●ミキ誘拐される?
●ミキ誘拐される?
「ハイ、ティンカーベル歌入ります。 3・2・1キュー」
ADの大きな掛け声がスタジオに響く。
イントロが流れ始め、二人の姿がモニタスクリーンに大きく映し出された。
ちゃんと歌詞を覚えているかなぁ・・・
ミキが、なんだか自分のことではないみたいで、ボーーとしていると。
「ミキ、振り付け、振り付け。 踊れっ!」
みどりが、ニコニコしながら目配せしている。
イケねっ。 忘れてた。
もうすっかりあがっちゃってるようで、頭の中は真っ白状態だ。
でも何度もレッスンしたから、振り付けがすっかり体に染み込んでいるので体が勝手に動く。
ああ、良かった。 でもモニタに映し出されたわたしの顔は青ざめて、引きつっているみたいに見える。
サキは、舞台度胸がイイって言うか・・・物怖じしないって言うか・・・心臓に毛が生えてるって言うか・・・
そんな事を考えているとイントロが終わって、歌が始まってしまった。
最初はサキのパート。
ねぇ、ここは夢の中。 いつか見た景色と同じ。 青い海と綺麗な虹。
次はわたし? え~と・・・なんだっけ?
「あっ・・・やばっ」
二人手をつなぎ、白い砂浜を歩いているの。 あぁ夢ならお願い覚めないで。
よっかったぁ・・すかさず、サキがフォローしてくれる。
ふぅ~。 ありがとうサキ。 心の中でそう言うと、ちょっと落ち着いてきた。 うん、もう大丈夫!
その後は、結構リラックスして楽しく歌うことができ、無事に初ステージを終える事ができた。
後でわかったんだけど、歌が終わった途端、テレビ局にティンカーベルへの問い合わせが殺到して回線がダウンしちゃったらしい。
番組の企画でFAXの受付なんかも結構あったらしいんだけど、わたし達への質問FAXの方が山のように届いたんだって。
そして、予定通りロケ先を回り、各企画を消化して東京に戻ったのは、22時を少し過ぎていた。
流石に疲れていたけど、あと10時間・・・半分弱だ。 少し休憩時間もあるし、ちょっとだけ眠れるかな。
そんな事を考えながらベンチに腰をかけて休憩していると、サキがジュースを持ってきてくれた。
「ねぇミキ。 これ飲んだらシャワー浴びにいくよ」
「えっ、どこに?」
「隣のホテルに部屋が取ってあるって。 ここにもシャワーがあるらしいんだけど、ちょっとねぇ・・」
「うん。 やっぱり、ここじゃ落ち着かないよね」
「じゃあ先に行ってて。 ハイ、これが鍵ね」
「あれ? サキは・・・」
「うん。 ちょっとマネージャーの大沢さんに呼ばれてるんだ。 すぐ行くから」
「そう・・・プリン○ホテルの401号室かぁ。 じゃあ、先に行ってるね」
「うん。 わたしも直ぐに行くから」
そんなワケで隣のホテルへは、ミキ一人で移動。
ロケ先は、ジーンズとタンクトップ姿だったので、そのままの格好でホテルの部屋へ直行だ。
鍵を開けて部屋に入り、部屋の照明スイッチに手が触れた途端、不意に背後に人の気配を感じ、振り返ろうとした瞬間、ハンカチで口を塞がれた。
「ムググ・・・モガモガ・・・ウムム・・・○%#?##」
だ、誰? サキにしては凄い力だし・・・がっしりと羽交い絞めにされて身動きができない!!
しかも、ハンカチには何か薬が含ませてあるらしく、呼吸をするたびに意識が薄れて行く・・・
サキ・・・
・・・・
・・・
・・
・・
うっ・・・あたま痛っ!
オレは、いきなりの頭痛で、目が覚めた。
目の前は真っ白な天上。 窓のない部屋。 ここはいったいどこなんだ?
いったい何が起きたんだ?
ベッドから起き上がり部屋の中をゆっくり見回してみたが、自分が寝ていたベットと小さなテーブルが一つあるだけだった。
のろのろとベッドから降り、入口のドアに向かう。
ガチャガチャ。 やっぱりドアには鍵がかかっていて開かない。
もしかしたら、わたし拉致された? でもいったい何故?
次回、「新薬モルモット」に続く