第一の刺客が現れたそうです ②
「せんぱーい!」
今、大変なことが起きています。
唯一の仲間の先輩が、消えてしまいました。
私は狂ったように探した。
だが、全く見当たらない。
私が自室で嘆いていると、強い耳鳴りがし出した。
「痛っ!」
私が耳を押さえると、聞き覚えのある声が直接耳に聞こえた。
その殴っているような痛みを我慢しつつも、その声に耳を澄ました。
『おい、後輩! 俺だ! 今お前の耳に仕掛けておいた通信機からお前に話している!』
「せ、先輩!? てか怖いです!」
みらのは少し涙が溢れそうになったが、それをぐっと我慢した。
「何かあったんですよね?」
『あぁ、ちょっと早めだが、襲われてる』
「え、襲われてる!? それって大丈夫なんですか?」
『俺はお前を信じるから、大体大丈夫だ』
「そんな投げ槍な」
そこまで頼ってもらっても、逆に困る。
『いや、俺は本当にお前を信じてるから言ってるんだ。出来ないなら無理に助けて貰わなくてもいい』
私は前々から思っていた。お互いのどちらかが何かあろうと、きっとこれからのことを考えて助けてしまうだろうと。
そして結局、そうだった。
「やります、先輩を助けて見せます!」
私はすぐに宿から出ようと急ぐ。
『いや、待て待て』
私は足を止める。
「え、な、なんですか?」
『多分外は敵に囲まれてるだろ?』
その言葉に私は、緊張しながら窓を覗き見る。
すると、先輩の言う通りにローブを着た敵らしき影がこちらを覗いていた。
少しの間覗いていると、敵の一人と一瞬だけ目が合い、後ろに倒れ混んでしまう。
『多分今襲ってこないのは、被害を拡大させないためだな。経営費でも足りねぇんかな?』
「呑気なこと言わないでください!」
私はその呑気な声に、即座にツッコミする。
私は部屋の隅に寄りかかりながら座り込んだ。
いつ来るか分からない、そんな恐怖が私を襲った。
『でもまぁ、俺もお前の位置情報把握できるからサポートできるし、お前なら行けるだろ? 陸上部のエースさん』
……確かに私はエースだった。
でもそれは短距離だけ。中々体力の付きにくい体質の私には長距離は無理だった。そんな私に、出来るのか?
『出来るさ、お前なら。お前は俺が、唯一認めた人間だ』
いつも呑気そうな先輩の声が、この時だけ優しく聞こえた。
やっぱり、先輩はずるいな。
私は勇気づけられ、立ち上がって一歩踏み出す。
「やって見せましょう! 私達がこの国の王様です!」