第一の刺客が現れたそうです
俺達が眠りに着いた時、ある男が、俺達のいる宿の玄関前に立っていた。
「うん、ここかぁ」
男はそう言って、宿へと入った。
「うん、汚いなぁ。これだから庶民の家なんか入りたくねぇんだ」
男はその宿を軽蔑しながら、俺達のいる部屋の前に立つ。
男は俺達に起きられないよう、ゆっくりとドアを開ける。
男は中に入ると、、ベッドに寝ている俺とみらのを交互に見た。
「えぇと、確か重要なのは男の方って聞いたから、うん、こいつだな。じゃあ、やるか。『静かなる空間』!」
男は両手を広げる。すると、その中にこの宿そっくりのドームを造り出した。
男は俺の手近くにまでドームを持ってくると、それは俺の指に触れた。
瞬間、俺の体はそのドームの中へと吸い込まれた。
「うん、任務完了かなぁ」
男は見届けると、すぐにその宿を去ってしまった。
そして早朝――――。
「………あれ、先輩?」
そこにはもう、俺の姿はなかった。
俺は目を覚ます。と、朝日が目に染み込んだ。
「ん、もう朝かよ」
俺はベッドから起き上がる。そしてみらののいるベッドに視線を向けるが、みらのはベッドにはいなかった。
「? 朝飯食いに行ったのか?」
俺は下の階にある食堂へ向かう。だがそこにも、みらのの姿はなかった。
それどころか、他の宿泊客の姿も見えない。
俺はこれを不穏に思う。
「………予想はしてたが、ここまで早くに動いてくるとはな。くそ、みらのが襲われるなんて………」
俺はみらのを探すため、外へ行こうと玄関の扉に手を掛ける。
だが、その扉は全く動かなかった。
「! な、何っ!」
俺は何度も何度も扉を開こうと試みるが、全く動く気配がしない。
「……これはまさか……」
俺は近くに窓を見つける。すると俺はすぐに、テーブルの椅子で窓を殴った。
しかしこれもコンクリートのように硬い。
「……あはは、いざ自分がなってみると笑えてくるな。まさか俺が……」
「うん、どうやら気付いたようだな?」
どこからともなく、聞いたことのない声が聞こえた。
「成る程、テメェが「第一の刺客」って訳か?」
俺は上を向いて答えた。
「うん、そうだ! 俺の名は『ハルマロ=セルミン』! 国王に命じられ、今貴様をこのドームに閉じ込めている!」
「あぁ、襲われたのは俺の方だったって訳か。まぁこうなることは予想ついてたけどな」
「うん、このドームは内側からは絶対に開けることは出来ない! そしてこのドームは空気からの「圧力」を受けやすい構造になっている! どういうことか分かるか?」
俺は辺りを見渡す。その様子を見て、俺は気付いた。
「このドームが、圧縮されているってことか?」
「うん、その通り! 制限時間は五時間だ………それが貴様の残された余命だ!」
「………どういう理屈でこれが出来るのか聞きてぇところだがつまり、このドームを外側から破壊すれば良いってことだろ?」
「うん? ずいぶんと余裕だな」
「こっちからテメェの顔を見れないってことは、テメェも俺を見れないんだろ? それに、うちの後輩はすげぇぞ?」
「うん、どうやって俺を見つける? 手段はあるのか?」
俺はポケットから携帯を取り出した。
「あぁ、現代的にな!」