住み処への移動
『いや、それはどうなんだ?』
折角のお誘いだ。
ついていくのはやぶさかではないが、いきなり俺みたいな見ず知らずの訳の解らない奴が現れたらトゥーンの仲間達はどう思うだろうか?
それこそ、先程のトゥーンのように警戒心丸出しで敵意を向けてくるんじゃないだろうか?
『なんでだ?俺様がいいって言ってんだからいいんだよ!』
そう言いながら頭をペシペシと叩く。
リンガの実を食べた際に付着した果汁だらけの前足で叩くものだから、髪の毛がベタベタする。
『そうか。分かったついていくことにするよ。』
『おう!』
この場に留まったところで、今の状況になんの進展も得られない。
トゥーンやその仲間達がなんらかの情報を持っている可能性は低いだろう。
だが、何らかの得る物があるかもしれない。
先程味方してくれた古代樹にトゥーンについていってみると別れを告げて移動を開始する。
それにしても辺りは暗い。
街灯なんかがあるわけじゃないから当然といえば当然かもしれないが。
肩の上で指示を出すトゥーンの言う通りに歩いていくのだが、やはり獣道ともいえない場所を歩かされ続ける。
これがなかなかに辛い。
裸足で移動ということと相まって移動速度はかなり遅い。
それでもトゥーンはご機嫌そうだ。
そういえばトゥーンの所持スキルに気になるものがあった。
それは勿論“勇者”という名のスキルだ。
だが、スキルという概念を理解出来ているか心配だ。
“意思疎通”というスキルがあるにも関わらず、同じスキルを所持する古代樹と会話が出来ることを知らなかったからだ。
下手なことを言って混乱させるつもりもない。
こっそり“神眼”を使用し、トゥーンのスキルを見てみる。
名前 トゥーン
種族 ハンタースクイレル
スキル
勇者、体力増大(LV.MAX)、敏捷増大(LV.MAX)、腕力増大(LV.MAX)、魔力増大(LV.MAX)、状態異常回避(LV.MAX)、風魔法(LV.MAX)、神聖魔法(LV.MAX)、意思疎通、成長促進
自分のスキルと比べても、やはりすごいスキルなんじゃないだろうか。
そして、その中にある“勇者”というスキルを注視するようかのように意識を集中してみる。
すると、どうだろう。
脳裏にどんなスキルか浮かんでくるじゃないか。
勇者・・・世界を守護する存在の加護をうける。全てのスキルを増強し、あらゆる厄災を退ける。この能力は世界に一人のみしか持つことはできない。
なんだこの色々な能力を山盛りにしたようなスキルは。
世界で一人しか持てないってことは、固有スキルというものか。
覗いたついでに“複写”を発動させる。
指先で頭を撫でる素振りをしながら能力をコピーする。
特に気にした素振りを見せず、トゥーンは受け入れてくれ、気持ちよさそうな感じだ。
そんな風に受け入れられると、こっそりスキルをコピーするのに少し罪悪感が湧く。
が、これもこの世界で生き抜く為には必要かだろう。
さて、どれも魅力的ではあるが、ここは状態異常回避を選択する。
状態異常回避(LV.1)・・・あらゆる状態異常にかかりにくくなる
最悪、変な物を食べたとしてもこれで危険性は減るだろう。
いや、魔法も正直興味津々ではあったのだけど。
むしろ興味以外何も無かったけども。
『それでトゥーンはなんでそんなに強いんだ?』
『うーん、わかんない。俺様は生まれたときから強かったからな!』
『そうなのか。凄いな。』
『おう!それに努力もしてきた。だから仲間達の中でも一番強いんだ!』
努力か・・・
俺も今後、獲得した能力を伸ばす努力していく必要があるんだろうな。
言ってしまえば、あくまでも能力をコピーしただけなのだから。
これを下地に少しでも力をつけていかないとな。
『なぁ、クルス。お前、あんなとこで何してたんだ?お前みたいな奴この辺じゃ見かけないぞ。』
『どうにも迷い込んでしまったらしくってな。人里に行きたいんだが、道も分からんし。』
『それは大変だな。仲間に会えないと寂しいもんな。』
『まぁな。』
どうにも心配してくれているようだ。
その気持ちだけで十分嬉しくなる。
しかし、気になる一言が出たな。
俺みたいな奴はこの辺じゃ見ないのか。
それはもしや人の住む領域からかなり離れているということか?
仮にそうだとすると、人のいる世界にたどり着くまでどれ程の時間がかかるか分からないな。
『そんなに落ち込むなよ。しょうがないから俺様が友達になってやるよ。』
『そいつは嬉しいね。』
『だろ!だから元気だせよ!』
再びトゥーンの頭を撫でる。
今度はさっきと違って下心無し。
純粋に撫でたくなった。
『よーし、もうすぐ着くぞ!』
『そうか。』
『クルス連れてったら皆驚くぞー!』
『かもな。』
そう言って一人と一匹は笑いあう。
その後、時間にしておよそ一時間近く歩かされ、ようやく目的地にたどり着いた。
もうすぐという発言に騙された・・・
名前 クルス・カミヤ
性別 男
年齢 18
スキル
神眼、体力増大(LV.1)、強奪(LV.1)、気配遮断(LV.1)、複写、隠蔽(LV.1)、意志疎通、自然治癒増大(LV.2)、成長促進、状態異常回避(LV.1)
魔法を獲得するのもいいかと思ったのですが、ここでは取らせませんでした。
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今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。