今日は休日だそうです
ベッドに横たわっている近くで、鳥の囀りが聞こえる。
それが少し煩くも、美しいとも捉えられるような歌声に、俺は目を覚ます。
ベッドの上で起き上がると、俺は手の平を覗き込む。
「NGワード、クロック」
そう言うと、俺の手の平の中心部だけが開き、それは数字を模して光り出す。
指した数字は10と間を開けて29。
どうやら十時二十九分を指しているようだ。
「……あからさまに寝過ごしたな」
俺はベッドから出ようと毛布を除ける。
そしてベッドを出ようとするが、その前に毛布から現れた何かが、俺の視線を止めた。
それは目を覚ましたようで起き上がる。
まぁ俺のベッドに入れる奴なんて一人しかいないわけで、それはやはり後輩ちゃんこと、みらのだった。
「あ、先輩。おはようございます」
ん? 寝ぼけてるのか? ……まぁ都合がいい。このまま部屋を出てただの見間違いと言い張れば、俺の勝ちは確定だ!
何に勝つのかは知らないが、何故だかそう思った。
俺は早々に立ち去るべく、立ち上がろうとする。
すると、後ろからみらのが首周りに手を通す。すると、一気に体重が俺にかかる。
「先輩、朝のぎゅーはまだですか?」
「高校生にもなって何言ってんだお前!?」
俺はそう言うが、みらのは関係なしと言うように俺を強く抱き締めた。
「ぎゅー!」
少し胸も強調されてきている。
「おい待て? それはお前にはまだ早いぞ?」
俺はみらのの手をどかそうするが、みらのが俺の耳元で囁いた。
「良いんですか? 私、このままだと怪我しちゃいますよ?」
くっ、嵌められた……。
そうしていると、いつの間にかみらのの顔は俺の顔近くにまで来ていた。
ちょ、後輩なんかスイッチ入ってないか? 後輩寝ぼけるとえげつないな!?
俺は緊張のあまり、そこから一歩も動けずにいた。
俺の自由を全てみらのが持っている状態。みらのはずっと俺に抱きついている。
早く、早く終わってくれ!
すると、俺たちの部屋のドアが開かれる。
「旦那方! 昨日交戦したんですって? 大丈夫でしたか?」
それは俺たちにこの宿を紹介した平民だった。
よし! でかした! 早くみらのをどかし……。
何を思ったのか、平民はぐへへと言わんばかりの顔をした。
なんだその顔!? はっきり言って少し気持ち悪いぞ? というか早くみらのをどかせ!
平民はまた何を思ったのか、すぐにドアを締めた。
なんでぇー!?
くそ、このまま俺は一日中後輩に抱きつかれたままなのか?
俺はふっとみらのの顔を覗き込む。
するとみらのは目が覚めたのか、頬を赤らめ始めた。
みらのはすぐに俺を離した。
よかった、これでもう大丈夫……。
みらのは俺の顔めがけて右ストレートで殴りかかる。
なんでぇー!?
俺は反射神経でなんとかかわす。
するとみらのは俯き出す。
なんだ? 何なんだ一体?
みらのは突然土下座をしだした。
「すいません! 忘れてください!」
なんでぇー!?
まぁ、こんな感じの朝だったが、今日で二日目。
そして今日は、俺たちの休日だ。