい。
で、このIPA。クラフトIPAらしい、バリバリのシトラスフレーバーに苦み主体の味わいで、たぶんピザにはぴったりだが、サーモンにはあまり合わないだろう。
だが、アメリカ人はこういうビールがとても好きだ。テイストよりもフレーバーって感じだ。もちろん偏見だ。
とは言え、サイモンも、それを美味そうにゴキュゴキュと飲んでいたから、あながち間違いではないに違いない。
ところでサイモン、それはコロナじゃないんだからグラスに注いだ方が良いと思うよ。瓶直の方がサイモンっぽいけれど。
(で、三好。一体何事なわけ?)
(いや、それがよく分かんないんですよ……ぱくっと食べて、ぐっと飲んで、じっと見られる。って、そんな感じなんです)
(うーん……)
(サイモンさんが来てるタイミングでやって来て、一向に目的が分からないって……まさか亡命の橋渡しとかじゃないですよね?)
(うちの事務所で? そういうのは大使館でやってくれよ……)
俺はサイモンに近づくと、小声で言った。
『まさか、ドミトリーさんの亡命の橋渡しとかじゃないですよね』
それを聞いたサイモンが、俺の顔に向かってビールを吹き出した。
『ブー!!!』
『ちょ! なにやってんですか!』
『おま、なに言ってんだよ! そんなわけあるか!』
俺はティッシュで顔を拭いながら、言った。
『んじゃ、バッティングは偶然? 本当に、ただ明日の受け渡しの打ち合わせに来ただけ?』
『あたりまえだ! あーあ、吹いちゃったじゃねーか。もう1本くれ』
『ストーンはそれで終わりですよ。後はギネスかブリュードッグ』
『パンクか?』
『そうです。後は、ペンギン』
『そんなの飲めるか。パンクくれパンク』
俺は冷蔵庫からパンクIPAを取り出した。
こいつもグレープフルーツ香の強いIPAで、日本じゃそういうホップを使ったビールの草分け的な位置づけだ。
『じゃあ、もうサイモンさんの用事は終わったんじゃ?』
『バカ言え、あれが気になって帰れるわけないだろ』
サイモンは自分の後ろを左手の親指で指しながら、口角をあげた。
『みろよ、まるでジャパニーズオミアイだぞ?』
『よく知ってますね、そんなの』
そう言われてみれば、三好をじっと見てるし、段々顔も赤くなってきてる。
『おいおい、これは恋の始まりってやつじゃねーの?』
『いや、単にウォッカで酔っぱらっただけじゃないですか?』
『なんだよ、つまんないヤツだな』
『そこを面白くしてどーするんですか?』
サイモンもビール2本で酔っぱらってんじゃないか?
『いや、それほど親しいわけでもないけどな、あいつはどうにも妙なメンタリティなんだよ。上にしか興味がないっていうか』
そう言えば18層でも、ちょっと病的な視線で山の上を見てたっけ。
『ランキングって、発表され始めてからずっとドミトリーさんが1位だって聞きましたけど』
『そうだ。そいつが初めて2位になって、自分より上のやつがいる可能性が高い代々木へとやってきた。で、あのお見合いだろ?』
パンクIPAのボトルの先で後ろを指したサイモンは、ぐっと身を乗り出して聞いた。
『あいつらの間に一体何があったんだ?』
いや、別に何もないと思うけど……もしかしてあれかな?
『接点ぽいものって言えば、18層で、三好が忠告したことがあるくらいですかね?』
『忠告?』
俺はその時の様子をサイモンに話した。
『おいおい、スゲー事をするな』
『スゲー事?』
『仮にもあいつはずっと世界No.1だったんだぜ? そいつに向かって、お前じゃ弱すぎて話にならないから出直してこいって言ったんだろ? そりゃインパクトあるぜ。印象に残るはずだ』
『え? そんな言い方じゃ……』
『言い方なんか関係あるかよ。言ってることは同じだろ』
『だが、それって、あいつが生まれて初めて視界に入れた女ってことじゃないの? 母の愛も知らず、訓練、訓練で、悲惨な子供時代だったはずだからな。おかげで友達も出来ず、RUでも孤高の存在だ』
『え、本当ですか?』
驚いた様子でそう聞くと、サイモンはにやりと笑った。
『いや、俺の妄想。第一ダンジョンが出来てから3年しか経ってないっての』
『あのね……』
お前は大阪のおばちゃんか……
俺は台詞の後ろに、『しらんけど』が聞こえるような気がした。
『西側の下世話な憶測に基づいた、妙な詮索はやめてもらおうか』
『げっ』
『おお! な、なんだドミトリー。こっち来てたのかよ!』
『ヨシムラ……だったか。俺の出身を?』
『おいおい、ドミトリーが人の名前を覚えてたって? こいつは驚きだ』
彼はちらりとサイモンに視線を投げかけると、すぐにこちらをむき直した。
『ケイゴと呼んでください。出身はサイモンさんに』
『なら俺のことはミーチャと』
『カラマーゾフですね』(*4)
『シベリア送りにされるつもりはない』
そう言って俺たちは握手をした。
ロシア人と始めて話をするときは、ロシア文学の話題が良いよと聞いていたが、ドストエフスキーやトルストイが精一杯だ。ともあれ、物語のラストは多かれ少なかれ『祈り』になると思っておけば大体合っている(暴言)
サイモンはそれをニヤニヤ見ながら、ビールの瓶を振って、言った。
『いや、俺はあんたがエリア22の探索者で、オレチェフで鍛えたってことしか知らないよ』
『そうか……このウォトカは懐かしい味だった』
『もう一杯いかがです?』
ドミトリーは素直に頷いた。
『まあ、座れよ、せっかくだから』
そう言って、サイモンが、ダイニングの椅子を引いた。
『じゃなんか作りますかね、先輩が』
一緒にダイニングへやってきた三好が、そう言って、ワインを取り出してくると、引かれた椅子の隣、サイモンとは反対側に座った。
取り出したのはモルドバワインのようだった。少し前からなかなか高品質なものが日本にも入ってきていて、身近になりつつある国のワインだ。
このワインを最も多く輸入しているのはロシアだから、一応TPOを考えたようだ。もっとも近年では政治的な問題でしばしば禁輸の憂き目にあっているらしい。
『いや、そこまで言ったらお前が作るんじゃないの?』
『先輩の方が美味しいですよ』
そう言って、自分のグラスにワインを注ぐと、おもむろにそれを掲げて、高らかに言った。
『私の祖父は、家を買うつもりがあっても余裕が無く、山羊を飼う余裕はあるが買う気はないと言うのです。ではみなさんご一緒に、私たちの願いと余裕が一致して、それがかないますように!』
ワイングラスに、切り子グラスとビールの瓶が触れ合わされて、小さく澄んだ音を立てた。
『どこでそんな口上を?』
うっすらと口角をあげながらドミトリーが聞いた。
『レオニード=ガイダイのコメディで。合ってました?』
『問題ない』
『なんだよ、それ?』とサイモンが、もう一本よこせのポーズ――空のビール瓶の首を持って左右に振る――をしながら聞いた。
『旧ソ連で知らない人はいないくらい有名な60年代のコメディ映画ですよ』
『へー、ロシア人は乾杯の口上が長いからなぁ』
『短いのもあるぞ』
『へえ、どんなんだ?』
サイモンは俺から新しい瓶を受け取り、切り子グラスに新しいウォッカを満たしながら聞いた。
ドミトリーはそれを持ち上げて言った。
「За здоровье」
『ザ ズダローヴィエ? 何て意味だ?』
『健康のために』
『そう言えば、フランス語でも a votre sante.っていいますもんね。乾杯で健康を祈るのは世界共通でしょうか』
お酒はあんまり健康とは言えないんですけどねと、三好が日本語で呟いている。
『俺たちも、大抵、cheersやtoastで済ませるが、To your health.もあることはあるな』
『サイモンさんは、Here's looking at you.じゃないんですか?』
三好がハンフリー=ボガードの名台詞でチャチャを入れた。
『ジョシュアあたりなら言いそうだが、俺のキャラじゃないね。そういや、フランス・イタリアの合同作戦の時は、あいつら、チン――』
『はーい! それは日本じゃNGですからね』
慌てて三好が、サイモンの言葉を遮った。
フランス・イタリア、後はスペインあたりで使われる乾杯の音頭に、グラスがぶつかる音から来た言葉がある。ただしそれを日本人が聞くと、ちょっとした下ネタになるのだ。ちなみにチ○チ○。
おそらくそれを知っているのだろう。サイモンがしつこく、どうしてどうしてと三好に絡んで遊んでいた。
「なんだかんだ言って、すっかり3カ国懇親会になってやがんの」
『先輩は、ひとりでぶつぶつ言ってないで、さっさと美味しいもの出してくださいよ』
『そうだそうだ』
『美味しいものねぇ……そうそう、面白いものがありますよ』
そう言って、俺は例のダンジョンせとかを取り出して、二人に渡した。
『ヨシムラ。酒のつまみにオレンジはないだろ? なんだよ、これは?』
『ジャパニーズハイクオリティオレンジでセトカって言うものによく似てるんですけど、実はこれ、ダンジョン産なんですよ』
『はぁ?!』
サイモンとドミトリーはそれを聞いて同時に目を見張った。
ドミトリーは信じられないものを見るような目つきで、自分の手の中にあるそれを見つめ、それを確かめるように転がした。
『ダンジョンの中の木に、こいつがなってたってことか?』
『21層で見つけました。なかなか美味しそうでしょう?』
『聞いたかドミトリー? このアホは、これがどんな意味を持ってるのか、全然分かってないぞ』
『ケイゴ。ひとつだけ聞きたい。――リポップはしたか?』
俺は三好と顔を見あわせると、俺の代わりに三好が二人に答えた。
『はい。リポップタイムは、およそ1分でした』
『それ、報告はしたのか?』
『もちろんJDAにしてありますよ』
『こいつは世界の食糧事情を変革しかねないだろ。ヘタすりゃ無限に産出するんだぞ?』
確かにその通りだが、俺たちはすでに無限リポップするかもしれない小麦の生産もやっちゃってるから、インパクトは薄い。
(先輩。小麦の話は――)
(D進化の申請をしたのは昨日だし、まだ知られてないっぽいな。麦畑の件は、とりあえずJDAの意向がわかるまでは黙っておこうぜ)
(――了解です)
『1層あたりで見つかったんならその可能性もありますけど、21層ですからね』
『ダンジョン内に高品質の食用になる植物が存在したってだけで大ニュースなんだよ。知られる前に保護しないと、ダメ元で木を丸ごと持っていくやつがでるぞ』
『ああ』
確かに周りの土毎掘り返して、1層辺りへ植えてみるという可能性はあるな。あの土がどこまで掘れるのかは分からないが……
モンスターは自発的に階層を移動しないが、トレインで付いてくると言うことなので、移動できないってことはないはずだ。
もっとも移動したモンスターを放置したらどうなるのかは分からない。外へ出たものは時間の経過と共に弱るなんて話も聞いたことがあるが、正確なところは知らなかった。
『USやRUで、モンスターを生け捕りにして外に持ち出したなんて研究はやってないんですか?』
そう言うと、ふたりはそれぞれ真面目な顔でそれに答えた。
『俺たちは攻略が主体だから、生け捕り作戦なんかに参加したことはないが……企業、特に軍産の連中はやってるかもな』
『生物兵器に、なんてことを考える連中がいてもおかしくはない』
『おいおい……だが、やってそうだと思えてしまうところがヤバいよな。――それってつまりその木を地上に植えたらどうなるのかって話だろ?』
『まるでアイソーポスの寓話のようだ』と、ミーチャがぽつりと言った。
アイソーポスはトルコだかギリシャだかの人で、日本ではイソップと呼ばれている。
金の卵を産むガチョウの話は、まさにこれと同じだ。
『その木を全部掘り起こしたあげく、上で枯らしてしまうなんてことはありそうな話だが……ダンジョンならその木もリポップするんじゃないか?』
『するかもしれませんけど、同じ場所にはリポップしませんでした。だから実際にリポップしてるかどうかはわかりません』
『やってみたのかよ?!』
『あ、いや、別の適当な草で、ですけどね』
2層の農園で、一応確認してある。
横浜の踊り場フロアで同じ実験をやって、フロアの何処かに登場すればリポップすることが証明できるから、それはそのうちやってみることになるだろう。
『ふーん。そういう話を聞いていると、ダンジョン関連の研究をするところと攻略をするところが縦割りなのは、いまいち効率が悪い気がするな』
『世間には、いろいろと柵がありますからね』
『俺たちの所もDoDができて、ますます混沌としてるからなぁ……おっと、ロシアにばれちゃ大変だ』
おどけたように言うサイモンを見て、そんなことはとっくに知られてるだろと言う顔で、ミーチャが珍しく苦笑した。
その後もしばらく、俺たちは、3国で懇親会を続けていたが、横浜への荷物の搬入の件で訪れた鳴瀬さんが、玄関で目を丸くして固まったところでお開きとなった。
最後にミーチャが、「За дружбы」と言って、グラスに残っていたウォッカを一気に飲み干して帰っていった。
『ドルゥーズバイってなんだ?』
『さあ? きっと元気でとか、そんな意味じゃないですか』
『そうだな。じゃ、俺も帰るか。明日はよろしくな』
そう言ったサイモンは鳴瀬さんにウィンクして帰っていった。相変わらず軽いヤツ。
「えーっと……一体何があったんですか?」
鳴瀬さんがおそるおそる聞いてきた。
「そういや、結局ミーチャは何をしに来たんだ?」
「故郷のウォッカを飲みに?」
「三好に用事だったんじゃないのかよ……サイモンのコーヒーと言い、うちはカフェかなにかか?」
「そのうちランスさんも来そうですしね。何を出せばいいんですかね?」
「あの人、ワシントン州だよな。10年ちょっと前に州法が改正されて、シアトルあたりにクラフト・ディスティラリーが大量にできたけど、最近過ぎて故郷の味って感じじゃないか」
「ランスさんってたぶん30代ですから、10年ちょっと前なら充分飲み始めって感じがしますけど。もういっそのことCC(カナディアンクラブ)とかで良くないですか?」
「……確かに。なんとなく似合う気がする」
大自然の中で、たき火を焚きながら丸太に座り、ランスが持っている銅製のマグの中にはCCが入ってる。ボトルは足下で、たき火の光を反射している。
って、CCのポスターっぽいな!
「先輩、先輩。ウイキペディアのカナディアンウィスキーの項目を見たら、バンクーバにセンチュリー蒸留所というのがあって、センチュリーリザーブってお酒を造ってるみたいですよ。ランスさんちの近所じゃないですか?」
「そりゃでたらめだろう。センチュリーリザーブがバンクーバのブランドだったのは確かだが、作ってたのはカスカディア蒸留所だし、それも10年以上前にアルバータのハイウッド蒸留所に売り飛ばされてる」
だから今のセンチュリーリザーブ21年はハイウッドの製品だ。なお、原酒も同時に買われてアルバータの倉庫に持っていったはずなので、中身はまだカスカディア蒸溜のものだろう。
跡地は同じ年にアンドリューワインに売り飛ばされてワイナリーになっている。そしてその翌年、アンドリューワインは、アンドリュー・ペラー・リミテッドになるのだ。
「へー、先輩、ウィスキーは詳しいんですね」
「興味のあるところだけな。お前のワイン病には負けるよ」
「いや、そういう話じゃなくてですね……」
鳴瀬さんが、眉をハの字にして言いよどんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「おい! 出てきたぞ!」
ずっと監視を続けていた、ドローニャがサーシャに向かっていった。
「結構経ってるが、1人か?」
「どうやらそうらしい。一応セリョージャにも後を付けてるやつらがいないか確認に行って貰っているが、見える範囲にはなにもくっついてなさそうだ」
「じゃあ、一体、なにをしに?」
その時、ドローニャが目を大きく見開いた。
「うそだろ。ドミトリーが鼻歌を歌ってるぞ」
まさに天変地異が起こったかのような彼の発言に、すぐに集音マイクの音が繋がったヘッドフォンを片耳に押しつけると、サーシャもそれを確認した。
「信じられん……」
「まさか、何かの取引がまとまったんじゃ……」
「すぐに大使館とダンジョンチームに伝えろ。ドミトリーをしばらく監視下におくことにする」
「了解」
◇◇◇◇◇◇◇◇
週末の農業・食品産業技術総合研究機構の果樹茶業研究部門では、眼鏡を掛けた細面の酷い顔色をした男――佐山繁研究員が、暗い顔で、主任の水木明憲に話しかけた。
「主任、あの依頼されていた柑橘のDNA鑑定なんですが……」
「ああ、結果は出たのか?」
「それが……訳が分かりません」
「どういう意味だ? うちにあるCAPSマーカーでは同定できないってことか?」
「いえ、それが――」
佐山の説明によると、万全を期すように言われていたので、二人の研究員で別々に鑑定を行わせたら――
「全然違う結果になったんです」
「どういうことだ? 対象に複数種の柑橘が混じっていたということか?」
「いえ、同一の果実から取られた試料が使われました。訳が分からないので、何度か繰り返してみたんですが……」
ここでは、9種類のCAPSマーカーを使って、柑橘の品種識別を行っている。
「うちにあるマーカーと突き合わせたところ、せとかと天草という結果がでるんです」
せとかと天草?
確かに見た目は似ているが、せとかは(清見×アンコール)×マーコットで、天草は(清見×興津早生)×ページオレンジだぞ?
Cp0089/HindIII も、Tf0013/RsaI も異なるはずだ。遺伝子的には間違えようがないくらい違う。
「つまり、この果物内に、せとかの遺伝子と天草の遺伝子が混在しているということか?」
「いえ……そうではなくてですね……」
「なんだ、歯切れが悪いな」
「主任、言っておきますが、これは私の頭がおかしくなったわけではありませんから。結果から論理的に判断すると――」
彼はそこで言いよどんだが、意を決したように先を続けた。
「――鑑定をした人間によって結果が変わっていると思われます」
水木は、一瞬呆けたような顔になった。一体この男は何を言ってるんだ?
「すまん、君が一体何を言っているのかよくわからない」
「報告しておいてなんですが、私にもわからないんです」
「試料か器具が汚染されているってことは?」
「それだと、両方の遺伝子が混じるはずですが、結果はどちらかになるんです」
余りにも馬鹿げている結果に、佐山はすがるように水木を見た。
「主任、この試料、どこから預かったんですか?」
「……JDAだ」
「ってことは、まさかダンジョン産……ですか?」
水木はその辺りの詳しい出所については聞いていなかった。
しかしJDAがわざわざ鑑定に寄越したのだ、従業員が買ってきたせとかが、本物かどうか知りたくて調べさせた、なんてことはありえない。
「詳しいことは聞いていないが、たぶんな」
ダンジョン産の果物と言えば、以前ヨーロッパで木イチゴが発見された話を聞いたことがある。あれもDNA鑑定したはずだが……たしか結果はありふれた木イチゴだったはずだ。
水木は、後で詳しい情報を手に入れようと心にメモした。
「ところで、どちらかになる法則はあるのか? それとも完全にランダムなのか?」
「実は何度かやり直してみたのですが、せとかだと鑑定したものがやりなおすとせとかに、天草だと鑑定したものがやりなおすと天草になります」
「初回観測時にどちらかが決定すると、以降はずっとそれになるということか?」
「その通りなんですが……」
「なんだ?」
「情報を一切与えずに、別のものに鑑定させたら、清見という結果になったんです」
佐山は、もう訳が分からないと言った感じでそれを報告した。
それを聞いた水木は皮肉な笑顔を浮かべた。
「対象のDNAが調べられるまで決定しない? いつから遺伝子鑑定は、量子力学になったんだ?」
「まるで最初から複数のDNA配列が重なっている状態で存在していて、観測した瞬間にそのうちのどれかに収束するようにすら思えます」
佐山は、悪い冗談だというように首を振った。
「少し前に、フラーレンで二重スリット実験の干渉縞が出たって話がありましたけど、DNAでも起こるんですかね」
実は多世界解釈が正解だったなんて結果が分子生物学から導かれたり――するはずないよな。おちつけ。目の前にあるのは、得体が知れない化け物じゃない。ただの柑橘のはずだ。
結論を出すには、もっとサンプル数が必要だ。とはいえ、こんなテストにそう多くの予算が出るとは思えない。
鑑定者によって、DNA鑑定の結果が変わる? 自分の部下じゃなかったら、おそらく耳もかさなかっただろう。
「それで、君はこの鑑定結果をどう伝えるべきだと思う?」
「せとかでした!と報告して、後は全てを忘れて日常に戻りたいです」
「可能だろうか?」
わざわざJDAがうちに緊急でDNA鑑定までさせて、その対象が普通のせとかだというほうが無理がある気がする。
最初からこんな結果を予想していたんだろうか。もし、そうだとしたら、適当な報告は、うちの鑑定能力を疑われる結果に繋がりかねない。
「……無理でしょうね。追加で鑑定させたのは我が人生最大の過ちでした」
佐山は、さらに顔色を悪化させると力なく肩を落とした。
なにしろこれから自分でも信じられないようなレポートを書かなければならないのだ。しかも署名付きで。
「そうとは限らんだろう。もしかしたら、うちの名前をあげることになるかも知れないぞ」
水木は、そう言って目を細めた。
これでできあがるレポートは、世紀の大発見になるはずだ。ただし、狂人扱いされなければ、だが。
「果実はまだあるのか?」
「あとふたつ残っていますが……」
「京大の北島先生と、国立遺伝学研究所の神沼先生に追試を依頼してくれ」
「え?」
「念のためだ、品種の同定を、必ず別人の2名以上で、別々に鑑定するように申し添えておいてくれ」
「わ、わかりました。すぐに手配します」
「こちらで出た結果については書くなよ」
「了解です」
狂人扱いされる可能性を、少しでも減らすべく彼らは追試を依頼した。
◇◇◇◇◇◇◇◇
その日、18層から戻ってきた渋チーは、ダンジョン受付で呼び止められ、別室でJADAから出された依頼についての説明を、商務課の職員から受けていた。
「というわけで、JADA様から依頼が来ていますが、お引き受けになりますか?」
「俺たちを名指しで?」
「いえ、代々木のトップ探索者の方に依頼したいそうです。林田康生さんのチームを推薦したのはJDAです」
「ふーん。で、JADAってなんだ?」
「日本アンチドーピング機構様です。日本のスポーツ界のドーピング検査等を行っている組織ですね」
「アンチドーピング? そんな組織が俺たちに何を依頼するって?」
「非公式の記録会を行いたいそうです」
「記録会? なんでそんなものを?」
「依頼目的は、探索者のトップにいる人達の運動能力が知りたいということのようです」
「ふーん」
「いいじゃん、林田。面白そうだし」
喜屋武がそう言って、林田の肩に手を回した。
「またまたファンが増えそうなイベントだろ?」
「あのな……で、報酬は?」
そこで提示されたのは、1日拘束のバイト代としては破格だが、ダンジョン探索と比べれば、さほど高額でもない金額だった。
「ちょ、渋くない?」
東が言うと、喜屋武がそれをなだめた。
「まあまあ、実際俺たちだって、スポーツでどれくらい通用するのか知りたいだろ? うまくここでアピールすれば来年の代表になって、ヒーローだぜ?」
「来年って、オリンピックか?」
「そうそう。正式な代表が決まるのはこれからなんだろ?」
「いや、そうだけどさ。いくらなんでもその野望はどうなの」
目立ちたがりの喜屋武の話は、現実的な東には荒唐無稽に思えた。
「ダイケンはどう思う?」
「俺は別にどっちでもいいさ。大して興味はないが、絶対に嫌って程のことでもない」
「よし。じゃ、あとはデニスだな」
「うーん。ま、俺もどっちでもいいかな。それで、ハヤシダはどうなんだよ?」
「そうだな。誰も反対しなかったし、若干一名滅茶苦茶乗り気なやつがいるから、1日くらいなら引き受けても良いか」
「よし! 決まりだな!」
「ありがとうございます。ではこちらが詳細となります」
そう言ってJDAの職員は、テストの詳細が書かれた用紙を、林田に渡した。
「足のサイズ?」
「陸上用のシューズは、JADAで用意するそうですので、サイズを記入してくださいとのことです」
「そりゃ、助かる。ん? 日付に幅があるけど」
「その間ならいつでも良いそうです」
「じゃ、一番早い日にしておいてくれるかな。さっさと終わらせて本業に復帰しないとな」
「わかりました。それではそのように手続きしておきますので、当日直接本蓮沼の国立スポーツ科学センターへ向かってください」
「わかった」
渋チーがヒーローになる日は近い。……かもしれない。
◇◇◇◇◇◇◇◇
マクリーンから内務省までは9マイルだ。車で20分もかからない。
その日連絡を受けたアレン=コールマンは、午後の遅い時間に内務省内にあるダンジョン省の長官室を訪れた。
「やあ、アレン。久しぶりだな」
「面倒な挨拶はいいから、それで、一体なんの用だ?」
アレンとカーティスは仲が悪いわけではない。これが、効率を重視するアレン=コールマンという男のスタンダードなのだ。
ディビッドは苦笑しながらアレンに椅子を勧めた。
「実はちょっとジャパンのDAで調べて貰いたいことがあるんだ」
「正規ルートで問い合わせればいいだろう?」
「もちろんそれもやるさ」
アレンは神経質に足を組み替えた。
「それにしても、またジャパンか?」
「何かあったのか?」
「あんたのところの商売敵からも、うちに依頼があったぞ」
商売敵とはおそらくDADのことだ。
さりげなく情報をくれるアレンに感謝しながら、カーティスは思わず失言した。
「何を?」
「それは直接聞いてくれ。それで何を調べれば良いんだ?」
「どうやらジャパンじゃ、ダンジョンの鉱石を選ぶ方法を確立したらしい」
アレンは、それを聞いて眉を寄せた。
「……」
「それを探り出して欲し――」
「カーティス。お前、WDAのレポートに目を通してないのか?」
話の途中で割り込まれたカーティスは、困惑した。
「いや、今日の分の報告はまだ受けていないが……どういう意味だ?」
「その話、最新の、WDAレポートで公開されているぞ」
「なんだと?」
アレンは深いため息をついた。
「どうやらうちは不要のようだな。じゃ、俺は忙しいから帰るぞ」
「あ、おい」
呼び止める間もなく出て行った彼の背中を見送った後、カーティスは、WDAのレポート一覧を呼びだした。
そこには確かに、最新の場所にJDAのマイニングに関するレポートが上がっていた。
その内容をざっと眺めた彼は、こめかみを押さえると呟いた。
「どう考えても機密情報じゃないのか、これは……あの国は一体どうなってるんだ」
*1) ロシア人は、愛称で呼び合うので、会話が入ると登場人物が倍に増えたように見える(w
ロシア文学あるある。この部屋の4人と話に出てくるリョーニャは次の通り。
名前 愛称
アレキサンドル サーシャ
ヴァレーリー レーロチカ
セルゲイ セリョージャ
ドロフェイ ドローニャ
レオニード リョーニャ
*2) ワシリー=ミトロヒン / Василий Никитич Митрохин
元ソビエト連邦のKGBの幹部。ソ連崩壊後の1992年4月に極秘文書を抱えてイギリスに亡命した。
*3) ケフィールは乳酸菌飲料だと思っていたが、実はケフィールグレインで発酵させればなんでもケフィールらしい。普通は乳を使う。メドヴーハは一種の蜂蜜酒。
スビテンは蜂蜜と水とジャムを混ぜて温めてスパイスを加えた飲み物。果汁や赤ワインを加えることもあるらしい。
*4) カラマーゾフの兄弟 / ドストエフスキー (Братья Карамазовы / Ф. М. Достоевский)
カラマーゾフ家の直情的な長男が、ドミトリー(ドミートリィ)で、愛称がミーチャ。最後は無実の罪で20年のシベリア送りになる。




