第一の刺客が現れたそうです ⑤
突然ですが、解斗くん視点に戻ります。
あれから結構な時間が過ぎ、俺のいる空間は、人一人入るのがやっとなくらいに縮まっていた。
時間が経ちすぎているのだ。
俺は少し、後輩を心配していた。
するとハルマロが、退屈そうに言った。
「うん、もう四時間半かー、君のお友達遅くない?」
俺は言葉を詰まらせた。
ハルマロはニヤリと笑う。
「うん、まぁ、そうだよねー、君のお友達は、君に付いて来たかった訳じゃなくて、君といるのが安全と思って来てたわけだからねぇ、そりゃこうなるよねぇ」
ハルマロはじっと空間の中にいる俺を見つめた。
まるで反応を待っているようだ。
だが俺は呆れ、溜め息をつく。
「あのな? 俺も極々普通の人間を連れていきたくはねぇよ? だって面倒だしな。そして使えない奴はもっと嫌だ。荷物をわざわざ増やしてるようだからだ。そして俺はあいつだからこそ連れてるんだ。まぁ、何が言いたいかっていうと……」
すると、ハルマロのいる階の床が、ミシミシと音を立て始めた。
それが少しだけならまだいいのだが、それが何十秒も、何分も続くのでハルマロは焦る。
「な、何が起こってるんだ!?」
俺は人指し指を立てて言った。
「俺たちを舐めんなよ?」
瞬間、ハルマロのいる階の床は、木っ端微塵となり、下の階へ落ちる。
ハルマロはその突然の痛みに動揺しながらも、這いずりながら俺のいる空間を探す。
「うん、どこ行っちゃったかな?」
そしてハルマロは、誰かの足をかわりに見つけた。
まさかと思い、ハルマロはゆっくりと顔を上げる。
すると、ハルマロの仲間に追いかけられている筈の後輩が俺のいる空間を持っていた。
そして後輩は、俺のいる空間に殴りかかる。
「うん!? ちょっとやめろ! それだけは!」
するとすぐに、大きな音を立ててその空間は砕け散った。
それと同様に、俺も空間から現れる。
「さぁ、こっからが本当の勝負だな!」
ハルマロもすっと立ち上がる。どうやらこの状況を理解したようだ。
「うん、やってくれたね………お嬢ちゃん!!」
ハルマロは後輩にへと襲いかかる。
その手には、どっから出したか分からない火の玉があった。
だが俺は、これに少しも動揺しない。
なんせ………いつだって、後輩に敗北はないからな。
「もう、そういうのには慣れました」
後輩はハルマロの伸ばした手を払い除け、その頭に触れる。
すると、ハルマロはぶわっと浮き上がった。
「ん!? これは………『スキル』!?」
そして俺は、右腕でハルマロの首を持つ。
「散々やってくれたなハルマロさんよぉ?」
俺はその首を壁に押し付ける。
そして離すと、右腕の手首にあるものを押す。
ハルマロはもう泣きそうな顔をしている。だが、手をじたばたさせても抜け出せていない。全く動けていないのだ。
俺はそんなの関係なく、拳を撃ち込む。
「ぐぇあっ!?」
するとハルマロは壁に反射し、また戻ってきた。
「や、やめて……!」
俺はそんな言葉お構いなしに、何度も何度も拳を撃ち込む。
するといつしか、壁は破裂した。
するとハルマロは、ぐいぐいと空に浮かんでいきそうになる。
だが俺はそれを掴み、最後の渾身の一発を喰らわす。
そしてハルマロは、更に空高くに飛んでいった。
「重力が0なのに、推進力に抗える訳ねぇだろ!………これは中学の頃に流行った言葉なんだが、」
俺は腕を伸ばし、空に向かって人差し指を立てる。
「Volare via(飛んでいきな)!」
ハルマロが消えていった空は、綺麗な空色に染まっていた。