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領主との会談

どの程度待っただろうか。

メイドが淹れてくれたお茶はすでに飲み干してしまった。

おかわりを飲もうと思えば、部屋の隅にポットが置かれたままになっているので自分で淹れる事の出来るが、そのままにしておいてある。

ソファーはふかふかで座り心地が良く、体が沈みこんでしまいそうになるほどだ。

異様なほどに、居心地の良すぎる部屋になっていた。


トゥーンはカインの膝の上に座っており、二人で何事か話をしているようだ。

邪魔しても悪いので、そちらは放っておく。

一方俺の方は、膝の上にバルが頭を乗せて横になっており、結構重い。

が、ご満悦といった様子に特に何も言わなかった。

暇だということもあり、俺もソファーに背中を預けて目を閉じる。


しばらくすると、誰かがドアをノックしたようで、部屋に乾いた木を叩く音が響く。

居住まいを正し、ノックに対して応える。


「失礼致します。主人の準備が済みましたのでご案内させていただきます。」


「ようやくか。よろしく頼む。」


ドアを開け、恭しく頭を下げるのはこの部屋に案内してくれたメイドだった。

メイドの言葉を聞いて、俺は軽くバルの背を叩いて俺の膝の上から下ろした後に立ち上がる。

カインも、俺とほぼ同時に立ち上がる。

腕の中にトゥーンを抱いている。

そのトゥーンをバルの背中の上に乗せる。


「よろしいですか?それではご案内致します。こちらへどうぞ。」


再びメイドの後に付いて歩き始める、がすぐにそれも終わる。

部屋を出て、真向かいの部屋の前に立つメイド。


「こちらのお部屋です。失礼の無いようにお願い致します。」


それだけ言うと、静かにドアを開ける。

そして、うつむき加減でドアの脇に立って、俺達が中に入るのを待っている。

そんなメイドに、ありがとうと声をかけ中に入る。

俺達が入ると、そっと音を立てないようにドアを閉じる。

中には、まだまだ若い青年が机に向かって何かを書いていた。

その脇にはキールが立っている。

どうやらここは執務室のようだ。

領主としての仕事をするための部屋か。

騒いでも仕方がないので、静かにその時を待つ。


「ご主人様。お客様をあまりお待たせするのはよろしく無いですよ?」


「えっ?あー、済まない。もう少しでキリの良いところまでやれちゃいそうだから、そこのソファーにでも座って待っていてよ。キール、お茶出してあげて。」


目線を上げること無くキールに指示を出す。

キールはその言葉に「かしこまりました。」と告げると、俺達をソファーに座るように促す。

座ると、手際よくお茶が出される。


「申し訳ございません。こちらからお呼びしたというのに、これほど時間をとらせてしまう事となってしまいまして。」


「いえ、気にしないでください。お仕事お忙しそうですね。日を改めた方がよろしいのではないですか?」


カインが気を使っているのが分かる。

その態度が見えたのか、若干の苦笑を浮かべるキール。

一方、その言葉が聞こえていなかったのか、キルフィットはただひたすらにペンを動かし続けていた。

お茶を飲みながら、暫し待つとペンを転がすような音が聞こえる。

音のする方を見ると、伸びをして体をほぐすような動きをしているところが目に入ってきた。

あ、目があった。

どこかバツの悪そうな顔をしたようだ。


「あはははは、ずいぶんと待たせてしまって申し訳ないね。いや、ここまで時間がかかるはずじゃなかったのになぁ。」


「仕方ありません。ご主人様でなければ決裁できない案件でしたから。それにあまり頭を下げるような真似はおよしください。」


「確かにそうだけど、お客さんには関係の無いことだよ。それに悪いと思ったなら頭を下げるのは当然だよ。キールが昔から言っていたじゃないか。」


ここまでのキールとの短いやり取りを見ただけで、信用できるような人物かわからないが、嫌いな性格はしていないと思った。

上に立つものであるにも関わらず、偉ぶる様子が無いのだ。

話し方にも棘のような物も無く、柔らかい印象を持った。

これが腹芸なのかもしれないが、それでも印象はかなり良いと言える。


「それで君達を呼んだのはね、ちょっとお礼を言いたかったからと、今のうちにお詫びを言っておこうと思ってね。」


「どういう事です?」


「まずはロウルを救ってもらって感謝しているんだ。あの村が、ずーっとあのままになってしまっていたら、やがてこの街も立ち行かないような状況になっていたからね。」


「ロウル?」


「おや?知らなかったのかい?君達が救ってくれた村の名前なんだけど・・・これはもっと知名度を向上させる必要があるね。いや、参考になったよ。」


俺の無知ぶりが遺憾なく発揮されたが、それを笑って流してくれる。

しかし、あの村ロウルという名前だったのか。

アルクからも聞いていなかったが、これは俺の落ち度か。


「まあ、あまり名前にこだわらない大きな人なんだね。それはそれとして、もうひとつの用件なんだけど、君達はこの街から先に進ませる事は出来ないんだ。本当に申し訳ない。」


「それは何故なんですか?僕達はオブライエンに向かうようにと聞いていたんですが。」


唐突な話に驚いて思わず声を上げるカイン。

それには俺も同意だ。

いったい何故、先に進むことが出来ないのだろうか。

これは詳しく話を聞く必要があるな。

ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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