表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Origin  作者: 鳥王
1/2

プロローグ:人間の本質

手に確かな反動を覚えながら、銃撃を放つ。

聞きなれた音と共に男の脳髄が弾け飛んだ。

転がる薬莢の音があたしに生を教えてくれる。

倒れた男の姿があたしに死を教えてくれる。

この男は何もしていない。

あたしは何もされてない。


ただ、持っていた紙袋の中に金目の物があるだろうと考え、撃っただけのこと。

生きるため、これは生きるための仕方ない犠牲であり、あたしが望んでしていることじゃない。

そう自分に言い聞かせながら男から紙袋と装飾品を取り外していく。

こんな所で生活していて罪の無い人間なんていない。そう思うと、少しだけ感じた罪の意識が消え、急激に心が冷めていくのを感じる。

大丈夫、あたしはいつも通りのあたしだ。


財布、時計、ネックレス、ピアス、服……

解体が終わると、それは本当に「肉」と言って差し支えない物へと変貌した。

そして、その中。男が持っていた紙袋の中には、「可愛い」とはきっとこういうものを指すのだろう。意匠を凝らす包装がされていたそれは、児童向けの玩具……、所謂ぬいぐるみとよばれるものであった。

誰かにプレゼントでもするつもりだったのか?娘に?それとも息子か?

そう思いぬいぐるみをよく観察すると、そこには「サーヤ」という刺繍がされていた。

やはりこれは娘に宛てたプレゼント……

もしかしてあたしは取り返しのつかないことをしてしまったんじゃないのか?

あぁ、あたしは、あたしは


「……これも、小銭にはなるか」


自然に口から出た言葉は謝罪の言葉などではなく、自己を肯定する言葉だった。

例え生きるために人を殺していたとしても、人に害を成す前に生きることを諦め、自ら死を選択できないあたしはクソみたいな悪人、怪物の類だ。

「クレイ」の名にふさわしく、冷たい、人形のような女だ。

そして、だからこそわかる事がある。


────人の本質は悪だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ