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続・最終章 次なる世代への架け橋

 真広を含む異世界転移者が帰還した後――


『――これは……素晴らしいものです』


 文書を使用した時にテレパシーとして流れた時と同じ、機械じみた女の声音。

 

『――吉野美帆の意志の強さが、文書の神の力と結合した結果……といったところでしょうか』


 妖艶に微笑んでいるように感じた。


 彼女はちらりと流し目する。


 そこには1人の女性がいた。


 吉野美帆――


 すでに『ワルプルギス文書』の光に包み込まれ、彼女の様子を正確に視認することはできない。


 女神美帆は謎の女性の存在に気が付くことなく、聖女のように手を合わせて世界を見下ろしている。

 いや、正確には見るも触れることもできないであろう。

 謎めいた女は、実体すらない幻想の存在なのだから。


『――まだ女神になって間もない、十分な器というものが成熟していないのでしょう』


 ――いえ、最高の女神だとしても十分な器を用意できるかは分かりませんが。


 言葉を紡ぎ、再び微笑む。


『――あなたの意志の強さは別格です。それ故文書に愛され、ファルネスホルンの議長に腰を抜かせることができたのでしょう』


 謎の女性は自分を取り巻く周囲の光景に目を光らせる。

 元の風景さえ分からないほど、文書の光は世界を包み込み、そして解体している。


 しばらくすれば、無になった空間に新たな世界が構築される。

 美帆はすべて自動で処理される世界再構成の光景を、この特等席で鑑賞するつもりだろう。


 世界再構築の作業が終わり次第、美帆はファルネスホルン聖域に帰還する。

 それからは多忙の日々を送るであろう。

 だからこそ、短時間とはいえゆっくりできる時間は今だけである。


 多少の不安を顔に浮かべながらも、幸福と達成感の色を浮かべる美帆の表情。

 女性はそんな美帆に対し、聞こえることのない報告を述べる。


『――異世界転移した人間たちは元の世界に還りました――この世界での記憶を消されて』


 この世界は崩壊し、再び再編される。

 崩壊時には、この世界に関わる全ての情報が抹消される。

 それは異世界に戻った転移者の頭の中に眠る、この世界の記憶や機械化人間(アンドロイド)として改造された事実も消滅対象である。


『――ですが、例外はあったようですよ』


 例外。

 美帆が『ワルプルギス文書』を使用する前、図られたようにこの世界から転移させられた者。


 そしてもう1つの例外。

 美帆と文書の力によって元の世界に戻された人間のうち、この世界における記憶と事象を持ったままの者がいた。


『――奥村真広、彼はこの世界の出来事も、吉野美帆のことも覚えている』


 彼は忘れなかった。

 彼はその記憶を持ちながら、自身の世界で生きることになる。


『――あなたの意志の強さがワルプルギス文書の力と混ざり合い、偶然できた事象。あなたはずっと奥村真広のことを覚えていたい、でも、同時に奥村真広に自分のことを覚えていてほしいと思っていた』


 それは美帆の意志が起こした奇跡である。

 

『――その他の理由として、あなたは奥村真広にずっと触れていた――』


 目の前の美帆がこうして世界を見守る前、彼女は真広の頬を撫でていた。


『――ずっと触れていたからこそ、これも偶然に吉野美帆の記憶が奥村真広に流れ込んだ』

 

 謎の女性は歌うように語った。

 誰もが認知できないような事実を、こうして全て知っていることのように呟いているのだ。

 

『――あなたは奥村真広の元の世界での幸せを願っている……きっと女神エレナの洗脳の影響は解除されるでしょう……これもまた、あなたの意志と文書が成しえた奇跡です』


 そんな美帆にエールを送るように、謎の女性は聞こえることのない声を発す。


『――応援しています吉野美帆。あなたの望みを叶えてください』


 実体のない謎の女性は、実体のない笑顔を浮かべていただろう。

 そうして美帆の隣まで歩いていき、彼女と共に世界を変革を見守る。


『――あなたがファルネスホルンに還る時まで、私もここにいましょう』


 そう美帆に語り掛ける。

 

 こうして2人は揃ってこの広大な世界を眺めていた。


 世界は広い。

 その広さは、人間の感覚では大きさを理解することは簡単ではないのかもしれない。

 

 だがそれも、各神が管理するそれぞれの世界を傘下に置いたファルネスホルン聖域にとって、あくまで1つの世界という単位に分類されるほどちっぽけなものである。


 大局的な見方をすれば世界の生まれ変わりなど、1つの世界に限定された変化である。

 そう、その世界だけで完結する再創生である。


 だが、『ワルプルギス文書』を使用して行った美帆の変革。

 それは決して1つの世界だけに集約される出来事ではなかった。


 他の神の世界や、ファルネスホルン聖域にまで影響を与えることになる大事であったのだ。


 こうして、2人の男女の転移から始まるこの世界の物語は幕を下ろす。

 そしてこの物語は、次なる世代への架け橋となる。



 To be continued in 『Magical girl brainwashed(洗脳魔法少女)』……。

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