どこの街でもすることは同じ
領主の館を出て、来た道を戻っていく。
来るときに気になった大きな建物が、ここからでも目に入ってくる。
やはり大きい。
とても興味を引かれる。
が、今は向かうわけにはいかない。
先にアルクに合流するのが先だ。
後でどんな小言を言われるか、わかったものではない。
のんびり歩きながらではあるが、この街の冒険者ギルドに目指して歩いていこうとして、ふと気付く。
場所を知らないという事に。
間抜けな話ではあるが、仕方がない。
この街に初めて来たのだから。
カインもこの街に来るのは初めてだから、さすがに道はわからないだろうし。
先程どこにあるのか聞いておけば良かった。
今更戻る気にもならず、ひとまず進んでいけばそのうち見つかるだろうと、歩を進める事にした。
『なあなあ、クルス!もう用事は済んだのか?』
『そうだな。キールに呼ばれた案件はひとまず終わりだな。後はアルクと合流してからだな。』
『そうなのか!それならもういいか?』
『ん?何がだ?』
俺が疑問を浮かべると同時くらいで、トゥーンがバルに跨がり、バルが駆け出す。
一心不乱といった様子で駆けていき、出店の前でこちらを見て待っている。
俺に有無を言わせないといった感じだ。
仕方ないな。
確かに、後でとトゥーンには言っていた。
それに、それなりに腹も減っていたのは事実だ。
領主の館で出されたのは、お茶だけだったからな。
移動する最中、トゥーンの要求をのんで様々な出店で買食いを行う事になった。
並ぶラインナップは、ベッラの物とそこまで違うところは無かった。
ところ変われば品変わるというが、そうでもないらしい。
まだまだ、距離が近いという事か?
トゥーンとバルにとっては、そんなことは気にならないようだ。
旨そうに先程購入した串焼きを頬張っている。
交易路が封鎖されている為に品が入らず、このような状態になってしまっているかもしれない。
それでも、お好み焼きに似たものを見つけたときは小躍りしそうになった。
残念ながらソースやマヨネーズは無く、塩で味付けされていたものでしかなかったが、それなりの満足を得ることが出来た。
残念ながら製法を知らなかった為、自分で調味料を作製出来ないが、これについてはどこかで流通している事を願おう。
のんびりとした移動ではあったが、歩みを続けるものの冒険者ギルドを見つける事がなかなか出来ない。
もしや見落としてしまったのだろうか?
こうなれば誰かに道を尋ねた方が早い。
無駄に時間を浪費するというよりも、先程からこれまで買食いを出来なかったトゥーンの鬱憤が爆発するかのような食欲が気になる。
さすがに食べ過ぎだ。
それに触発されるバルもだ。
お前、そこまで食べれなかったはずだろ。
トゥーンに影響受けすぎだ。
周りを見回し、たまたま歩いていた女性に声を掛ける事にした。
「申し訳ありませんが、少しよろしいですか?」
「ん?なんだね。こんなオバサン引っ掛けて。ナンパならもっと若い子に行きな!」
「へっ?」
「まったく・・・あたしもまだまだ捨てたもんじゃないね。」
そう言いながら笑って行ってしまう。
まさかの勘違いを訂正する暇もなく、やりきれない気持ちを、心に収めざるおえない結果として突きつけられた。
そんな俺を、カインが同情したような目で見てくる。
いや、その目は止めてくれ。
かえって傷つく。
心にダメージを負った俺は、適当な出店のおっさんに声を掛ける。
そのおっさんも、今の様子を見ていたのだろう。
俺を見て、笑いながら答えてくれる。
「大変だな、兄さん。」
「まったくだ。どえらい勘違いされてしまったもんだよ。」
「だが、聞き方も悪かったかもな。それはそれとして、何を買っていくんだ?」
「ああ、適当に見繕ってくれ。それとちょっと道を聞きたいんだが、いいか?」
「俺にわかるといいんだがな。ほらよ、袋に入れといてやったぞ。それで?」
おっさんに渡された商品を受け取る。
「冒険者ギルドに行きたいんだ。場所を知ってるか?」
「ああ、それなら逆方向だな。もっと南の方だ。この大通りを真っ直ぐ行って、十字路を二つ行ったとこで右に曲がって、しばらく進め。後はその辺で聞いてくれ。ちょっとわかりずらいんだよ。」
「そうか。感謝するよ。」
「何、こっちは買い物してもらってるからな。それより、また勘違いされないように気を付ける事だな。」
「やれやれ、もう蒸し返さないでくれよ。」
そう言っておっさんに礼を告げると、言われた通りの方に向かって移動を再開する。
次に道を尋ねる時は、カインにさせることにしよう。
また、こんな事になったら、よりへこんでしまいそうだ。
一応現代からこの世界にクルスは来たわけですが、必ずしも現代知識を活かせるとは限らない訳ですよね。
ソースとかマヨネーズとか、使用したことがあってもワザワザ作るような事は、したことが無いわけなのです。
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今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。




