第1話「帝国の葬送人」
辺りは静寂に包まれている。
そこで二人の男が会話していた。
「ガルア、仕事だ。次のターゲットは今日、わが国を訪問されている隣国の王の警護人だ。
ヤツはわが国の情報を他国に売っているらしい。明日の夜までに始末しろ」
「了解」
ガルアと呼ばれた少年は、短く呟いた。
そして、足音一つたてず、部屋から出ていった。
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次の日の夜。
ガルアは目元まであるフードを身に付けて、庭に立っていた。
ガルアは警護人の男を城内の庭に呼び出した。
男が外出している隙に、男の部屋に忍び込み、
「お話したいことがございます。今日の午後11時に裏庭までお越し下さい」
と書かれた手紙を机の上に置いておいたのだ。
男は時間通りに庭に現れた。
「こんな夜遅くに何を話すというんだ。
私も暇ではないのだぞ」
男は顔の見えないガルアに向かって言った。
「まずは事実確認だ。貴様が帝国の情報を他国に流しているのは本当か?」
ガルアは淡々と言った。
「ハッ!何を言い出すかと思えば、私が他国に情報を流している?
馬鹿馬鹿しい。何か証拠でもあるというのか?」
嘲るように男は言った。
ガルアは言葉を続ける。
「証拠ならある。隣国に確認を取ったら快く教えてくれたよ。
貴様が情報を流しているとな。
さらにその見返りとして金を貰っているらしいな。
貴様の家の金庫も覗かせて貰ったよ。警護の仕事だけでは
貯まらないような莫大な金が入っているのが確認された」
「貴様!何てことを!只では済まさんぞ!」
男は激怒している。
さらに、男の手の内が光っているのが見えた。
「魔法か」
ガルアがポツリと呟いた。
「そのとおりだ。貴様を生かしておく訳にはいかん」
男は魔法の発動準備に入った。
「生かしておく訳にはいかん、か。これで貴様が犯人であることは確定か」
「そう思っているがよい。どうせ今ここで死ぬのだから」
男は魔法の発動準備が完了したらしい。
男の手の上で魔法光が輝いている。
「では、仕事の時間だ」
ガルアは腰につけた短剣を二本構えた。
それを見た刹那、男が魔法を発射した。
魔法の気弾はガルアを追尾した。
「もう、遅い」
気弾がガルアに届く前に、ガルアの剣は男の右腕を切り裂いていた。
切り離された腕が宙を舞った。
切り離された部分からは紅い鮮血が吹き出した。
「ぐ、おおおおおおおっ!」
男はたまらず右腕を押さえる。
「そろそろ終わりにしよう。粛清の時間だ」
ガルアはゆっくりと男に歩み寄る。
ガルアの顔を見た男は戦慄した。
「ま、まさか、貴様ァ!帝国に存在すると言われている
葬送人の!」
男は恐怖をその顔に浮かべている。
「ふっ、さあどうだろうね」
ガルアは男の横を通り過ぎた。
その瞬間、男の体は肉塊となった。
「ふう、此にて任務完了」
ガルアはため息をつき、歩き出した。
さっきまでの事が嘘のように、音一つない静寂な夜にへと戻った。
いかがだったでしょうか。
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