俺達が望みを言うそうです
「な、異世界人だと!?」
衛兵たちの中で、嘲笑や困惑の声が聞こえる。
きっと俺達を『頭のおかしくなった奴ら』と思っているのだろう。が、その中で代表らしき人物は俺達を警戒していた。
そりゃそうだ。逆に他の奴らが気付いていないのがおかしい。
なんせ、あの南京錠の門を、俺達は丸腰で破壊しているからな。
俺は完全な意味で取り囲まれてしまう前に終わらせてしまうことにした。
もう一度、右の手首の辺りにあるものを押す。
「ちゃちゃっと、終わらせちゃうか!」
俺は目の前にいた衛兵に近づき、押し倒して右手で両足を掴んだ。
「えっ? 何? 何なの!?」
「行っくぞー!」
衛兵は困惑しているが、構わず俺は衛兵を凄い勢いで振り回し、衛兵の束を棒状になってしまった衛兵、名付けて「衛兵バット」で薙ぎ倒していった。
そこに俺とみらの以外誰も立っていなくなった頃には、もう「衛兵バッド」の中の人の意識は何処かに行っていた。
「あぁもう無理! ギブ!」
俺は疲れ果ててしまい、「衛兵バット」を離してその場に倒れ込む。
「でも先輩、足は駄目だけど腕には自信ありですね」
そう言って超アウトドア派のみらのは目を輝かせていた。
やめろ、俺をアウトドア派に引きずり込もうとするんじゃない。
俺達は少し休んでから王宮内に入ることにした。
「やっぱり、王宮の中は異常に設備が整ってるな」
俺は辺りを見渡してそう言った。
そこには街には無かった沢山の物資が揃っていた。
「長さんの話は本当っぽいですね」
「あぁ」
すると、奥にあった長い階段から、貴族のような服を着ているがヤンキー頭をした柄の悪い男が歩いてきた。
「なんだお前らは」
「ちょっと話があるんですよ。通して貰えますかね?」
男は俺の言葉に構わず、腰にあった剣を抜き出し、俺達のところへ近付く。
みらのは警戒していたが、俺は流石にしないと思い、気を抜いていた。
「いや、こっちにも色々あるんだ」
男は持っていた剣を、俺の首へと振り回した。
え、マジでやっちゃうの?
俺は予想外の行動に驚くが、咄嗟に道端で拾った厚さ二十センチ程の木板をその剣に当てた。
すると、その板を剣は貫通できず、動きを止める。
「ちょ、何してるんですかあなた!」
「何のつもりですかね貴族様?」
「はっ! ごみくずは野垂れ死んどけ!」
俺は長との会話にこの言葉が直結して、苛立ちを覚え、そのまま行動に達した。
俺は剣を強く外に押し、男の胸元を無防備にする。
そこで俺は右手首の辺りを押し、男の腹を殴る。
「ぐぶあっ!!」
男は凄い勢いで吹っ飛んだ。
そのまま飛んでいくと、壁にかけてある絵の中に頭を嵌め込んだ。
「また飛んじゃいましたけど、生きてるんですか?」
「大丈夫だろ。人間はそこまで簡単に死なないさ」
そうしていると、また長い階段から、今度は数人の貴族らしき人達が現れた。
「オネット!」
少し髭が濃い男が、絵の中に嵌まってしまったヤンキー頭を心配して降りてきた。
男がその状態を確認すると、俺達を倒すことは不可能と判断したのか、
「望みはなんだ?」
と聞いてきた。
「望み? そうだな………」
その場に小さな女の子と、優しそうなお姉さんが階段から降りてきた。
俺達の望む願いは………。
「この国、下さいな☆」