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暇つぶしに修練を

移動中、やはりやることがないというのは退屈な事だ。

食事の用意をするか、夜営の際の周囲の警戒をするというだけでは、やはり手持無沙汰だ。

時折、魔物と遭遇した際には殲滅させる。

しかし、それ以外の時間の潰し方を思い付かなかった。

幌の外の流れる景色を、ぼうっと見ながら少し考える。


アルクは御者として馬車を走らせなければならないから、暇は少しも無いと言える。

カインはいつのまに買っていたのか、魔法の袋から本を取り出して読書をしていた。

この世界の書籍というものに興味が無いわけではないが、いかんせん字がまともに読めない。

これでは、カインが読み終わった物を借りるということも出来やしない。

それに、こんな揺れのひどい馬車に乗った状態で、よく本を読むことが出来るものだ。

俺なら、今頃嘔吐しているかもしれない。

トゥーンとバルはというと、眠るのが仕事といった具合で日がな一日眠りについている。

よくもまあ飽きもせずと言いたくなる程に。

動物の睡眠時間は人のそれと比べても長いというし、致し方ないことなのだろう。


結局、俺自身が今まで旅というものに馴れていなかったというだけの話だ。

とはいえ、さすがにこれだけ暇だとなかなかつらい。

これを見かねたのか、夜営の準備を終えた後の食事中に、アルクから提案があった。


「クルス、そんなに日中暇なら、魔法の鍛練でもしたらどうだ?」


「魔法の鍛練?」


「そうだ。お前は呪文も知らず、無詠唱にて魔法を行使しているが、それの理屈を知るべきだ。効率よく魔力を使用するのにも役にたつだろう。まぁ、俺が教えてやれる呪文など、たかが知れているがな。それでも知らないよりは良い。カインにも色々聞くといい。」


そう言われ疑問を浮かべる。

カインは魔法を使用できなかったはずだが?

スキルも確認していたからこれは間違いではないはずだ。


「実は、アルクさんから魔法の知識の書かれた魔導書をお借りして読んでいたんです。」


「魔導書?ああ、移動中に読んでいた本か。しかし、またなんで?」


その言葉に呆れぎみな表情のアルク。


「それは、お前が文字を読むことが出来ないからだろ?カインからなら、素直に話を聞くと思ったしな。ただ、その代わりと言ってはなんだが、カインに器合わせをして欲しい。」


また訳の分からないことを言い出したな。

器合わせ?

いったい何をさせようというのか?


「残念な話ではあるが、カインに魔法の才能は無いといっていい。これを強制的に呼び起こすとでもいうのかな。相性の良い属性の魔法の資質がもしかしたら呼び起こされるかもしれない。」


「それでどうして俺なんだ?いや、俺が何かしてやれるなら協力を惜しむつもりは無いんだが。」


「理由か?まず第一にクルスの魔力量が大きいということが上げられるな。器合わせというのは、相手の体に魔力を流し込む事をいうんだが、この時魔力量が大きい方が効果が高いといわれている。第二に、お前様々な属性の魔法の行使が出来るだろ?ただ、魔力量が大きいだけじゃなく、様々な属性に対する適性があった方がより効果を上げてくれるはずだ。」


「そういうものなのか?」


「そういうものだ。」


魔法の素質を植え付ける為の方法が存在している事に驚かされた。

やはり、何かあるんじゃないかとは思ってはいたが。

これで、魔法を使用することが出来るようになれば、戦い方の幅も広がる。

まぁ、今も遠近両方で戦えるけども。


「それなら早速始めよう。どうしたら良い?」


「まずは、カインの両手をそれぞれつかんでくれ。」


「よろしくお願いします。」


そう言いながらカインが差し出した手を、それぞれの手で繋ぐ。


「そうしたら、カインの左手に魔力をゆっくり流し込んでくれ。なに、そういうイメージを浮かべて実行してみればいい。クルスなら出来るさ。」


言われた通り、右手からカインの左手に魔力を流し込むべく、イメージを浮かべる。

なんだか右の手のひらが温かくなってきた。

カインも自分の体に起きた不思議な現象に驚いているようだが、どこか楽しそうにしていた。


「よし、上手くいってるみたいだな。次に流し込んだ魔力を反対の手で吸い上げてくれ。」


俺が右手から流した魔力を左手で吸い上げればいいのか。

つまり、カインの中に俺の魔力を巡らせて、それを外に出してやれば良いわけだな。

それの意味合いはよく分からないが、やりたいことはわかった。

それをしばらく続ける。


「よし、次に反対に左手から魔力を流し、右手で吸い出してくれ。」


「ああ、わかった。」


次は逆側からの流れを作ればいいんだな。

先程と同様に魔力をカインの体に巡らせる。

涼しい顔をして行い続ける俺に、アルクは苦笑している。


「そろそろ良いだろう。どうだ、カイン?」


「何だか、体が温かいです。」


「ふむ、上手くいったようだな。クルスも丁寧にカインの中に魔力を巡らしていたようだしな。クルスの方は調子はどうだ?」


「いや、何ともないが。」


「それは大したものだな。普通は器合わせをすれば、かなりの疲労が溜まるはずなんだがな。まぁ、いい。これで、カインの体の中に魔力の通り道が出来た事になる。本来なら、素質があるものはこの時点で魔法を行使出来るようになるんだが、カインの場合はまだ無理のようだな。なにしばらく続けていけば、使用出来るようになるかもしれない。」


絶対に使用出来るようになるとは言えないわけか。

素質がないところに無理矢理に、素質を芽吹かせようとしているんだ。

簡単に出来るとは言えないか。

それでも、俺はすぐにカインが魔法を使えるようになる気がしていた。


「まぁ、出来るようになるまで付き合ってやるよ。」


「ハイ!お願いします!」


カインが元気に反応を示す。

それまで使うことが出来ないと思っていたものが、可能性のレベルではあるが提示されたのだ。

嬉しくないわけ無いだろう。


「さて、今日はこれで終いだ。器合わせは俺のいるところでのみ行うようにしてくれ。それじゃ、今日はカインはゆっくり休め。器合わせしたあとは強烈な睡魔に襲われることになる。そうなれば見張りなんて出来ないだろうからな。クルスもそれで良いか?」


「俺は構わないぞ。大体、暇すぎて昼間は随分と休ませてもらっていたからな。カインの分は俺が受け持つ事にしよう。」


「そうか。先に俺が見張りでも構わないか?」


「見張りからそのまま馬車の御者はキツいだろうからな。それで構わない。」


そうして夜は更けていった。

カインに魔法のフラグが立ちました。

そして、呪文についても出て参りました。

これで、魔法を発動させた時に呪文を叫ぶとかの演出が出来ることになるわけで、作者である自分の病気が進行している事に笑いを禁じ得ない・・・


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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