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その11

 御一行様と称して、隠し部屋に通された面々は、正確に言えば、御一行様プラス大勢様だった。


「人数多いね。翼と大地もいったんこっちに合流なんだ。大地は、史緒ちゃんのところに行ったんじゃなかったの?」

 龍が尋ねると、大地の後ろから、袴姿の史緒が現れた。

「ごせんたくです」

 文字が書かれた半紙を皆に示す史緒。

 そこには“清流旅館全員参集”と書かれている。

「うわあ…漢字がいっぱい」感心する紗由。


 そこに走って入ってくる聖人と真琴。そして、それを追うように入ってくる玲香。

「まーくん! まこちゃん!」紗由が二人を受け止める。

「さゆねえたん。まこ、りゅうのおようふく着るの?」

「着てほしいなあ。まこちゃんが着たら、すんごくかわいいから、青龍さまがよろこんでくださると思うの」真琴の頭をなでる紗由。

「まこ、着る!」

「まーくんも着る!」


「でも紗由ちゃん。今から作るの間に合うの?」

 心配そうな玲香に弾が答える。

「もう全員分、作ってありますので」

「こっちも仕事早いわ!」驚く翔太。

「聖人さまと真琴さまのご衣裳は、四神全部そろえてあります」

「うへー…」驚くを通り越して呆れる体の翔太。


「すべて弥生さんがお作りになった本格的なものです」

「弥生ちゃんが?」祖母の名前が出て、再び驚く翔太。

「弥生さんは、翔ちゃんに末永く青龍さまのご加護がありますようにと祈られたんだそうだ」進が説明する。「そうしたら、夢で青龍さまからのメッセージを受け取ったというわけさ」


「どないなメッセージもろたら、コスプレになるん?」

「翔太自身が青龍と化すがよい、だそうだ。そうは言われても、それは翔ちゃんの問題だから、自分に手伝えることはないものかと考えた」

「それで、青龍さまになるお洋服をつくったんですね!」何度も頷く紗由。

「ええ。どうせ作るならと、青龍様にその後もいろいろ問いかけをし、細かいところまで青龍さまにご納得いただけるものを作り上げたというわけです」

 進が言い終わるか終わらないかのうちに、弾がテーブルに衣装を並べ始めた。


 衣装のひとつを取り上げ、目を丸くする翔太。

「これ…ウロコが一個ずつ縫い付けてあるわ! しかも、ウロコが青いレースで編まれてるし…!」

「要所要所にパワーストーンも入れてあります。聖人さまと真琴さまの衣装は、もう少し軽くなるように、シルク製ですが」微笑む弾。

「…大祭が済んだら、じっちゃんが、お客向けに商品化しよう言い出すのが目に浮かぶ…」

「青龍コスプレ、イベント化されそうね…」玲香がため息をつく。


「ところで紗由さま」進が話題を変える。「獣神様方へのご褒美の件は…」

「はい。これから、探偵事務所の子たちで会議をします。みんな、裏のお山に行きますよ!」

「はい!」

 西園寺保探偵事務所の面々は大きな声で返事をすると、潮が引くように部屋を出て行った。


  *  *  *


 紗由たちが決める獣神様たちへのご褒美の内容が気になった華織は、その会議の様子を少し離れた場所から観察していた。

 翔太が気を遣い、テーブルと椅子をセッティングし、進が横で紅茶を淹れている。


「翔太くんと誠さんも事務所のメンバーではなかったかしら?」

 華織が進に尋ねた。

「一条の“命”さまは、手品の仕込みがありますし、翔太くんは龍さまと衣装合わせが…」

「皆、忙しそうね」

「華織さまも舞の練習をいたしませんと。」

「……本当に踊るの?」

「“キャバレーおばあさま”と、どちらがよろしいですか?」微笑む進。

「どうせ、どちらもやらせるくせに…」プイと横を向く華織。


「躍太郎さまと社交ダンスなどはいかがでしょうか」

 躍太郎の名前が出た途端に機嫌がよくなる華織。

「そうね…それなら踊りなれてるし」

「ワルツとサンバなどがよろしいかと」

「考えておくわ」紅茶を美味しそうに飲み干す華織。


“少し離れた”場所で、ビニールシートを敷いて円陣を組み、会議をしている紗由は、何気に華織の方を見ては言う。

「やっぱり、進子おねえさんはすごいです。ふつうにお仕事もしながら、あのおばあさまの面倒も見ています。

紗由がおねえさんの跡継ぎになったときに、“命”さまが、めんどうでない人だといいんですが…」


「その言い方…」充が紗由を見る。「その時の“命”さまが龍どのではないと思っている?」

 充の問いかけに、困った顔の紗由。

「なんとなく、なんだけどね…一番上の“命”さまは、にいさまじゃないような気がして…」

「龍くんがいちばんです!」奏子が立ち上がる。

「力のもんだいじゃないの…」


「大人の事情ってやつじゃないの?」恭介が言う。「違う人を前においたほうがいいからっていうやつ。政治の世界でもよくあるんだって」

「それならいいです」奏子が座る。


「で、紗由ちゃん。神様たちへのごほうびだけど、考えてあるんでしょ、本当は」

 真里菜が言うと、紗由はニッコリ笑った。

「獣神さまたちが、だれとでもお話できるようにしてあげようと思います」


  *  *  *



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