俺達は交渉成功したそうです
俺がそう言うと、男は怯えたような顔で言った。
「な、何を言っているんだ! これは侵略行為でなないか!?」
それを聞いていた女性と少女も、怯えた表情を浮かべていた。
みらのは頬を掻いて言った。
「まぁ、こんな反応になりますよね」
「そうか? 皆欲しくね? 自分の国!」
俺は髭の濃い男に近付いた。
「で、返事は?」
男は渋い顔をすると、オネットと呼んでいた男の方を向いた。
オネットは相変わらず絵の中に頭を突っ込まれており、それは俺の強さの象徴になっていた。
きっとこれよりも力のある奴はいないだろう。
すると男は、顔を下げながら俺に言った。
「あと一週間、それまで返事を待ってくれ」
一週間? んー、まぁいいか。
「いいぞ! 一週間後な!」
話をつけると、俺達は颯爽と王宮を去った。
「先輩、やっぱりとんでもないことになりましたね」
みらのは呆れたような顔で溜め息をついた。
「先輩が強くなかったら、あそこで処刑とかいう事態もあり得ましたよ。しかもこれ、侵略行為です」
「なぁに行ってんだ後輩ちゃん。俺はただ「頭がいい」だけだ」
「そんな馬鹿みたいな力して良く言いますよ」
俺は進んでいた足を止めて、みらのの方を向いた。
「ちげぇよ、これは「力」じゃねぇ。俺の「夢」が詰まってるんだ」
「実を言うと、先輩の夢ってなんなんですか?」
俺はみらのの質問に即答で答えた。
「ロボットだな」
そう言うと、みらのは吹き出したように笑いだしてしまった。
「ロボットですか? 子供らしくて良いですね!」
「笑ってんじゃねぇよ。そのロボット様が無かったら、俺はここにいねぇかも知れないぞ?」
俺は真面目に話しているつもりだったが、みらのはずっと笑いを堪えているようだった。
こいつ、ちゃんと聞いてないな?
「だが、これからの一週間はマジでキツくなるから、あんまり俺から離れんなよ?」
そう言うと、みらのは止まってしまった。
俺も釣られて止まると、みらのは俺と腕を組んだ。
「プロポーズですか? 格好いいですね! 惚れちゃいそうです!」
「……俺を馬鹿にするのも大概にしろよ?」
俺は腕をそのままにして、そのまま街に戻った。
その頃には、もう空は暗くなり始めていた。
街に戻ると、市民達が俺達を取り囲んだ。
「旦那! どうでしたか?」
そう一人の市民が言うと、俺は笑って答えた。
「あぁ! 約束は守った!」
そう言うと、市民達は沸き立った。
「これで晴れて自由に暮らせる!」「金に困ることもないな!」
そうしていると、俺達の前に長が現れた。
「私たちを二度も救っていただき、感謝してもしきれない程です」
「なぁに言ってんだよ爺さん。俺達が王様やってみたかっただけだ」
「そうですよ。こんなことになるなんて思っても見ませんでしたけど」
みらのは俺を見つめる。
いや、なんでそんなに怒ってるんだよ……。
「ですが旦那方! 宿は用意しています! どうぞお休みください!」
「お、そうか! じゃあそうさせてもらう」
俺達は、その市民が案内した宿に泊まることにした。
だが、そこはたった一つの部屋しか用意されてなかった。
「なんで一部屋なんですかね?」
「知るか。俺に聞くな」
俺は荷物をその部屋に置いた。
だが、みらのは俺を止める。
「こ、ここに泊まる気ですか?」
俺は冷静に言った。
「俺がお前に手を出さなければ問題ないだろ? あの人達に迷惑なんざ掛けたくねぇし、お前がそれでも変えたいっていうならそれでもいいが?」
「ぐぬぬぬ、分かりました。私が折れます。不幸中の幸いか、ベッドは二つですし」
そう言ってみらのはそのベッドに入った。
「じゃあ、お休み」
俺はその部屋の電気を消した。
王からの返事まで、あと七日。