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第8話 王宮会議

2018/11/3 修正:会議室の様子を削除

2018/11/5 修正: 冗長な部分を削除・再構成(もう少し修正予定)

 無事、国王陛下との謁見(えっけん)も終わり、さっそく最初の打ち合わせを、王宮で行うこととなった。

 

 小会議用にと通された部屋は、10名ほどが座れるスペースがある。


 椅子(いす)に座って待っていると、重々しく扉が開いた。

そこには国王陛下、王女様と王女様とよく似てる女性の方、そして、役人っぽい感じの人たちが3名ほど入ってきた。


 ん?待て。なぜジェシカ王女様が……?


 一同、席について一礼をする。


「さて、はじめるか!おっと、その前にうちのやつを紹介しておかんとな」

「ユキテル様、はじめまして。私がこの脳筋頭の妻、ラスティ=エンリルでございます」

 

  王女様そっくりのその女性は自己紹介をしながら、隣にいる陛下を肘で突いた。

突かれた陛下は、落ち着きなく冷汗をかいてた。


 うむむ。この方が、要は王妃殿下か……。 なんか陛下、尻にひかれてそうだ……。


「…… なるほどね。さすがルル様が選んだ方ですね。すごい……」

「そうだろう、そうだろう。どうよ」

「後は本人たち次第ですわね。それはさておき、あなた!お仕事のお話はよろしくて?」


  ん?本人たち次第って?

入ってくるなり、俺を頭の先からつま先まで、じっと見つめて王妃殿下は妙なことを言う。


 いったい何の話をしてるのだ?仕事とは別件のようだけど。

ま、今は仕事、仕事。


「うぉほん! ではユキテル殿、では、どのような手順でこれから仕事されていくおつもりなのか、説明をお願いきたい」

「陛下。その前に、少しよろしいでしょうか?」

「どうしたのかね?ユキテル殿」

「単刀直入に皆様にお尋ねいたしますが、なぜ古い遺跡の探索や調査をされたいとお考えになられたのですか?それなりにお金も人も必要となるのに」


 俺はこの世界に呼ばれてきてから、ずっと心の片隅で引っかかっていることがあった。


 なぜ国を挙げて古い遺跡の探索や調査をするのだろう?って。


 そもそも遺跡の調査には、それなりのお金も人も必要だ。

わかっている遺跡の数も、どうも人によって違うのはおかしい。


 ルルは数万件っていうし、ステラは数千件って言っている。


 人によってその数が違うっていうのは、実は遺跡の数すらわからないってことなのだ。


 ギャロウ国王陛下をはじめ、この場にいる関係者は、皆、目を伏せて押し黙ってしまった。

何ともいえない重い空気がその場を流れる。


 その空気を破ったのは、ルルだった。


「ユキテルさん。実はここは前時代に大きな戦があったのです」

「それはステラが、言ってたから知ってるよ、ルル。でもそれが、どう遺跡の探索や調査と関係あるのか……」

「ユキテル殿、儂らはその戦の原因が知りたいんじゃ」


 俺の発言を(さえぎ)るように、ルルの代わりに陛下が応えた。


「あの、大きな戦っていうのは聞いておりますが、それがいつから始まったかはわかるのでしょう?」

「いや。ユキテル殿。実は先の大戦が、いつからはじまったのかも、わからないのだ。ただ、はっきりしているのは、その戦いを終結させたのが、ここにいるギャロワ陛下だということだけだ」


 応えたのは、王女様の隣に座っていた初老の男だ。


 金色の刺繍(ししゅう)の入った濃紺の詰め襟の服を着ている。

襟や胸元にはいくつか勲章があるうえ、ピリリとした雰囲気が漂っている。

おそらくこの人は軍人だろうな。


 それにしても驚いた!

いつから戦争がはじまったか、わからないなんて……。


「ユキテル殿、陛下。横槍を入れてしまい、申し訳ありません」

「気にするでない。ああ、ユキテル殿、彼はこの西帝国国軍将軍、ローレン=シュトレーゼマンだ。先の大戦を共に戦ってくれた漢ぞ」


 陛下がローレン将軍を簡単に紹介すると、彼は軽く俺に会釈をした。

俺も彼に会釈を返した後、姿勢を正して発言する。


「話を少し戻させていただきます。今回、古い遺跡の探索や調査をする目的は、先の大戦がはじまった理由を知ることと、いつからはじまったのかということで、よろしいでしょうか?そして依頼相手は、ギャロウ国王陛下ですね」

「……そのとおりだ。ユキテル殿」

「ちょっと安心しました。目的や依頼相手もわからずに、仕事をしたくはなかったので」

「そうか。では貴殿の資料は読ませてもらったので、もっと具体的な話を、実務担当のこの2人とも話し合ってもらおうか」


 そうして俺は、実際の調査費用や必要な器材、人数・期間などの具体的な話を財務担当官のメリッサ=エンリルさん、外務交通担当官のソフィア=エンリルさんたちを話し合った。

 

 財務担当官のメリッサさんと、外務交通担当官のソフィアさんは、ギャロウ陛下と姉妹だそうだ。同じエンリル家だもんな。


 お2人とも行政のトップにしては気さくで話しやすい。さすが陛下のご姉妹だ。


 話し合いの結果、予算は探索や調査のたびに請求可能となった。

決算についてもメリッサさんとその部下が担当してくれる。

必要な器材の管理も金銭に関わることだから、メリッサさんとその部下が担当することになった。

 

 すごく楽だ。

 

 その手の段取りやお金絡みのことは、今まで全部自分でやってきたからだ。

ただ調査だけしていれば、いいってもんじゃなかったからね……。


「ところでユキテル殿、現地への移動はどうする?近場はいいとして、国境沿いとか、北部や頭部には山脈もあるし、交通の便が悪いところもある。長期にわたる調査の時は、現地に泊まり込みでも構わないが、短期間の場合は、場所によっては、移動の方にばかり、時間をとられることもありますが……」

 

 ソフィア外務交通担当官に尋ねられる。

う。実際、どうしようか……。現地と王宮とか、図書館などと行き来する場合だって、あると思うんだが。

 そう考えながら、頭をかいていると、ルルが助け舟を出してくれた。


「私がこれからユキテルさんに、<移動魔法>をお教えします」

「え?待て!ルル殿。ユキテル殿は、<移動魔法>を使えるだけの力量をお持ちなのか?」

「はい。ソフィア様。相当な魔力と素質を持っております」

「ルル殿の見立てなら、そうなのであろうな」


 にっこりと俺の方をみて微笑むルル。

もしかしなくても、これからルルに魔法を教わるのか……。

嬉しいような恥ずかしいような。

ルル本人はいつもの倍増くらいにニコニコしている。


 移動のことについて、一段落ついたところを見計らってか、陛下から声をかけられた。


「器材や物のやりとりについて、現地からいちいちメリッサと連絡を取り合うのは面倒だろう?そこでうちの娘を一緒に連れて行け!仕事覚えることにもなるし、見聞を広めるためにも、よかろうて!ガハハハ!」

「……ユキテル殿、あ、あの、よろしくお願いします。遺跡に興味あるので……」


  大笑いする一方的な陛下の横で、ジェシカ王女様は小さくお辞儀をして、俺たちにつぶやくように言った。

 まあ、陛下直々の命だし、本人もその気はあるようだから、一緒に仕事してもいいかなと思う。でも、何だかルルは唇を噛み締めてるし、ステラはステラで眉間にしわを寄せている。

ネルぐらいかな?ジェシカ王女様に抱きついて、熱烈歓迎しているのは……。


「はあ、まあ、それはかまいませんけれど……」

俺は陛下の"拒否るなよ光線"がバリバリ出ている状況で、ただ(うなづ)くしかなかった。


***


王宮での会議の後、ジェシカ王女様を含めた俺たちは、魔導附属図書館へ、ルルの<移動魔法>で一旦戻った。


資料や本を散らかしっぱなしだったからね。


 さすがに図書館を占領してしまうわけにはいかないので、ルルが話していた大神殿の離れ家を活動拠点として使おうってことになった。


 あ、離れ家といっても、実はかなり大きい。


 元いた世界ではせいぜい2階建てで20畳ほどのプレハブだったが、縦横高さともに端から端が見えない立派な建物で、なんと門まで付いている。これじゃ屋敷じゃないかと呟いたのが、ルルに聞こえて、『これでも一番小さいんですよ』と苦笑された。


 で、今、まさにその離れ家で仕事できるように、みんなで手を加えているところだ。中の方の配置や整理は、ルルやステラ、ジェシカ王女様にまかせて、俺とネルは外廻りの整備をしていたところだ。


「お兄ちゃん、この看板、もう少し上の方がいいかな?」

「ごめん、ネル。少し斜めになってるよ。もうちょい右側の方を上にして」

「うん。こんなもんかな」

「よーし!部屋の中もらしくなったし、これでいいかな。みんな、お疲れ様でした」


 ネルが付けた看板には【西帝国考古学研究所】とデカデカと書いてある。

それをルル、ステラ、ジェシカ、ネルたちと見上げる。


 ああ、これから本当にはじまるのだなと、何か胸の奥から湧き上がるものがあった。

ようやく序章相当の部分が終わりました

次回はたぶんサービス回

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