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これからの道筋

宿に入り、フロントで受付を済ませる。

このとき、アルクは馬車をどこに止めればよいか聞いていた。

外に放置するわけにもいかないだろう。

宿の裏に厩があることを聞くと、そちらに移動させる為に外に出ていった。

その後、俺達は部屋に案内される。

まさか、人が先行してついてくるような状況になる宿泊施設が、この世界にあるとは思ってもいなかった。

さすがに荷物を預ける気にはならなかったが。

目的の部屋の前まで来ると、案内してくれた人は深々と頭を下げた後に去っていった。

案内された部屋は、以前襲撃を受けた部屋だった。

どんな偶然だと思ったが、なにも言わなかった。

部屋は綺麗に片付けられており、それなりに階級が高い者の宿泊にも耐えられるようになっていた。

所謂、上流階級御用達なのだろう。


「おいおい、見違えたな。以前とは雲泥の差じゃないか。」


「そうですね。凄く豪華な部屋ですね。それに案内されるなんて思ってもみなかったです。」


「それは当然だろう。ここはこの村の中で一番の宿だからな。」


「そうなると宿泊費が気になるな。贅沢な旅行をしようっていう富豪でもなんでもないぞ。」


「それは心配ない。宿泊費はトルス持ちだ。出頭命令とは言ってはいるが、客と変わらないからな。気が変わられても困るから、それなりの扱いをしてくれるのさ。」


「でも贅沢過ぎては、旅が辛くなってしまいますよ。」


確かにこの扱いは賓客レベルじゃないか?

俺達はあくまでも冒険者。

たとえ、トルスという国に益を出すような結果を出したとはいえ、これでは参ってしまう。

心配が顔に出ていたのだろう。

アルクが軽く笑う。


「そう気にするな。それなりにいい待遇を味あわせることで、こちらを懐柔しようとしているのさ。」


「懐柔?何でまた?」


「難事を解決できる冒険者なら、どの国も欲しがるものだ。それも少数精鋭もいいとこだからな。良い待遇をして、心をトルスという国に縛り付けたいのさ。もしかしたら、女をあてがうくらいはやってくるかもな。何せ、俺達は男だけで行動しているからな。」


ハニートラップなんかが起こると?

いくらなんでもそれは無いと思うんだが。


「さすがにこの村ではそれは無いだろうな。まだ復興間もない。だが次の街からは、その辺は気を付けていかなくてはいけないかもしれない。クルス、引っ掛かるなよ?」


「俺がか?」


「そうだ。俺は冒険者ギルドの職員だし、カインにはまだ早いだろうからな。主に狙われるのは、クルス。お前になると思う。」


「勘弁してくれ。」


狙われるなら俺が一番先に狙われることになるだろう。

だが、カインには早い?

むしろ、だからこそ経験の少ない(無い?)カインを狙うやり方をしてくる気がするんだが。


「なんなせよ、気を付けて移動をしなくちゃならないというわけだ。他にも何を仕掛けてくるか分からないからな。」


「何だか、凄く面倒に感じてきました。」


「俺もだ。」


「そういうな。それにその辺に注意しておけばかなりの豪華な旅行だ。別に敵対しようとしてやってくるわけじゃないんだからな。」


そうは言っても面倒は面倒だ。

仕方ない話だけども。

こういうときは、トゥーンやバルのように好きにしていられる状態が羨ましく思える。

そう思ってチラッと見ると、丸くなって眠るバルの上に重なるようにしてトゥーンも眠っている。

この姿を見ると、気を張るのが馬鹿馬鹿しく感じてしまう。


「それで、この後どれくらい移動を続けるんだ?」


話を変えるように俺がアルクに問いかける。

移動中にこの辺の話をしようと思ってはいたが、カインとの器合わせもあり、アルクに話を聞くことはやめていた。

アルクは少し上を見上げながら、顎のあたりをさすり考えているような素振りを見せる。


「そうだな・・・ここから今回の目的地になるトルスの首都である公都オブライエンまでに、アッガという街と旧都トラスの2つ程通って行くことになるな。おおよそ半月くらい見ておけば余裕で着くと思う。まぁ、それ以外にも小さい村を幾つか抜けて行くことにはなると思うが。」


「結構遠いんですね。そんなに長いこと旅をしたことが無いから少し不安になっちゃいますね。」


そう言いながらも、カインの顔が楽しみだと言っているようだった。

広い世界を見て回って得た経験は、必ず何らかの糧となって返ってくるはずだ。

老婆心に似た感情が出てきてしまうな。


「それで、旧都とは?遷都したってことか。」


「そうだ。かつての首都になるな。遷都したとはいえ、かなり栄えている。今でも王族の一部が住んでいることも関係があるかもな。それに、王宮での伝統行事のうち、幾つかは今も旧都で行われているようだ。そのせいか、権力の分散化が所々見えるな。」


「なかなか、ややこしいお国のようだな。」


「そこに王位継承問題が絡んできているから、より複雑に感じるかもな。」


「僕達は巻き込まれる事は無いんですよね。」


「呼び出しは、トルスの国王名義だったから大丈夫だとは思うがな。それに謁見をする訳じゃないだろうから、そこまで気にする事も無いだろう。それに自分の身を守るくらいなら、二人には楽な話だろう?」


「だと良いんだけどな・・・」


大丈夫と言われても、始めに何か懐柔してくるのではと話を聞いてしまっていた為、よりどのような事があるのか気になってくるのは、俺がひねくれているからなのか?

今後の移動が不安になってきてしまっていた。

再び、トゥーンとバルを見て心を落ち着ける事にした。

ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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