真実は・・・
「そこで止まれ。」
残された一人に声を掛けると、それに従いその場にとどまった。
ぶるぶると震えるのが見てとれる。
これからの自分がどのように扱われるのか、その辺りを考えたら絶望しかないかもしれないが、自業自得な話だ。
「まず、そのフードをはずせ。それと、あんたの名前は?」
「・・・クイナ。」
そう言いながらフードを外し、顔を見せる。
声からもわかるように、女性のようだ。
まぁ、男だろうと女だろうと関係は無いが。
やったことのツケは性別を問わず払うべきなのだから。
「それで、あんたらはここで何をしていた?」
「・・・。」
無言ですか。
それならそれで構わない。
が、こちらもいつまでも待っているつもりは無いので、少し脅しをかけてみるか。
「もう一度聞く。あんたらはここで何をしていた?」
「・・・。」
「話す気は無いということでいいんだな。それならそれでもいい。ただ、話も出来ない奴を放っておくつもりもないんでな。」
そう言いながら、床で転がっていた、先程足を折った奴のもう片方の足を蹴り飛ばす。
ボキリと音が部屋に響いた。
ちらりとカインの方を見ると、険しい顔をしていた。
あまり、こういうやり方は気に入らないようだ。
いや、俺も本当は嫌なんだけどな。
「がぁぁぁぁ・・・」
対象にされるのを嫌ってか、静かにしていたのだろうが、こちらとしては先刻承知の話だ。
叫び声をあげるそいつの髪を掴むと、耳元でボソリと呟く。
「うるさいぞ。ずーっと、喋れなくしてもいいんだぞ?」
俺の言葉で、顔からサーッと血の気が引いていく。
下唇を噛み締めて声を圧し殺し始める。
さすがにこれ以上、攻撃を加えられたくは無いのだろう。
「聞き分けが良くていいな。さて、クイナと言ったか。俺の質問には答えてもらえるのか?」
「・・・はい。」
涙を目にためて、こちらを睨み付けながら答える。
さすがに、心にくるものがあったか?
どう考えても、こちらの質問に素直に答えておいた方が良いに決まっている。
俺だって無抵抗の相手に、こんなことしたくはない。
それが、いくら攻撃を仕掛けてきた相手だとしてもだ。
「まず、ここにいる理由だ。」
「シグーさんに、ここにいるようにと、言われて・・・」
「シグー?誰だそれは?」
「私たちの、リーダーみたいな、人です。」
「そいつは、村長の家にいた奴か?」
「いえ、それは、わかりません。」
うーん、嘘は言っているようには見えないな。
だが、そうなると昨日戦った相手は誰だ?
シグー当人なのか、そうでないのか。
「シグーは今どこに?」
「今朝は、まだ見ていません・・・」
「計画はいつから?」
「詳しい話は、何も・・・ただ、私たちは、シグーさんの、命令に、従っていただけです・・・」
そうか、こいつらはただの下っぱか。
どうやら切り捨てられたらしいな。
さて、そうなると首謀者はもう逃げ出したと見ていいのか?
しかし、こんなことに何で手を貸したんだ?
「お前らは、なんでこんなことを?」
「それは・・・」
「ハイ、ストーップ。あんまり話しちゃダメだよー。」
突然背後から声を掛けられる。
いったい誰だ?
思わず振り返るが、そこには誰もいなかった。
いったいどういうことだ?
身構えながら、目線をクイナへと戻すが、姿が無くなっていた。
「アハハハハ、いやいや、実に楽しいねー。」
上の方から声がするので、声のする方に顔を向ける。
そこには、先程まで俺の目の前で怯えていたクイナが、宙に浮いていた。
不敵な笑みを浮かべて俺達を見下ろしている。
「いやー、油断したわー。いきなり突っ込んで来るんだもの。」
「テメー!何者だ!」
「え?こんな状況でも予想つかない?それは残念な頭をしてるよね。うんうん、実に残念。」
こちらを挑発してきやがる。
その態度が、癇に障る。
「まぁ、残念な君にはちゃんと名乗ってあげるよ。私の名前はクイナ。でもそれ意外にも名前を持っているんだよ。」
「シグーだってのか?」
「ご明察!と言ってもヒントだらけじゃご明察も何も無いかー。」
「何の目的があってこんなことしてんだよ!」
「そりゃ決まってるじゃない。魔王様復活のためだよ。いやいや、私優しー。何でも教えてあげちゃうなんてー。」
魔王様?
本当にそんな存在がいたのか・・・
だとして、この村の惨状と魔王に何の関連性が?
あれか?
魂を捧げる的な定番のやつか?
「ま、ここでの目的はほぼ達成出来たしね。あ、ちなみに村長宅で戦ったのは私の部下の一人さ。さすがに彼がやられるとは思ってもみなかったよ。さーて、それじゃ帰ろうかな。」
「待ちやがれ!」
“神眼”を発動させ、逃亡しようとするクイナを見るが、不思議な力で弾かれる。
またか!
「何かしたようだけど、ムダムダだね。根本的に力が違うのかな?まぁ、いいやって危な!じゃね!」
いつのまつがえていたのか、カインがクイナに向けて矢を放っていたが、躱されてしまう。
そうして、俺達はまんまとクイナの逃亡を許してしまう。
「くそっ!」
残された連中からでは、大した情報を得ることは出来ないだろう。
それでも、話は聞かなくてはいけないだろうし、このままの状態で捨て置くことも出来ない。
俺は、アルクを呼びに行くようにカインに頼み見送ると、部屋の隅に腰を下ろす。
バルが俺を心配してか近付いてくる。
そういや、血まみれのままだったな。
水魔法を発動させ、バルの血を洗い流しながら、アルク達の到着を待った。
さて、新たな展開です。
風呂敷広げすぎにも思えますが、何せトゥーンは勇者様ですからね。
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