モンスターと科学では科学が勝るそうです
「――輩! 先輩!」
みらのに起こされて目を覚ますと、そこは草原のような場所だった。
「悪いな、後輩」
俺はその場に起き上がった。
「いえ、それよりも……」
見ると、空にプテラノドンのようなものが飛び交い、陸では大きな熊のような生物が俺達を目指して迫って来ていた。
「ここ、何処?」
熊が俺達の前で立ち上がる。
すると、その熊の近くに何か表記のようなものが見えた。
「え、えっ!?」
そこには、「グリードベア」、「クラスC」と書いてあった。
なんだよ、これ。まぁ、いいか。
熊は俺達に爪を向けると、そのまま拳を振り降ろした。
みらのはその瞬間眼を瞑ってしまったが、俺は左目から「レーザービーム」を出し、熊の心臓の辺りを貫いた。
熊は降ろしかけた拳を止め、意識を失ったのか倒れてしまった。
みらのは大きな音が鳴ったことに反応し、眼を開く。
「え、えっ? えっ!?」
その光景に困惑するみらのに、俺は自分の解釈を伝えた。
「あの魔方陣やら、俺達が置かれている状況やら、生息している生物とかも全部。これってさ、ラノベとかによくある………」
「異世界転移、ですか?」
俺はみらのの補足に頭で納得した。
それだ!!
「つまり、私たち………!」
「化け物の巣窟に、来たってことか」
みらのは顔を青ざめさせていたが、俺は真剣な顔で、これからのことを考えていた。
俺達、ご飯どうするの?
そこからずっと歩いていると、遠くに大きな街が見えてきた。
「ありましたよ先輩! ……先輩?」
「ちょ、待って。心臓が、裂ける」
俺は呼吸を乱していたが、頑張ってみらののあとに着いて来ていた。
やっぱりインドア派の俺に長距離ハイキングは少々きつい。
「もう、だから毎日の運動は欠かせないって言ったじゃないですか」
「うっせーよアウトドア。俺は俺の手で道を切り開くんだよ」
俺は心臓を押さえながら、なんとかみらのを追い越して進んだ。
「そんなんじゃ、生きていけませんよー?」
みらのが俺にアドバイスをしたつもりで言う。
だが、俺はその言葉にイラつきを覚えた。
「だからうっせーって!」
俺達はその街に向かって歩いていった。
辿り着くと、その街は広大で、沢山の建物が並んで見えた。
だが…………。
「やっぱ、東京と比べると小さいな」
「そりゃそうですよ、異世界ですもん」
俺達は当然と言うように言った。
「というか、水が欲しい!」
俺はそう言うと、近くの店にぶつかりそうなくらいに衝突した。
その中にいた、店の主と思わしき人物に大きめの声で聞いた。
「なぁ、おっさん。水ないか?」
そう言うと、その人は急いで水を俺のもとへ持ってきた。
「こ、これでいいでしょうか」
なにか怯えているようだったが、俺には分からないことだったので放っておくことにした。
だが、水の色を見てみると、それは茶色に濁っていた。
泥水じゃないか………!?
俺はこれで、この国の情勢が理解できた。
きっとこの国は、民間人には全く何もしてやっていないのだろうと思う。何て国だよ。
俺はバッグを背中から下ろすと、中にあるものを探し始めた。
そこで、みらのも俺と合流する。
「どうしたんですか? 先輩」
「! あった! 『ナチュラルM―2』!」
俺はその水筒のようなものを取り出すと、その中に泥水を入れた。
そして数秒間ガチで振ると手を止め、下にあった蓋を開ける。そこから土や砂がパラパラと現れた。
「えっ!?」
みらのが驚きの声をあげる。
「やった、これでまともな水が飲める」
そう言って俺は勢いよく水筒の中の水を飲み干した。
「な、なんなんですか? それ」
みらのが俺に質問する。俺はそれを自慢するように言った。
「俺が発明した『ナチュラルM―2』だ。どんな水も、ろ過して天然水レベルの純粋な水にすることが出来るという物だ」
「えっ、凄い!」
「ふふっ、そうだろ?」
俺は誇らしげに言った。すると、それを聞いていた周りの人達が俺達の周りに集まった。
「お、俺達にもきれいな水を飲ませて下さい!」「こんな水苦くて飲めたものじゃないんです!」
これは、初日で大人気だな………。
だがこの『ナチュラルM―2』には難点がある。ろ過するには大きな勢いがいるので、体力が取られてしまい、できる水も物足りない量なのだった。